異邦人大系 (+版) 二章『秋の風へ吹かれ』

 









『────“何でもする”、“例え己が犠牲になろうとも”……。自己犠牲主義を語るには、君は。まだまだ、未熟過ぎるでやすよ──?』


『………………オ、レ…は──、別に。……そんなつもりじゃ────、』


『……そこまで仰るのでやしたら・・・・・バケモノの血肉の一部にでも、なってみるか───??》


『───────っ、……???!』



途中から嫌に耳につく、
音の割れたノイズ混じりの声にて
荒々しくもそう言葉を吼えると。
人外以外の何者にも他ならぬ
巨大で異質な烈将の右手が
鋭利な光を闇へと尾を引かせ
優人の首を捕らえた───。


















『───ナンチャッテ☆』


『…!、』



その場へ張り詰め、
その場を満たしていた
悍ましいまでの
烈将の殺気が
嘘のように消え失せて
離された右手に、優人は。
その場へ、ストンと座り込んだ。





『…えっ──、……烈、将…さん?? ──はっ、…謀ったんですか?! 俺の事……!! …酷いっ!、酷過ぎますよ、そんなっっ───!!』



優人は完全に
腰を抜かしていた。




『────これで、懲りやしたか……??』


『なっ…、何でこんな事───!! 俺の事、そんなに……嫌いなんですかっ??!』


『───些か、調子に乗り過ぎやしたかな。……まさか、泣かれるとは。』


『な、泣いてませんよ…!! 泣いてなんかっ………!!』


『ハイハイ…』



くつくつと人の悪い笑みを零しながら
烈将は優人の正面へとしゃがみ込む。
拗ねて俯いた優人を無理矢理
上向かせると自身の親指、
あったかい指の先にて
そっと、その雫を拭い去る───。





『…俺、これでも烈将さんの事、信頼してるつもりなんですよ──? だから、今回だって………』


『左様でやしたか。いやはや、面目ない────』




優人の隣、秋の寒空へと浮かぶ
あったかい色をした月の下。
背をフェンスへと預け座り込むと
烈将は白々しくも優人の肩へ
腕を回して自身の肩へと
優人の頭を引き寄せる。





『……烈将さん。本当にそう思ってらっしゃいます…?? ──“結構、実は。楽しかった”って、顔に書いてありますよ?』


『気のせいでやすよ、気のせい────』





…………………………
この後、それぞれ事がバレ。
優人は祟場へ、烈将は愁水しゅうすい
大目玉を食らったのは
言うまでもない────。




 
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