「早く治せ」
もう二週間は顔を見てない。
悪めの風邪を引いたから会いには来るな、と。
たったそれだけの理由だった。
それでも、すごく空虚だった。
熱を出したと連絡があってから数日は、ただちょっと酷くなっただけだと思ってたけど、そういうわけでもないらしく。
「ずっと苦しそうに咳してるよ…。」
電話越しに結蓮が言ってた。
「…そうか。」
あいつはそこそこ丈夫な方だと思ってたから、てっきりもっと軽いものだと…。
それから数日は、何もない。ただ朝が来て。一日が終わって。それだけの、本当に空虚な時間だった。昔の自分は、独りに慣れすぎてたから…。それが普通だったから。だからなんとも思わなかっただけなんだろう…そう思ってたのに。
そのうちに、何の気力もない、何もしない時間に、嫌気が差した。
寂しくないと言えば嘘になる…。
そして、今日。夕方、特に行く宛があったわけでもないのに意味もなく外を歩いて、着いたのは、いつも二人で出入りしている、ゲーセンの重たい扉…。
その中にいると、今日は奴の戦友が不思議そうにしてる。肝心の奴がいないんだからそりゃあそうだ…。
そう思ったとき。
「…あの…今日いないのって…。」
声をかけられて、
「…あいつ今、酷い風邪引いてるから。」
別に嘘をつく理由もそうないので正直に返した。二、三人、ホッとしたような顔で目を見合わせているが、なにか持っている。
「…これ、渡しておいてほしいんだ…。」
渡されたのは、本やらポスターが入っている袋だった…。
ただなんとなく行っただけなのに、奴へのプレゼントをもらってしまったというわけだ。
隠れ部屋に帰ったあとも、渡すのがいつになるのか考えてばっかりだった。次に会うときに渡すつもりでいたが、今の俺はそういうわけにもいかず。
『早く治せ』
なんでもいい。あいつの顔が思い浮かぶ物が欲しかった。これを見たあと…治ってから、あいつがどういう顔をして出てくるのか、楽しみにしながら、そう書いた紙を一緒に入れて、その袋を持った。
外階段の戸に下げておくからあとで取るように言ってくれ…と、結蓮に電話をして…。
悪めの風邪を引いたから会いには来るな、と。
たったそれだけの理由だった。
それでも、すごく空虚だった。
熱を出したと連絡があってから数日は、ただちょっと酷くなっただけだと思ってたけど、そういうわけでもないらしく。
「ずっと苦しそうに咳してるよ…。」
電話越しに結蓮が言ってた。
「…そうか。」
あいつはそこそこ丈夫な方だと思ってたから、てっきりもっと軽いものだと…。
それから数日は、何もない。ただ朝が来て。一日が終わって。それだけの、本当に空虚な時間だった。昔の自分は、独りに慣れすぎてたから…。それが普通だったから。だからなんとも思わなかっただけなんだろう…そう思ってたのに。
そのうちに、何の気力もない、何もしない時間に、嫌気が差した。
寂しくないと言えば嘘になる…。
そして、今日。夕方、特に行く宛があったわけでもないのに意味もなく外を歩いて、着いたのは、いつも二人で出入りしている、ゲーセンの重たい扉…。
その中にいると、今日は奴の戦友が不思議そうにしてる。肝心の奴がいないんだからそりゃあそうだ…。
そう思ったとき。
「…あの…今日いないのって…。」
声をかけられて、
「…あいつ今、酷い風邪引いてるから。」
別に嘘をつく理由もそうないので正直に返した。二、三人、ホッとしたような顔で目を見合わせているが、なにか持っている。
「…これ、渡しておいてほしいんだ…。」
渡されたのは、本やらポスターが入っている袋だった…。
ただなんとなく行っただけなのに、奴へのプレゼントをもらってしまったというわけだ。
隠れ部屋に帰ったあとも、渡すのがいつになるのか考えてばっかりだった。次に会うときに渡すつもりでいたが、今の俺はそういうわけにもいかず。
『早く治せ』
なんでもいい。あいつの顔が思い浮かぶ物が欲しかった。これを見たあと…治ってから、あいつがどういう顔をして出てくるのか、楽しみにしながら、そう書いた紙を一緒に入れて、その袋を持った。
外階段の戸に下げておくからあとで取るように言ってくれ…と、結蓮に電話をして…。
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