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一次創作短編

太陽も寝付いたような、暗い寒空。
電灯と、光るコンビニの看板が、星々の輝きを抑えつける。
スニーカーが、地面を擦れる音すら響く時間。

普段より早く帰れることを免罪符に、寄り道をする女性がいた。
みつけた
リュックサックにつけた飾りが、ジッパーにぶつかる音。車ひとつ通らない道。
強風が吹いていないためか、植物の寝返りすら感じられない。

駅の近くとは打って変わって、この辺りは静かな空間になっている。
ついてく
知らない家に、通ったことの無い道。いつだかに亡くなった子供心が、するすると蘇ってきた。
ついてくついてく
何かが化けて出てきそうな恐怖心を、胸の奥にしまって歩く。
とても振り返ろうとは思えない。

歩道橋の階段が見えた。ここを渡って、少し進めば我が家がある。
まだ早い時間ではあるが、たまにはゆっくり就寝準備をするのも悪くない。
ついてくついてくついてくついてくついてく
一段、一段、下を向いて、噛み締めるようにのぼっていく。
やっとあえた
歩道橋に唯一ある灯り。そこには、黒い人影が立っていた。
異様な空気が放たれており、正直前を通りたくない。

だが、こちらは帰路についているだけなのだ。
堂々としていても構わないだろう。
あえたあえたあえたあえたあえたあえた
目を合わせないように、通り過ぎようとした。
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
なんで
形容しがたい声が聞こえた気がして、一気に走り出す。
ついてくついてくついてくついてく
ついてく
後ろから足音がする。追いかけてきている!

マンションの鍵を取り出して、すぐに入れるようにする。

ついてくついてくついてくついてくついてくついてくついてくついてくついてくついてくついてくついてくついてくついてく

怖い!怖い!怖い!!!!

目の前に、見慣れた建造物画見えた。我が家だ!
ついてく
全体重をかけて扉を開き、予め握っておいた鍵をロックに差し込み、回す。
自動ドアを無理やりにでも通り、エレベーターへ駆け込んでいく。

幸いにもロビー階にいたエレベーターに乗り込み、自分の部屋がある階数のボタンを押して、閉じるボタンを連打する。
ついてくついてくついてく
あの恐ろしい奴はいなさそうだ。

安堵のため息をもらし、エレベーターの壁に寄りかかる。

押したボタンの階数に到着した。
ついてく
ボロボロになりながらも、なんとか部屋に入り、しっかりと戸締りをする。
はいれあ
リュックを背負いながら走ったせいだろうか。
肩が痛い。
湿布を貼って、早く寝よう。
はいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれた
─おわり─
ずっといっしょ
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