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徒然


下らない行き違いで、アイツは溺れ死んだのだろう。
何度も何度も目を擦りながら、醤油をぶちまける練習をしていた。
アイツがアイツなら、私も私だ。
アイツも私も、どこか狂っているのだ。

眉間に皺を寄せて、それほど強くない木漏れ日を少し見つめる。
頭がガンガンするのは、寝ていない証拠だ。
そのまま太陽を直視して、激痛を耐えてみる。
意味もなく、不毛な行動。
それで生きていることを確認しているなんて、人に言ったら笑われてしまうだろう。

アイツは昨日…いや、今日出て行った。
何が不満でもなかった癖に、ひとり喚いて出て行ったのだ。
私はずっと卵がけご飯に、醤油をかけ続けていた。
ネチャネチャと、卵がふて腐る。
アイツの呼吸は、私をひとり生かしたのだ。

卵を排水溝に流して、すこし嫌悪する。
キッチンにしゃがみこんで、鼠とゴキブリを探していた。
“あんたらまで、私を一人にさせたいのね”
水槽の中身は、マヨネーズとケチャップ。
金魚は、トイレに流した後だった。

最初から、行き違いなんてなかった。
最初から、噛み合った事がなかった所為だ。

何故、アイツは溺れ死んだのか。
分かる訳ないのに、私は一生懸命水の入った洗面器に顔を突っ込んだ。
空気が無くなって、苦しい。
アイツも、こんな感じだったのだろうか。

顔を上げて、醤油をぶちまけた。
アイツも私も、どこか狂っているのだ。

これからも、狂っている。
アイツも私も、どこか狂っているのだ。





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