異邦人大系 (+版) 序章『魔法使いと弟子の話』
*
((──嫌だ…、まだ消えたくない……))
斑雪(はだれゆき)のよう消え行く世界で、“お前”が“俺”を呼んだんだ。何度も、何度も。…今にも、消え入りそうな声で──…。
「…
((消えたくない…。“アイツら”の世界を、どうか忘れ(消さ)ないで──…))
“創造主(かみ)”に忘れ去られる事、即ち、そこに生きた者達にとっての“死”だ。例外に漏れる事なく、アイツは消えかけていた。──何故? お前には、これからも生きるべき世界がそこにあるというのに……。
((──ここから、離れたくない………))
「……、陣内…」
((……
「…………、(心残りは、“友(とも)”…達か……)」
残された時間は極僅か…。世界の片隅、既に闇へとこの場所は儚(はかな)くも散り始めている。
「…陣内」
「………」
「陣内」
「…………」
「陣内
「……聞こえてますよ。先生…」
「…だったら、ちゃんと返事くらいしろ」
「………はい。…ごめんなさい」
((──お前らを、こんな場所に置いて行くくらいなら……いっそ、オレも…この場所で………))
──ベシッ
「?!、??、???」
「何が“いっそ”だ、馬鹿野郎──…」
「──いってぇ…、何でいきなり殴ったりなんか………てか、え? センセ、何でそれ……」
「丸聞こえだ── (の゙のののの…)」 ※圧
「へ…??! 先生ってエスパー?? 先生って、そんな事も出来んの???」
「……内緒。」
「?」
「さて。お前は、この場所にまだ未練があるようだが」
「………、先生は…? 先生には無いの? 未練…。アイツらと過ごして来た、この世界に。全然? 全く? 本当に??」
「さあ? お前には、どう見える…?」
「……………」
「付いて来い。俺は、お前達の先生だ。お前らの進むべき道をいつでも何処でも照らしてやるよ───」
1/2ページ