四章


彼女の頭の中は再びパニックのような感覚に陥り、恐怖がじわじわと心を占める。
恐る恐る立ち上がった彼女の右手首を、カルロスが掴んでいた。冷え切った重い体で、とても力の入りきらないまま、引っ張られる。
あまりの恐怖にたじろぐと、はやくついて来いと言わんばかりにその腕を強く引っ張られ、前のめりになりながらついていくしかなかった。
一体どこに連れていかれるのかもわからなければ、逆らったらどうなるのかもわからない。

泣きそうになりながら、とにかくその腕が引かれる方へ、ついていった…。

隠し部屋から出ると、黒い壁と右手に下へと続く鉄階段。その階段を、腕を引かれながら降りていくと、大きな鉄の扉があった。
その鉄の扉を、彼が開けると、その先にはビルの廊下と思しき白い壁の明るい廊下が広がっている。
だが、いくら明るい白といえど、その廊下の窓から見える景色は完全に夜であり、電気のついていないその廊下は、暗かった。
最も、これまで暗い部屋に閉じ込められていた彼女からすれば明るい方なのだが…。

その廊下の月明りが、とても辛い。
自分にはもう何も残されていないような気がしているのに、どうして死ぬのが怖いのか。
…きっと誰も助けには来られないんだろうな。
そんなことを考えると、引っ張られながら涙が溢れてきた。

あの家出をして遠くまで歩いて、冷えて疲れ切ったときのことを思い出す。
あの時も、辛くて仕方なかったのに、死んでもいいと思ったのに、撃たれる前は怖かった。
そしてあの時も、こんな夜だったんだ。

―――――  あの時の繰り返しみたいだ……

泣きながら月明りの中を抜けていく。


どこに行くのかわからないまま、エレベーターへと連れて行かれる。
手首をその大きな手で強く握られたまま、何もできない沈黙の時間に耐えていると。
なんと、その扉が開いた先は、下の階のような廊下ではなく、大部屋になっており…。


―――――  ……最上階?

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