大好き。

それからほんの1分ほど。
彼女は、いつもの如く、既に眠気に負けて意識をどこかにやってしまっていた。
彼は、彼女が考えていたことを推察する。

もしかしたら、彼女自身がこのエデンでの一般とは遠い、良い環境、良い境遇を持っていることを、彼女なりに、自覚しているのかもしれない。
その「恵まれている」という言葉には、自分という人間のすぐ横にいられることだけではなく、それによって守られているという意味合いも含まれているのだろう。
一人でいれば、誘拐や人身売買などのやり手に目をつけられる危険性は、当然、高くなる。そして、それも彼女はきっと自覚している。だから、眠る前、最後に、いろんな意味合いを込めて、礼を言って寄こしたのだ。
ここへ連れてきたのも、好きで仕方なくてこうやって横にいるのも、自分だから…。

…彼女が頭を巡らせていた、言いたかったこと…伝えられた自信がなかったことは、彼にはほぼ伝わっていた。
当の彼女はもう眠っているので、彼自身が考えたことを確かめる術は、今はなかったのだが。起きたあとでお互い忘れていなければ、また聞いてみればいいのだ。

きっと起きても覚えているだろうと思いながら、彼は目を閉じる。
そして、なぜ急にそんな話をするのか。それも忘れていなければ、聞いておこうと思った。もちろん、ただの思いつきだということも十分ありえるだろう。しかし、彼女の方からこんな話をすることは、普段はあまり…というか、滅多にないのだ。

そうしてしばらく彼女の話を考えているうちに、次第に意識の境界が緩み、彼もまた、静かに眠りに入った。

深夜。彼女がそんな話をした理由を物語るように、電波時計の日付が移り変わる。


May 9th
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