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一人
深夜映画に泣いていると
何かが消える予感がした
多分空に横たわっていた夜が
死んだせいだろう

と言っても
秋の夜は長く
彼と、彼の彼女が
部屋に入った後も
夜はまだ続き
夜の骸が空を覆っている
今夜は外にでないでいた方が
死ぬ確率は上がらないだろう

外国人の声と
字幕が目から体に流れてゆく
英語とか
フランス語とか
何語かも知らないまま

黒糖入りのパンが無くなり
始まりはいつだって~
と日本人が歌っている
それは何処か
軽々しい女の様で
何故かは知らないが
両の手が耳を塞いでいた

二つのうち一つ消えている
蛍光灯が
薄暗く部屋を見渡す

電波が辛うじて届くこの部屋は
カーテンが閉じられた儘で
夜が死んだ事に気付けたのは
奇跡みたいなものだったのだ
そう思った

今日の夕方からは
新しい夜がやってくるから
暖かい明かりを用意して
待っていよう
カーテンの外から
光が入ってきて
夜の骸を埋葬してから
眠ろう

と思った

そして

なんだかとても


生きたい





と思った




思ったんだ。




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