05 おてて繋いで散歩しよ

【注意 現代地球の日本設定です!】

 休日の昼下がり。ミチルとチルクサンダーはなんとなく家でダラダラしていた。
 若いモンが二人も揃ってぐうたらしているなんて。待って。チルクサンダーって、若い、でいいのかな?
 そんな考えを払拭するべく、ミチルは意を決してチルクサンダーの膝の上から立ち上がる。

「チルくん、健康のために外出しよう!」

「うむ。良いぞ」

 チルクサンダー的にはミチルを永遠に膝に乗せていても良いのだが、ミチルがやりたい事をするのには基本賛成である。
 一人でどこかに行こうという訳ではないし、ミチルの行動に必ず自分がついていく前提ならば、チルクサンダーに拒否する理由はない。

「チルくんは、どこ行きたい?」

 外出しようと言ったのに、ミチルはノープラン。そんなお気楽な感性にチルクサンダーは思わず笑みを漏らす。
 それから少し考えて、ミチルと何を見たいか、チルクサンダーにはちょっとした希望があった。

「そうだな……我、電車が見たい」

 鉄の塊が列を成して猛スピードで走り去る。
 最近のチルクサンダーはその景色がお気に入りだ。

「やだあ、カワイイ♡ いいよお、じゃあ線路沿いを散歩しよう!」

 年齢不詳・暗黒カレピはバブみが止まりません!
 チルクサンダーには外界の全てが新鮮で、ミチルは彼が新たに興味を示すものに一喜一喜(※一憂はない)している。
 電車が見たいだなんて、五歳児の少年でちゅか、状態である。

「ヒジリン橋からなら電車が良く見えるよお♡」

「うむ。早く行こう」

 こうしてミチルは電車が見たいチルクちゃんダーと手を繋いで散歩に出かけるのであった。



「うわああ! チルクサンダー、黒い電車通ったよ!」

 橋の上から、電車が通り過ぎるのを見続ける。
 途中でたい焼きを買って、もぐもぐしながら電車が通るのを待つ。
 ハッキリ言って至福である。

「おお……黒い、カッコいい……」

 通り過ぎた黒光りする観光列車に、チルクサンダーは大興奮していた。

「やはり黒はいい。落ち着く……」

「チルくんはほんとに黒が好きだねえ」

「うむ。このたい焼きも、黒い甘いのが詰まってる。おいしい。黒いはおいしい……」

 無心でもぐもぐしながら、目をキラキラさせて電車を眺めるチルクサンダー。やっぱりバブみが止まりません。

「あんこ、黒くて甘くて美味しいねえ」

 なのでミチルも口調がすっかりお母さんになってしまう。

「うん。あんこ、黒くておいしい。電車、黒くてカッコいい」

 チルクサンダーの相槌は基本「うむ」なのだが、気を抜くと「うん」が出る。
 それが非常に可愛くて、もううちの息子(?)が一番!状態である。

「我、真っ黒な空間にずっといたから、黒を見ると落ち着くのだ」

「ああ、そっかあ……そうなんだあ」

 何十年もあんな異空間に居て、食べるものも毒入りチョコレートで。チルクサンダーは辛い日々を送っていただろう。
 彼の境遇を想像すると、ミチルもなんだかしょんぼりしてしまう。

「黒、は我そのもの。良い意味でも悪い意味でも。我はそれを受け入れて今を生きる」

「そだねえ……」

「だが、我は、我の『黒』はついに『彩光』を得た」

「ん?」

 ミチルが首を傾げていると、チルクサンダーは残ったたい焼きのしっぽを食べてからミチルの手を取った。

「我の『黒い』空間を裂いて、『虹色』に光るミチルが現れたのだ」

「ほあ……」

 ちょっと待って。めっちゃイケてる顔面だな、おい。
 ミチルはチルクサンダーの紅い瞳に、その光に囚われてしまった。

「オマエがいるから、我の世界に色がついた。彩光を放つ、オマエが我の最高だ」

「ふおぉ……」

 待って待って。イケ過ぎてるよ、そのスマイル。

「我、まだわからぬ事がたくさんある。だが、ミチルが全ての道標。ミチルがいれば何も怖くないのだ」

「ああーん♡」

 やっぱりうちの息子(?)が最高です! いや、最愛です!!
 ミチルは存分に愛を語ってもらって大満足。


 
「ところでミチル。我、息子扱いはちょっとヤダ」

「えっ、そっか、ゴメン!」

 見透かされていた行動に、ミチルは焦って謝った。
 ていうか「ヤダ」て。興奮するな、おい。
 
 そんなミチルをニヤリと見据えて、チルクサンダーは爆弾を落とす。

「だが、我のムスコを扱うのは大歓迎だ」

「……おおおい! 弩級の下ネタぶっこむなァア!」

「よしよしして欲しい」

「ンマー♡」



 という訳で、帰ってすぐにチルくんを「よちよち♡」してあげました。
 いや、情緒わい。
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