異邦人大系 (+版) 一章『不穏との遭遇』
商店街のスーパーへ寄り
食品等を祟場からのメモに従い
買い物カゴへ入れると
レジへと向かった。
会計を済ませ、袋へ詰める。
スーパーを後にして
祟場のマンションへと帰路を辿った。
普段通り。ごく当たり前な日常──。
「……………」
日はすっかり暮れ
街中にはネオンが灯り
夜の気配を醸し出していた。
(……オナカ、空いたなぁ…)
エレベーターを出て
祟場宅へと向かう。
徐に肩へと掛けた鞄から
祟場宅の合い鍵を取り出す。
優人が玄関の鍵穴に合い鍵を
差し込もうとした時───。
「………?」
誰かの視線を感じた気がした──。
優人は廊下の奥へ目を遣る。
しかし、そこには何者の姿もなかった。
そのまま暫し見つめた後
溜め息を吐いて視線を戻す、と
今度は自分の直ぐ側から何者かの気配──…。
「─!」
──ドッ
ガサリと買い物袋が足元に落ち
遅れてマスコットの付いた合い鍵が
床上へと叩き付けられた音だけが
その場へ無機質に響き渡った──。
人気の無くなった廊下で
買い物袋と合い鍵は
その主を失った───。