三章
――――――――その頃
第三区A、裏路地にて。
正面突破の危険な状態であることを察していたクールと灰児の二人は、付近の建物から、そのカルロスがいるという高層ビルへ侵入することを決めた。
「隣接してるのは……これか…」
裏路地の、横に大きく伸びた壁の建物。その壁の端に扉がついていた。この廃ビルを上まで登って、部屋の窓を割って入ればなんとか行けそうだ。
どうやらまだ電気は通っているようで、エレベーターは動いている。もしかしたら何かおかしな集団と出くわすかもしれないので、周囲を警戒しながら、エレベーターに乗り込んだ。
登るのは、最上の40階。エレベーターが着くまでには、かなり時間がある。
もともと砕ける覚悟で協力を持ちかけた灰児は、あまりにもうまくいきすぎているような気がして、少し気になった。
「…なぁ……聞いていいか?」
もしクールが以前の噂通りならば、最低でも条件付きであったに違いない…。
「俺が聞くのも変だけどよ……お前、なんで俺を弾かなかった?」
「……」
しかし、クールも黙り込む他なかった。少し無意識のような感覚だったからだ。
一人では厳しい気がしたから…?利用しようと思ったから…?
……違う。そのどちらも考えていなかったような気がする。ただ自然に、自分もこの裏路地からの経路を調べていてそれを使えると思っただけだった。
「…別に、理由はない。」
「お前、何かあるんじゃねぇのか…?」
「…関係ないだろ?」
さすがの灰児でも、この返答にはこれ以上踏み込めないと察し、一度は黙ったものの、よく考えたらもう一つ気になることがあったのだ。
「……あのガキ…お前、なんですぐ殺さなかったんだ…?それに、死ぬ前に奴が、お前に言ったの……一体何のことだよ?」
この質問で、あの辛い気持ちと嫌な予感が蘇ってしまったクール。
しばらく考え込んで、大きなため息をつく。
「一人だけ、大事な奴がいる……でも、俺が横にいていい奴じゃなかったんだよ……」
「……?」
「平和なところで育ったそいつと、こんなところに足を踏み入れてるような俺が、一緒にいていいわけないだろ?」
灰児はしばらく黙っていた。
「だから……突き放して、ここに来た……もう関わるなってな。」
少しの沈黙のあと、40階に着き、扉が開く。
「このことが片付いたら、そいつのところ戻れよ……」
降りて歩きながら、灰児はこう言った。
「お前…俺がそいつと関わることがどういうことになるのか、わかってんのか?」
だが、クールは彼女にも言ったことと、自分の悩んだことを言い放った。
「それに……いつ死ぬかわかんねぇのに、そんなこと言ってられるか。」
立ち止まる二人。灰児はその言葉を聞いて自分もそうだと怯むも、こう返した。
「…もしほんとに死ぬかもしれないと思ってんなら、死に際に後悔することがあっていいのか?」
第三区A、裏路地にて。
正面突破の危険な状態であることを察していたクールと灰児の二人は、付近の建物から、そのカルロスがいるという高層ビルへ侵入することを決めた。
「隣接してるのは……これか…」
裏路地の、横に大きく伸びた壁の建物。その壁の端に扉がついていた。この廃ビルを上まで登って、部屋の窓を割って入ればなんとか行けそうだ。
どうやらまだ電気は通っているようで、エレベーターは動いている。もしかしたら何かおかしな集団と出くわすかもしれないので、周囲を警戒しながら、エレベーターに乗り込んだ。
登るのは、最上の40階。エレベーターが着くまでには、かなり時間がある。
もともと砕ける覚悟で協力を持ちかけた灰児は、あまりにもうまくいきすぎているような気がして、少し気になった。
「…なぁ……聞いていいか?」
もしクールが以前の噂通りならば、最低でも条件付きであったに違いない…。
「俺が聞くのも変だけどよ……お前、なんで俺を弾かなかった?」
「……」
しかし、クールも黙り込む他なかった。少し無意識のような感覚だったからだ。
一人では厳しい気がしたから…?利用しようと思ったから…?
……違う。そのどちらも考えていなかったような気がする。ただ自然に、自分もこの裏路地からの経路を調べていてそれを使えると思っただけだった。
「…別に、理由はない。」
「お前、何かあるんじゃねぇのか…?」
「…関係ないだろ?」
さすがの灰児でも、この返答にはこれ以上踏み込めないと察し、一度は黙ったものの、よく考えたらもう一つ気になることがあったのだ。
「……あのガキ…お前、なんですぐ殺さなかったんだ…?それに、死ぬ前に奴が、お前に言ったの……一体何のことだよ?」
この質問で、あの辛い気持ちと嫌な予感が蘇ってしまったクール。
しばらく考え込んで、大きなため息をつく。
「一人だけ、大事な奴がいる……でも、俺が横にいていい奴じゃなかったんだよ……」
「……?」
「平和なところで育ったそいつと、こんなところに足を踏み入れてるような俺が、一緒にいていいわけないだろ?」
灰児はしばらく黙っていた。
「だから……突き放して、ここに来た……もう関わるなってな。」
少しの沈黙のあと、40階に着き、扉が開く。
「このことが片付いたら、そいつのところ戻れよ……」
降りて歩きながら、灰児はこう言った。
「お前…俺がそいつと関わることがどういうことになるのか、わかってんのか?」
だが、クールは彼女にも言ったことと、自分の悩んだことを言い放った。
「それに……いつ死ぬかわかんねぇのに、そんなこと言ってられるか。」
立ち止まる二人。灰児はその言葉を聞いて自分もそうだと怯むも、こう返した。
「…もしほんとに死ぬかもしれないと思ってんなら、死に際に後悔することがあっていいのか?」
