異邦人大系 (+版) 一章『不穏との遭遇』
「人の過去を土足で踏み荒らすだなんて、感心しませんね。指揮」
「遅かったじゃないか、祟場」
夜の屋上。突如として現れた祟場の姿に
優人は酷く安堵したのも束の間、
氷堂本来の目的を思い出し
優人は一気に青褪めた。
この場に現れたばかりの
祟場はまだ、この事を
知る由もないだろう。
祟場に事を知らせようとした
優人であったがしかし、氷堂の
十二分に殺気帯びた視線へ
射抜かれその声を途中で
途切れさせる事となる。
その僅かな時間に何を察したか
祟場は大きく溜め息を吐き出すと
二人の元へ歩み寄って行った。
「遅かった? 心外ですね。誰のせいで残業続きだと思ってるんです」
「それもそうね。悪かったよ」
「それに。人の弟子、捕まえといて何してくれてんですか──」
「ん? 暇潰し」
「人でなしですね」、そう
祟場が言い切らない内に
ポツリと氷堂が言葉を吐いた。
『
──バキバキバキッ
それは、地獄の業火を呼び出す
氷堂の召喚術の一つだった。
辺り一面に降り注ぎ、
全てを焼き払う。
そんな悪質な炎が
祟場達の元へと迫った──。
「……っ!」
いつかの鬼狩りで見た攻撃。
あの時は同じこの技にて
優人自身助けられたが、
それが今は自分達の元へと
殺意を帯びて向けられている。
身じろぐ優人だったが
その優人の目の前に
素早く祟場が立ち塞がった。