旧詩
読めない漢字を連ねて笑っていた。(まる)
聞こえる音楽は壁向こうだった まる(。)
今夜は青と黒を混ぜた灰色
白い画面に映る彼の感情は
誰よりも黒い瞳のようで
1つ光るオレンジ色の豆電球に
自分の眼を反射させていた
月の見えない窓の影は
赤い一冊の本に触れて
寂しそうな彼に見えた
そして触れる事に飽きた影は
感情が、思考が朽ちるのを待つ
私のようにも見えた
線香が燃えるのをやめてから、
二時間程時間が経過した
青を混ぜる割合が高くなって
やがて白も追加するのだろう
静けさの中で
唯一私の耳に届くのは
携帯電話のボタンを押す音だけで てん(、)
絹の擦れる音、虫の声等は
音として私達の意識には
存在していなかった
彼はそっと瞼を閉じる
曇空では無いことを知ったからだ。
私は両手を空から降ろし
携帯電話の電源を切る
ピーー
と
眠っているものには
聞こえない
それでいて
煩い
音だった。