03 耳としっぽが生えちゃった!

 月が綺麗な夜は……
 眠っていた野生が目覚める……



 砂漠に浮かぶ月。邪魔するような建物がないため、月だけが際立って見える。
 そんな光景を、ミチルはため息吐いて見ていた。

「ねえ、ルークぅ。月が綺麗だね」

「ああ、そうだね」

 ルークは読みかけの本を閉じて窓の外を見る。
 月明かりに照らされたルークの姿は、月の沙漠を進んだ王子様も真っ青なほど綺麗。

「ふふ、うふふ」

「ミチル? なに?」

 ミチルの意味深な微笑みに、ルークは首を傾げていた。

「あのね、『月が綺麗ですね』って言うのはオレの世界では『愛してます』って意味なんだよぉ♡」

「そう、なの? 素敵な言葉だね」

「うふふふ!」

 素直に関心するルークの反応が新鮮でミチルは嬉しくなってしまう。
 日本ではだいぶ擦られてすっかりメジャーになってしまった言い方だからだ。

「ミチル」

「なあに?」

「月が綺麗です」

「……やだあ♡ ルーくんの方が綺麗だよぉ」

「ミチルの方がずっと綺麗、です」

 あまーい!
 甘過ぎるぅうう!

「うっふふふ!」

 ミチルは興奮で笑いが止まらない。

「……」

 しかし、突然ルークの動きが止まった。
 月をずっと見上げながら固まっている。

「ルーク?」

「わ……わ……」



 わおーん……!



 ルークが突然ワンワンボイスを!
 ここで「Meets05 優しいバーサーカー」編をお読みでない方に説明しよう。ルークはミチルに生成してもらった青いチェーンネックレスで、ミチル専用の忠犬に変身するのである!
 その見た目は蒼い毛並みが輝くワンワンなのだが……

「ふわぁ!」

 ミチルはルークの変化に目を見張る。
 ケモ耳とケモしっぽだけが生えていた。色はブラウン。ミチルのワンワンルークカラーではない。
 月を見たら生えた所を見ると、さてはオオカミの耳としっぽか。

「キャアア! 初期設定の『優しい獣人』の方のルークじゃね!?」

 ストップ! メタ発言!!



「あ、ああ……」

 ルークは己の変化に戸惑っていた。

「なんで、こんな、こと……?」

 ミチルはもっと近づいてルークの肩に触れる。

「ルーク、大丈夫? 具合悪いとかない?」

「それはない、けど……」

 ミチルを見つめるルークの視線が熱っぽい。
 翠色の瞳が、何故か今夜だけ紅くなっていた。

「ペロペロワンワンではなく、はむはむガオガオしたいです……」

 ちょっとそれ、具体的にはどうすんのぉお!?
 興奮と驚愕で今度はミチルが固まった。



「ミチル……」

 はむはむ

「ミチル……」

 ガオガオ



「ミチル、綺麗です……」

「ぷえええぇ……♡」

 今宵、オオカミの野生が目覚めました。



「ミチルのここは、もっと綺麗です……」

 全部、愛されちゃう♡
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