04 もしもミチルがカフェバイトをしていたら

 オレの名前は坂之下(さかのした)ミチル!
 平凡な大学に通う、平凡な大学生さ! だけど今、オレは都会のオシャレタウンでオシャレカフェバイト中!
 ここで働いている時だけ特別な制服を着て、特別なオレになれるんだ!

 特別なオレには、いつかきっと特別な「最愛」が……



 た、大変だあ。
 もんのすごいイケメンが誰かを待ってる……!

 青みがかった髪の毛をボブカットに伸ばして、メチャクチャ色白で王子様みたいな人です。
 なんかキラキラなオーラも見えます。そんな人が待ちぼうけみたいに、もう三十分も一人でいるんです。

 プリンス系イケメンが普通にやってくる所は、さすがのオシャレカフェ。こういうシチュエーションに出会えるからバイト面接受かって良かった。

 でも……

「……」

 プリンスイケメンが、誰を待ってるのか気になっちゃう。
 こんな綺麗な人を待たせるんだから、きっとものすごい美女が来るんだろう。
 そう、こんなぼっちモブのオレには関係ない。大学デビューで滑ったオレなんか。


 
「おい、そこのお前」

「ふえっ?」

 あんまり見ちゃ悪いから仕事に集中しようと思っていた矢先、プリンスイケメンから声をかけられてしまった。

「ご、ご注文で、ですか……っ?」

 きゃあぁ、かっこ良すぎて声が上ずるぅう。
 そんなオレの緊張を感じたのか、プリンスイケメンはニヤリと笑っていた。

「おいおい、そんなに緊張しなくていいぜ。まあ、無理もねえけどな」

「は、はあ……?」

 あれ、この人、自分がイケメンだって知ってる系のイケメンなのかな。だとすると話が変わってくるぞ。
 イケメンは自分の美に対しては鈍感でなければならないのに。(※ミチルの偏見です)

「ふっふ、テレビでしか見られないおれが目の前にいる感想はどうよ?」

「テレビ……? ひょっとしてゲーノージンの人ですか?」

 なるほど。芸能人なら常識外れの美でも納得出来る。オレは知らない人だけど。
 えっ、芸能人!? 突拍子がなさ過ぎてオレは驚きが後から湧いてしまっていた。

「ハアァ? お前、おれ様を知らねえのか?」

「す、すすす、すみませえーん!」

 ヤバイ! 即驚いてしかるべき案件に、完全に乗り遅れた! オレってほんとバカ!

「伝説の子役エリィ(・・・)を知らねえのか、お前は!?」

「ごめんなさい! テレビはアニメしか見ないのでええ!」

 子役からキャリアがあるガチの芸能人だった!
 怒らせたらオレは業界にはいられなくなる!? 業界ってドコ?

「……ンだよ、ちっくしょー」

 だけど子役イケメン・エリィさんは怒らずにトーンダウンして頬杖をついた。
 指でテーブルをトントン叩いてイライラをオレに見せつけてくる。


 
「あのー、お待ち合わせか何かですか?」

 ……って聞いて欲しいんだろうなー。

「まあな。おれ様、今度ドラマの主演やんだよ。その取材なんだけど、記者が来ねえ」

「ははあ。ドラマってどんなドラマですか?」

 ……って聞いて欲しいんだろうなー。

「ふふん! ダメ新入社員のおれが実は某国の王子様だった!っていうラブロマンスだ☆」

「お、おお……」

 すんごいB級コメディ臭がするけど大丈夫かな。ど深夜帯ですかね? ……とかは言えなかった。

「おい、絶対見ろよ。一話の感想、聞きに来るからな!?」

「えええー? まあ、見ますけどぉ」

 内容はさておき、貴方の姿が見れるなら録画までしますけど。
 オレの受け答えに満足したのか、エリィさんは席を立とうとしていた。

「ハイハイ、時間切れだ。撮影が始まるからおれは行くぜ」

「撮影ですか、頑張ってくださいね」

 ……って言って欲しいんだろうなー。

「ふん。まあ……収穫はあったな」

「ほえ?」

 エリィさんはなんだかほっぺを紅くしてオレを見る。
 さすがのキャリアでも主演のプレッシャーとかがあるんだろうか。


 
「おい、おれ様は休憩のたびにここに来るからな。いつでも準備しておけよ」

「はわ、わかりました!」

 大変だ、店長に言わなくちゃ。超極太客をゲットしましたよって。

「……お前が必ずいろって意味だからな!」

「はい?」

「おれ様の給仕はお前にしかさせないから、そのつもりでいろよ!!」

「ふええ!?」

 カフェで指名はできません! 聞いたことないよ、そんな制度!

「お前、名前は?」

「ミ、ミチルです!」

 しまった、なんか雰囲気にのまれて名乗っちゃった。
 するとエリィさんはにまぁと笑って言う。

「よし、ミチル! お前はおれ様こと『天才主演俳優エリオット』専用メイドだぜ!」

 どこ見て言ってる!?
 オレのナニを見てメイド指名してんの?

「じゃあな、愛してるぜ!」

「ぴえ……っ!?」

 最後に爆弾的な捨て台詞を残してエリオットは去って行った。



 事の顛末を店長に話したら、鬼のようなシフトを組まれました。
 あ、でも時給もちょっと上がりました♡
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