詩
ライトアップされた世界の
さながら勇者は舞い立つ
野望の悪役に判然
それじゃあ負けてしまうのに
クライマックスの激しさの
どこか寂しいのは笑顔の方
置いていかれるのに叫べもしない
絶望の暗闇に毅然
スクリーンを笑うくせに
夜明け前の観客は落涙
そのまま心を連れ帰って
もう思い出せない、ある物語の起承転結
人生にふさわしい刹那主義を味わうより
悩み続ける廃退が 美しく目に映る
王子様を、お姫様を
小人のキスを、カエルの靴下を
切り裂く愛をお腹に詰め込んで
幕を閉じたその向こうの、
世界の続きから妖精の背中追いかける
勇者たる資格はまだないけれど
選び取るために前を向いて
エンドロールに投げキッスを
劇場を出たその後に
生み出される物語の劇的なことを
いくらでも証明しよう