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徒然


嵐にも驚かない、静かで、それでいてとても力強い。
雲が中を舞っているうちに、ラジオに右手を呑み込まれ。
洗浄器を上回る速さで、遠心分離機が騒ぐ。
「聞いてない」

夕立、灰色の空。





涙目の君は、僅かな怒りを添えて。
「うん、言ってないから」
「なんで!」
とうとう、下睫毛の先を伝う泪。
雨と混ざり合って、胡散臭くなる。

君と僕の距離は、何よりも遠く。
君と僕の溝は、何よりも深く。

車のカーステレオから、ベース音が漏れ、聴こえて消える。
この声だけは、今、君にしか聞こえない。
「風邪引くから、帰ろう」
「まだ話は終わってないよ!」
地面は黒く濡れ、体温を下げる。
言葉の余韻が消え去って、雨音だけが取り残された。
いや、君と僕も、道連れだ。
雨が止んだら、風邪を引いているかもしれない。
わざとらしく思考を変換して、君の泣き顔を見る。

君と僕の距離は、何よりも遠く。
君と僕の溝は、何よりも深く。

「僕は」
弱くなった雨音に、耳を傾けて。
これから言う嘘は、嘘でしかない。



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