七夕

7月7日。ギャンブルに明け暮れる奴は、今日が運試しの日だとか、よく言うもんだ。そんなもん、ただの日付けにかこつけて言ってるだけだろう。
大型の地下施設に行くと、いつも通りかそれ以上に、いろんな奴が、金を賭けたギャンブルに熱中してる。
そんな中、まさかこいつを連れてくることになろうとは…。

『さぁ!ボールが発射されます!』

ギャンブル以外にもう一つ、今日が何の日か、聞いたことがあった。
今日は確か…。

『3番!22番!』

長い椅子に二人で座って、俺は巨大な筐体の中央にあるルーレットを見ていた。
番号が書かれた穴にボールが入る。

『次はぁ~?』
「16、16番!高額リーチ!頼む…!」

目の前の…番号のついた星々が映っている画面を見ているこいつも、すっかり運試しに熱中してるもんだから、俺は半分呆れた。
傾斜のついたところをぐるぐると転がっているボールを見ながら、手を合わせて叫んでいる。

「あぁ、うわぁ…」
『15番!』
「惜しい。惜しいんだよ、その隣…。」
『最後はぁ~?』
「16番だよ頼むよ!」

思わず笑いがこぼれた。
しばらくして、

「あ…これは?ワンチャン…?」
『16番です!』
「えぇ!?やった!」

星が長く繋がって、金色の文字が出る。
…どうせメダルなんだから。
と…いつもなら言っているはずなのだが。

「…あ、BETタイムの曲が七夕仕様!」

さぞ楽しそうに"10BET"をタップするそいつには、何故か言えず。

「…なんだっけ…。きっと川から降りてきたんだろ。」
「…あの織姫と彦星?」

普段はあんまりそういうことを言わない俺に、ビビってるみたいだったけど。

「たぶんそれで運がいいんだ。」
「…うん。そうだね。」

次のゲームが始まるのを待ちながら、横から返事が返ってくる。

『間もなく、BETタイムが終了します!』

…また次に来る"七夕"も、きっとこんな感じだろう。
1/1ページ
    スキ