旧詩
ふとカーテンが揺れて
私の細胞が少し減った
涙目であるにも関わらず
ページをめくる速度は変わらなかった
カーテンの隙間から黒いモノが見えた
昨日の金魚だった
砕けてしまったんだ
水槽の隅でうずくまって
息をすることを忘れてしまった
最後の最後は乾ききって
拾い上げるには細かすぎて
風に飛ばされてしまった
部屋の風はヤケに生臭くて
赤と黒で出来ていた
天井を舞っているその空気は
私の体の喉を通って
心臓から金魚が出てきた
代わりに私の心臓は食べられて
綺麗に穴が空いている
砕けてしまうんだろう
金魚は空を游いでいる
涙目であるにも関わらず
ページをめくる速度は変わらない
少し呆気無さ過ぎて
感情は取り残されたらしい
金魚は空を游いでいた
私の心臓は空を游いでいた