三章

「それにお前、ずっとそいつのこと考えてんじゃねぇか……一人にしといて、いいのか?」
核心に迫る言葉だった。
「……嫌な予感がすんだよ……あのガキの言ってたこと……」
クールは、あの少年にかけられた言葉から悩んでいたことを言う。
「死に際にお前に言った…『後悔すんな』ってか…?」
「あのガキがあいつのこと知ってるとすりゃ、今頃どうなってるか……」
「…なるほどな。そういうことだったか。」

離れる前、最後に、涙目だった彼女の頭を撫でたことを思い出す。
もしあれが本当に最後だったら…?これでいいのか…?
…そう一度は自答したものの、やはり同じ道を歩ませるかもしれないことには、抵抗がある。

そして辛い感情を抑え込むように、カルロスのことを考えた。

目的のビルの窓がすぐ前に面している部屋に、二人は入った。
「…本当に、戻らねぇんだな?」
灰児が、窓へと歩きながら言う。
返事をすることも頷くこともせず俯くクールだったが、
「…まぁ、俺は関わってるわけじゃねぇしな……それがお前の選択か。」
灰児はこう言葉をかけた。

「……もうこの先は、そんなこと考えてられないからな。」
そう言って振り向いたクールは、窓に向け銃を持つ灰児に合図を送る。


――――――――――――――――――――――――――


閉じ込められたミミドリは、縛り付けられたまま男に何度も激しいキスをされていた。
時間の間隔がない状態だったが、ようやく解放されたときには体力が尽きそうだった。

「…あとで、その体も、もらうからね……」
嘲笑うような不気味な声でそう言って、男は去っていく。


――――――――――――――数分後

廊下を歩く男の顔は、想像する優越感に緩んだ。
彼女をどうしてやろうか考えていたのだ。

しかし。突如として、ビルに轟音が響く。
白い壁に映える革靴が、下の階で鳴り響いた音に、ゆっくりと止まった。

何か予感を察して表情を冷たいものへと変貌させ、男はチッと舌打ちをする。
そして、すぐに、知らせるべき人物へと、無線を繋いだ…。


銃弾を受けたガラスが、音を立てて飛び散る。
粉々に割れるガラスを見ながら、クールと灰児の二人は、何も阻む物のなくなった空間へと、飛び込んでいった。

―――――  これで、もう呑気なことを考えてる時間も無くなったんだ…

これでまた、全てがどうでもよくなった……ような気がする。
そう思いながら、クールは走った。



「……今の音だな?誰だか知らんが……そうだな、きっとあのネズミどもだ……」
ビル最上階の大部屋には、クリーム色のソファに座る、黒コートと白スーツに身を包む大男の姿があった。
「ただ……何やら軍隊も動きを見せているようだから、もしかしたらその可能性も……」

小さな無線機で会話する、その大男こそが。
…エデンの裏世界のトップと言っても過言ではない存在、カルロスである。

「まあ、どっちにしても、これから私もそっちに行く……あぁ。例の部屋を開けておけ……」
そう言いながら、彼はソファから立ち上がった。

いよいよ、闘いの最終局面が幕を開ける…。

......
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