異邦人大系 (+版) 一章『不穏との遭遇』
「…氷堂指揮」
「んー?」
「戻って来て下さい──」
「少年の口からそれを聞くとは、意外だな」
「貴方はそんな場所に居るべきではない。貴方の居場所は今も昔も変わらず、“あそこ”であるべきだ」
「俺は“成り代わり”が嫌いだが。その見習いで、自ら“異邦人”などと自称する少年のその言葉を、俺はすんなり受け止めるべきか?」
「……無理な注文ですかね」
「だろう?」
「でも、それは。皆が心から望んでいる事だ。こんな悲劇、誰も望んじゃいない筈だ─」
「皆? 今の俺の敵は、全世界よ?」
優人はフルフルと
首を横に振った。
「違う。そんな事ない。例え、それが本当に神様のシナリオだったとしても、そんなの誰が認めるっていうんですか。皆が貴方の戻って来る事を、心の底から願ってる」
「皆、皆って。お前如きが何を知ってる? 少なくとも天津のお上さん方は、俺の事を消そうと躍起になってるんじゃないか?」
「それは、否定出来ません…。けれど、僕が言っているのは
「……………」
「それは氷堂指揮、貴方も同じでしょう? あの時、貴方は補佐を殺せなかった。
──ガウンッ
「………っ…!!?」
その時、指揮の放った銃弾が
優人の右大腿部を貫通した。