依存

…頼むよ。
これだけ捜し回ってんだよ。
出てきてくれ…。
一体どこに…。


───────


ふと目を覚ます。
寝てる間の夢なんて、たいてい意識がぼんやりしてる。
そこまで現実のように思ったことは今までなかったが。
…今回ばかりは違った。
目が覚めてすぐ、目の前のこいつがいなくなって捜したときのことを、思い出す。

詳しい過去を聞いてなくてもわかる。こいつはたぶん人に頼るのが得意じゃない。
だから、いなくなるときは、誰にも言わずに姿を消した。
昔はあんなにも考えてもどうしようもないと思ってたことを、あの時は考えていたのを覚えている。

ひたすら、出てきてくれと。
まだどっかで一人で泣いてることを期待して捜し回った。
そんなこと考えたって、出てくるわけがない。
昔のままならそう思ってた…はずだった。
間違いなく、俺はこいつに依存していたんだと、そのとき初めて気付いた。

───夢で良かった…。
腕の中で小さくゆっくり動く背中を、包んでいる布団ごとくるむ。
「……?」
「悪い。起こした。」
どうしたの、と囁かれて、
「…なんでもない。」
こう答えてしまった俺も、頼るのがそこまで得意じゃないんだろうと思った。それまでずっと独りだったから…。
「ホントに…?」
言いながら俺の背中に腕を回して抱きつくこいつに、
「もういなくなったりすんなよ…」
…そう、返した。

「捜すの大変だったんだから。」
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