五章

5...

「欲しいのは"こいつ"だろう…?」
そう言って笑い、掴んだ手首を上げて見せるカルロスと、クールの歯を食いしばる表情に、灰児はその少女こそがクールの言っていた人物だと察する。

「…貴様!」
「どれだけ人の命利用すれば気が済む!」
…怒鳴る灰児だったが、少しカルロスからは離れた位置で、側近の男が二人へと銃口を向けた。
「まさか生きてるなんてね…それも二人とも…」

壁を背にして、小さな段差を挟み、そのソファーの並ぶ向こうに、カルロスと拘束されたミミドリを見るクール。
自分たちを殺すための手段にしているだけなのか、それとも、もとから彼女を殺すつもりだったのか。それはわからない。
殺しにきた少年のあの不気味な笑みと、「俺を殺さなかったことを後悔するな」という言葉。あれはやはり彼女を知ってのことだったのだ。
今だって、自分が派手に動けば目の前で殺されるかもしれなかった。そうしたら本当にもう二度と…。

目の前で人が死んでいくのも慣れ切っていたつもりだったが、今は、彼女を死なせられないと思った。

「…ま、あんなガキにやられてるようじゃ、そりゃ名が廃るか。」
銃口を向けたまま、男が静かに言う。
「ここまで来るとは思わなかったから、さすがだな。」
「…何のつもりだ?」
「別に、そのままの意味だって…死ぬ前に聞いとけよ。」
「貴様にはやられねぇよ。」
そう言ったクールの目には、怒りが溢れていた。

「…言いたいことがあんなら、今のうちに言っておきな。」
それを見た男は、ミミドリを視線で指しながら、にやにやと笑ってそう言った。
1/4ページ
スキ