異邦人大系 (+版) 一章『不穏との遭遇』
「先生に用があるんですか?」
「まぁね」
「僕は暇潰し相手か何かですか」
「最初は、そのつもり半分だったけどね。気が変わった──」
「……?」
「───また、話の途中で奴に逃げられるのも癪だから」
「!」
(すっかり日が暮れたな…。優人の奴、腹空かしてるだろうな──)
祟場がマンションに到着し
エレベーターから一歩
踏み出した時だった。
──ガンッ、ガウンッ…
「!、銃声…?」
嫌な予感がした──。
祟場は居ても立っても
居られなくなり駆け出す。
いつかのフラッシュバックが
祟場の脳内を占拠しつつあった。
あの日、あの時から
自分は人を待たせるのが
嫌いになった──。
気付けば今日は日曜───。
「─!!」
一番最初に祟場の目に入ったものは
玄関先に不自然にも置かれた買い物袋、
足元に落ちたパンダのマスコット
の付いた優人の合い鍵。
「……優人?」
胸がざわついて仕方がなかった。
何度か呼び掛け辺りを見回す。
しかし、優人の姿は
何処にも見当たらなかった。
祟場は銃声の響いた空を振り仰いだ──。