02 一緒に温泉プール

 ぞぞずぱーん!
 ざざぞっぱぁーん!

 それはチルクサンダーが出す波音。
 ミチルは目の前でざっぱざっぱと泳ぐ姿に唖然としている。

 いや、いいんですよ。ここはプールですからね。
 幸い、そんなに人もいないし。ちょっとくらい本気で泳いでもいいでしょう。

 ざっぱっぱぁーん!!

 でもさ。ここ、温泉プールなんですけど!?
 あったかい温水を、競泳みたいに泳ぐ人はいないんじゃないかな!?

 きらめく水飛沫。
 大きな魔力を有するチルクサンダーが飛ばす水の粒は、プールサイドにいる人間をもれなく魅了していく。
 キラキラ光る魔法の粒が、泳ぐチルクサンダーをますます美しく彩っている。

 大きな、美しい、黒いドルフィン。
 そんな形容が似合うチルクサンダーは、水飛沫を次第に静めて、優雅にすうーっとミチルに近づいてきた。



「……うむ、悪くないだ」

「ふわあああっ!」

 プールサイドにザバッと上がってきたチルクサンダーを見て、ミチルはほぼ♡♡みたいな声を上げた。

「どうした、ミチル?」

 濡れ濡れの。
 雫が滴る、キラキラで。
 黒髪も、美顔も、なんか色んな箇所がヌレヌレ♡だ。

 こんなん……美の化身、美の神やんけ! さすがカミのムスコ!!

「ぱう、ぱう……」

 哀れ、ミチルは惚れ惚れで言葉が出ない。

「ぱぱう、ぱう……」

 ずぶ濡れスーパーモデルの美しさに魅せられて。
 なんだかわからないけど、泣けてくる。

「ちっきしょぉおお!」

 こんな浅瀬の温泉プールで泳ぐ人はいません! 危険でしょ!
 そう注意してやろうと思っていたのに。

「くやしぃいいい!」

 ミチルの一般常識を軽く飛び越える美を見せつけられた。
 完☆全☆敗☆北!


 
「ミチル。我はプールサイドで何か食したいぞ」

 美の神(ムスコ)は一転して無邪気な子どものようにはしゃいでいた。
 温泉もプールも、レジャーというものが初めて。チルクサンダーはウキウキでミチルを誘う。

「ミチルのオススメを我は食したいぞ」

「え、ええー? もお、しょうがないなー」

 オコサマ♡に甘えられる気分は悪くない。それが超絶イケメンの皮を被ったオコサマなら尚更である。
 二人はプールサイドのチェアに座ってメニューを開く。

「あっ、チルくん! チョコパフェがあるよ」

「チョコとはチョコレートか? ぱふぇ、とは何だ?」

 改めて聞かれると、ミチルもどう言えばいいかはわからない。
 言うよりも見せた方が早いし、ミチルには確実に勝算があった。

「ふっふー! 絶対に美味しいから大丈夫だよぉ」

「そうか。ミチルがそこまで言うなら、楽しみだ」

 チルクサンダーの期待を背負って、ミチルは『スペシャル甘々バナナチョコパフェ』を二つ注文するのだった。



「ほお……黒くて可愛らしい。うまそうではないか」

 目の前のキラキラ黒々チョコパフェに、チルクサンダーは弾んだ声を出す。ミチルはその様子を食い入るように見ていた。

「ホラホラ、一口、食べてご覧♡」

「うむ……おお、黒くて甘い。黒くてウマイぞ」

 さっきから「黒くて」という形容詞が気になるが、チルクサンダーは真っ黒異空間にいたせいで黒い食べ物が大好きである。
 彼が「黒い」と言う時、すなわち褒め言葉を言っているのだ。

「うふふう、良かったね、チルくん」

 ミチルも一緒にチョコパフェを食べる。
 やだあ、黒くてあまぁい♡
 流れる雰囲気もあまぁい♡♡



「ミチルよ。我は黒の次はピンクを食べたいぞ」

「ん? 桃とか?」

 濡れ濡れスーパーモデルは、超美麗な顔で。

「ふ……なるほど。お前もそう望むか」

 とんでもねえ〇〇を言ってのけるのだ。

「我はミチルのピンクな桃〇を食べたいぞ」

「きゃあああ!」



 あまーい!
 じゃなくて、
 シモーい!!
6/6ページ
スキ