コアラのあくび
…コアラは、食べたユーカリの毒を消化して余計なエネルギーを使わないために、いつまでも寝てるんだよ…。
…コアラがずっと木にくっついてるのは、その方が他の動物が登ってこられなくて安全だからなんだって…。
────────
朝。
だいぶ時間が経っても二人が起きてこないので、結蓮は見に行くことにした。
ドアを開けると、いつも通り布団にくるまった二人の姿。
クールの方は起きているらしかった。
「…まだ寝てるの?」
「二度寝三度寝で、ずっとこれ…。」
彼が、そう返事をしながら抱きついている彼女の背中を叩くと、彼女が少し唸る。
「なんだ。起きてんじゃないの…。寝てばっかりいないでそろそろ起きなさいよ。」
「…やだ…。」
目を瞑ったままこんな返事を小さくする彼女が、以前、得意気に語っていた話を、ふと思い出した。
「なんか、コアラみたい。」
結蓮がそう言うと、ミミドリはくすっと笑い、クールは少し不機嫌そうに嗤う。
「…俺は木ってことかい。」
「いいじゃん。背高いんだからさ。」
彼女がしていたあの話は、調べてみると本当にそうだったのだ。木につかまっているコアラは、ほとんどの時間、眠っている。
冗談交じりに嗤った彼も、あのとき横で聞いていたので、なんとなく覚えているだろう。
…結果として、コアラは他の動物が選ばないような場所を選んでいることになる…という話を。
なんだかそこも含めて、結蓮には彼女がコアラのように見えている。
「…あんたも、いい加減に起きなさいってば。コアラもそろそろなんか食べないとお腹すくよ。」
声をかける結蓮と、抱きついているミミドリの腕をゆっくり剥がして離れるクール。
彼女が、木に剥がされた~下に落とされた~と言いながら寝返りを打つので、見ている二人は笑った。
「はい。残念でした。降りてください。」
「…ふあぁ……ひぃどぉぃぃ…」
彼女があくびをしながら文句を言う横で、彼は一人で布団を出て、彼女にかかっていた布団もどかす。
それを見た結蓮はまた笑い、
「…ほら、早く起きないと、置いてっちゃうよ~。」
と声をかけた。
彼女自身が、自覚しているか否かは、定かではないものの。
安心できる居場所で、抱きついて、ずっと眠っているコアラそのものだった。
そして、隣で寝ていた彼も、きっとわかっているのだろう。
もうひとつ、ふたつ、あくびをしながら、むくりと起きたコアラは、部屋を出ていこうとする彼らを、急いで追いかけた。
…コアラがずっと木にくっついてるのは、その方が他の動物が登ってこられなくて安全だからなんだって…。
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朝。
だいぶ時間が経っても二人が起きてこないので、結蓮は見に行くことにした。
ドアを開けると、いつも通り布団にくるまった二人の姿。
クールの方は起きているらしかった。
「…まだ寝てるの?」
「二度寝三度寝で、ずっとこれ…。」
彼が、そう返事をしながら抱きついている彼女の背中を叩くと、彼女が少し唸る。
「なんだ。起きてんじゃないの…。寝てばっかりいないでそろそろ起きなさいよ。」
「…やだ…。」
目を瞑ったままこんな返事を小さくする彼女が、以前、得意気に語っていた話を、ふと思い出した。
「なんか、コアラみたい。」
結蓮がそう言うと、ミミドリはくすっと笑い、クールは少し不機嫌そうに嗤う。
「…俺は木ってことかい。」
「いいじゃん。背高いんだからさ。」
彼女がしていたあの話は、調べてみると本当にそうだったのだ。木につかまっているコアラは、ほとんどの時間、眠っている。
冗談交じりに嗤った彼も、あのとき横で聞いていたので、なんとなく覚えているだろう。
…結果として、コアラは他の動物が選ばないような場所を選んでいることになる…という話を。
なんだかそこも含めて、結蓮には彼女がコアラのように見えている。
「…あんたも、いい加減に起きなさいってば。コアラもそろそろなんか食べないとお腹すくよ。」
声をかける結蓮と、抱きついているミミドリの腕をゆっくり剥がして離れるクール。
彼女が、木に剥がされた~下に落とされた~と言いながら寝返りを打つので、見ている二人は笑った。
「はい。残念でした。降りてください。」
「…ふあぁ……ひぃどぉぃぃ…」
彼女があくびをしながら文句を言う横で、彼は一人で布団を出て、彼女にかかっていた布団もどかす。
それを見た結蓮はまた笑い、
「…ほら、早く起きないと、置いてっちゃうよ~。」
と声をかけた。
彼女自身が、自覚しているか否かは、定かではないものの。
安心できる居場所で、抱きついて、ずっと眠っているコアラそのものだった。
そして、隣で寝ていた彼も、きっとわかっているのだろう。
もうひとつ、ふたつ、あくびをしながら、むくりと起きたコアラは、部屋を出ていこうとする彼らを、急いで追いかけた。
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