異邦人大系 (+版) 序章『魔法使いと弟子の話』
*
焼け野原に一人取り残された俺を拾ったのは、一人の魔女だった──。
『可哀想なおちびさん、生き残ってしまったんだね?』
あれから、幾年…。
〔──
「は、はい。…半人前の自分が、すみません……」
〔いいじゃないか。お前もその歳だ。そろそろ小間使いの一人や二人、欲しかったんだろう〕
「いや。そんなつもりじゃ……」
〔今度その内、連れて来なさい。お前もしっかり顔を出すんだよ?〕
「は、はい…」
〔一つ、楽しみが出来たね。こりゃ……ふふふふふ〕
「先生。お電話、終わりましたか?」
「ああ」
「先生んち、野菜の皮を剥ぐヤツ、無いんですか?」
「ピーラーか? 無かったか、その辺…」
「先生、知ってます?」
「何だ?」
「──オレ。料理らしい料理…、した事ないんです………」
「あ、ああ…。その手付きを見りゃ、大体、何となく察するよ……」
「ジャガイモは、分かります」
「えっ…?、急にどうした…??」
「ニンジンは……何処からが“身”で、何処からが“皮”なんですか…???」
「…あ、ああ。そういう事……。別にいいぞ? 適当で…」
「タマネギは…。頭と根、あらかじめ切っておくと皮が剥きやすいとか。そうゆう事は、前も゙っで…言ってくらはい………」
「……それでタマネギ、そんなバラバラなのか。…泣いてるお前、かわいいぞ」 ←フォローのつもり
「ぶん殴りますよ。」 ←ド地雷
「──お前。牛乳、平気だったか?」
「………、それ。祢津也…」
「すまん。また地雷だったか……」
「……………、」
※本当に怒ると黙るタイプ
「(アセアセっ…)」
「……クスッ、」
「
「…別に。元カノとかじゃないんですから。名前、出ただけでそんな、急に落ち込んだりなんてしませんよ。──焦ってる先生もカワイイですね♪」
「おまっ、え…」
((──お前達を…、連れて行けたら良かった………))
いつかの自身と重なって、お前をあのまま放って置けなかったのは俺の方だ。
「─先生?」
「ん?」
「怒った…??」
「フッ…、怒らないよ。これくらいの事で」
「よかった」
「………」
「オレね? 上に、兄姉とかいなかったからさ。兄貴とか、欲しかったんだ。前々から。へへへ」
「……、そっか」
「うんっ!」
弟子の頭を一つ撫でて、一人、はにかむ。
「飯にするか──…」
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