〈壱〉の巻
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「──旭の方様が?」
「ああ。近年、度々、床に臥す事はあったが。年の瀬前からか。余り、芳しいとは言えぬ状態にある」
旭の方、とは。輝明の妻であり、安部一門を陰ながら支えてきた人物である。良妻賢母な陰の立て役者。内助の功にて長年、決して仲の良いとは言えぬ輝明ら兄弟を纏め上げ。また、一族へと身を粉にし尽くしてきた女性でもある。──後妻の子、と。兄弟達の間にて爪弾きにされていた清明にすら優しく接してくれたものであった──その、旭様が病床に臥しておられるのだと言う。
「話の方は、飲み込めました。兄上、もう少しばかり旭の方様の病状について詳しくお聞かせ願えますか」