04 もしもミチルがカフェバイトをしていたら

 オレの名前は坂之下(さかのした)ミチル!
 平凡な大学に通う、平凡な大学生さ! だけど今、オレは都会のオシャレタウンでオシャレカフェバイト中!
 ここで働いている時だけ特別な制服を着て、特別なオレになれるんだ!

 特別なオレには、いつかきっと特別な「最愛」が……



「いらっしゃいませ……え、えぇぇ!?」

 来客を迎えたオレはその姿に心臓が飛び跳ねた。
 いやいや、知り合いではないよ。そういう驚きじゃなくてね。

「……一人、なのだが」

「イケメン一名様、ご来店!」

 店に現れたのは、黒髪短髪の長身で涼しげな黒い瞳を携えた超絶イケメン(がっしり系)だった!

「む?」

「あ、いえ、おひとり様ですね、ご案内します……ぅうす!」

 あぶねー。ドキドキし過ぎて本音を叫んでしまった。
 でもこのヒト、そういうの鈍そうで簡単に誤魔化せてしまった。ラッキー。

「ごご、ご注文はお決まりですくわ、かっ、かあ?」

 ちょっと待って!
 イケメン過ぎて声が上擦る! 誰か助けてえ!

「む、では、カレーライスを……」

「か、カレーライスですか? すみません、当店にはございませんが……」

 何故カレー?
 そしてこんなオシャレタウンのオシャレカフェでカレーライスがあるわけないだろ!(※ミチルの偏見です)

「む、む。そうか。では……ええっと」

 このヒト、こんなにイケメンなのに場慣れしてない!
 ていうか着てる服も、オシャレとは遠い感じの迷彩シャツだし。大丈夫かな?

「……すまない。こういう洒落た喫茶店は初めてで。君のお勧めはないだろうか?」

 おずおずと甘えたように聞いてくるイケメンにキューンです!!
 なんてこと、こんな目の覚めるようなイケメンがオレの意見を求めるなんて!

「え、ええっと、そうですね。お腹が空いているならチーズ入りパンケーキはいかがですか? ソーセージが付いてて美味しいですよ」

「で、ではそれを。あとアイスコーヒーを」

「かしこまりました!」

 ウッソー、オレのお勧めをこんなイケメンが食べてくれるなんて。オレが作るわけじゃないけど嬉しい!
 オレはいそいそと出来立てアツアツのパンケーキを彼の元に運んだ。

「お待たせしました!」

 目の前のパンケーキを見て、イケメンさんはキラキラ目を輝かせていた。

「ああ……世の中にはこんなに美しい食べ物があるのか」

「お、大袈裟ですね……?」

 思わずつっこんでしまった。
 でもイケメンさんは気分を害する風もなく、淡々と言う。

「いや、私の勤務する駐屯地にはこのような食事は出ない」

「ちゅっ……! もしかして自〇隊の方なんですか?」

「うむ、人々を守るべく訓練の毎日だ。今日は非番だが」

「ほえーそうですかーごくろうさまですぅ」

 イケメン×アーミー=ワイルドイケメンの出来上がり。どうりでシャツが迷彩だと思った。
 職業を聞くと、彼のかじるソーセージもなんだかワイルドに見えてくる。

「ああ、美味しい。君に聞いて良かった。ありがとう」

 イケメンのキラキラスマイル攻撃が発射されました!
 オレの心の駐屯地が爆撃を受けます!!

「いえ、その、あの、お疲れ様です!」

「……君の名は?」

「さっ、坂之下ミチルであります!」

 思わずなんかそれっぽく答えてしまった。
 目の前のイケメンさんは、オレをじいっと見つめてはにかむ。

「また、非番の日に来てもいいだろうか」

「も、もも、もちろんであります!」

 大変だ、その日に備えて毎日シフト入れなくちゃ!



 会計を終えたイケメンさんは、最後にオレをなんだか熱っぽく見つめて言った。

「私は……国民全てを守る責務があるというのに」

「ほえ?」

「今は、ただ一人を守りたいと思ってしまった」

「ぴゃっ!」

 ちょっと、心臓に直接撃ち込まないでえ!

「では、また……」

 去ろうとする大きな背中を、オレは思わず呼び止めてしまう。

「あ、あの! あなたのお名前は……?」

「……ああ、すまない。私はジェイ」

「ジェイ……」

 心に刻みつけます、その名前。

「いつか君を迎えに来る男の名だ……忘れないで欲しい」

 きゃあああああ♡


 
「またの御来店(プロポーズ♡)お待ちしていますぅうう!」
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