01 ミチルがマスクをかけました

 チルクサンダーは十数年ミチルの全てを覗き見してきた。
 そんな彼がミチルについて知らないものはない。そう思われていた。
 だが、それは驕りなのかもしれない……


 
「むむー」

 ミチルが何やら唸っている。チルクサンダーは小さな背中に話しかけた。

「どうしたミチル」

 その手元を覗くと、ミチルは白い布のようなものを握りしめていた。

「パンツなど握って、困っているのか?」

 白くて小さい布。イコール、パンツ♡
 それはラブラブ生活の中では、ごくありふれた思考だった。

「パンツじゃないよ! これはマスク!」

 ミチルは即座に否定する。耳まで赤くして焦りながら。まったく可愛い、とチルクサンダーは思った。

「マスク……?」

 しかし、それはそれ。チルクサンダーにはミチルの持っている白い布が何なのかわからない。
 マスクと言われてもさっぱりだった。

「うーんとね、風邪引いたりした時に使うんだよ」

「ミチル! 病気なのかっ!?」

「違う。埃とか花粉から守ったり……」

「ミチルには『鉄壁カレピ♡』の我がおるぞっ!」

「うん、そうだね。後は単にオシャレに使ったり……」

「……?」

 悲しいかな、真っ黒異空間育ち(?)のチルクサンダーには、マスクでオシャレをするという思考が備わっていない。


 
「ほら、こうやって口元を隠すんだよ」

 試しに着けて見せても、チルクサンダーは首を傾げて不思議がっていた。

「何故、そんな事を……?」

「だから……いや、やめた。繰り返すだけだから」

 ミチルはマスクをしながら、目を細めている。その顔をしげしげと見つめながらチルクサンダーは呟いた。

「ふむ、一種の防具か。しかしやわ過ぎるな……」

「チルくんも着けてみる?」

「良いのか!」

「うん、もうひとつあるから」

 そうしてミチルが新品のマスクを取り出すと、チルクサンダーの期待に満ちた声音が一気に冷めてトーンダウン。

「ミチルの着けているのが良いのに……」

「マスクは貸し借りしないの!」

「ミチルの使用済みが良いのに……」

「どこで覚えた、そんな言葉!」

 チルクサンダーへの悪影響を憂いたミチルだったが、とりあえずそれは置いといて。
 魔族風イケメンのチルクサンダーがマスクをしたら、どんな風にイケているのか。ミチルはそんな好奇心に負けた。

「はいっ、チルくん、着けてみてえ♡」

「ミチルが言うなら……」

 上目遣いの猫撫で声でお願いされたら、チルクサンダーには抗える術はない。新品のマスクをその麗しい口元へ装着する。


 
「きゃあああ……!」

 ミチル、大歓声&大歓喜。

「ええー、ちょっとぉ、お忍び芸能人みたいじゃーん♡」

 魔族風改め、爆イケスーパーモデル風の姿が爆誕。ミチルはキャッキャうふふとはしゃいで跳ねる。

「ゲーノージン、とは?」

 世間知らずで首を傾げる様も可愛くてギャップ萌えである。
 ミチルはウヒョウヒョと興奮していた。

「あっ! チルくん、ちょっと屈んでえ」

「うむ」

 爆イケマスクメンを目の前に、ミチルが取り出したのは黄色いカラーペン。
 マスクの上からキュッキュッキューの、キュー。

「出来たああ♡ チルくんにアヒル口ぃい♡ 可愛すぎて滅するぅうう!」

 完全にマスクをおもちゃにしています。良い子は真似しないでくださいね。

「なるほど、そういう遊びか。ではミチルにも描いてやろう」

「ええー♡ そうー?」

 チルクサンダーが握ったのはピンクのカラーペン。

「ミチルはやはり、にゃんこ♡だな」

 キュ、キュッ、キュ……

「うふっ、ふふ、ん……っ」

 だがしかし。

「うふん……」

 ミチルは極度のくすぐったがりです。

「あふん、くすぐったい♡」

 無意識にそういう声が出ます。

「ふうん……♡」



 チルクサンダーの〇〇〇がムラァ!!



「マスクなど、邪魔だあァア!!」

 マスク剥ぎー!
 ついでに〇〇〇も剥ぎー!!

「にゃあああー!」



 この後のミチルがどうなったかは省略しますが。
 
 教訓。
 医療用具(マスク)はおもちゃにしたらダメですよ。
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