四章


平静を装いつつ、クールには考えていることがあった。

カルロスに自分を殺すように頼まれていた、あの少年。
死に際の、まるで"彼女"のことを知っているかのような発言。
そして、その『殺さなかったことを後悔するなよ』という言葉の意味。
不自然に動く右端のエレベーター。

もしかしたら、この最上階に着いたあとの景色は……。

その表情を横目で見る灰児もまた、彼がやはりあのことを考えていると分かっていた。
そして、あの右端のエレベーターはやはり不自然だったと思い返していた。

お互いにお互いが、そのことを考えているにも関わらず、あえて直接的なことは何も口に出さなかった。
言ってはいけないような、そんな気がしたから。

しかし、そのエレベーターの中での、長い沈黙を、灰児が再び破る。
「あのさっきの右端の……見たときは、もうすぐ最上階ってとこだった……あれはきっと最上階行きだ……」

これが何を意味するのか。
これまでは、認めたくない気持ちと、そんなはずはないと思う気持ちで、考えるのを止めてきた。
だが、これまで見てきたものから不吉なものを感じている以上、考えざるを得なかった。

沈黙と会話を繰り返すうち、見ると、もうあと数階登れば最上階というところまで来ている。
とにかく、最上階で見る景色には、覚悟を決めたほうがよさそうだと、今のクールにはただそう思う事しかできない。


最上階に着き、扉が開く。
その光景に、扉を出ながら歯を食いしばった。

カルロスと、おそらく側近であろう男、そしてもう一人。
カルロスに手首を掴まれたまま下を向いている…。

…ミミドリだ。

......
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