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徒然


眠る金魚の傍らで、優しさに負けない最低限のタオルを持って、肩かけ鞄で旅に出た。

スターゲイザーの鳴る耳で、暑い太陽を遮る。

泣き止んで欲しい心臓に、優しさを飲み込んで、流れる涙を掬ってやる。
心臓は、少し鳴咽を漏らして、泣き止んだ。


広い道を通り過ぎ、路地裏の湿気混じりの空気に、喉を鳴らしてタオルを鞄に詰め込む。

うたかたの鳴る耳で、道端の汗を遮る。

路地裏の猫が笑いかけて来た。
それを愛想笑いで返す。


犬の様に出した舌は、心底意味を持たなかった。

心臓が軋んで、朽ち果てる臭いがする。

もう少しだからと、キスをして。

大人しくなった心臓に酷い虚無感を覚えて、泣きそうになる。
金切り声が遠くで聞こえて、涙目を拭って、また歩き出す。

目的地迄は、後少しなのだから。

そう、目的地迄は、後少し。


軋む心臓を抱えて、生々しく、寂しい黄昏を感じていた。



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