ジェイの章 私の誇り尊き天使
始まりの地、カエルレウム凱旋を果たしたジェイとミチル。
大歓声と大怒号を浴びながら、ジェイは上官風の騎士に引きずられていった。
残されたミチルは、なんか結構なハンサムからナンパ(?)されている!
「な、なんすか……?」
ミチルは警戒心丸出しで、目の前のゆるふわハンサムと対峙した。
おじさんにナンパされた経験はあるけれど、若いハンサムからはない。
もっともナンパを飛び越えて【いやーん】な経験ならあるけれど。
であるからして、ミチルにとって「若いハンサム」はほぼ敵なのである!
「初めまして。私はクローバー」
ゆるふわハンサムは、細い目でニコニコ笑う。とても胡散臭い。
ミチルは体を強張らせたまま、動けなかった。
「はあ……」
どうしよう。
こんな事になるなら、迷ってないでさっさとジェイを追いかければ良かった。
だがもうジェイはいない。かすかに頼れるのは面識がある門番のおじさんだ。
ミチルはとっさにおじさんに「助けて」の視線を投げかけた。
するとおじさんは詰所の扉を開けてこちらにやってくる。良かったとホッとしたのだが。
「これはクローバー様。ここまで来なさるなんてお珍しい」
「ん!?」
ミチルは門番のおじさんには無視されてしまった。
おじさんはゆるふわハンサムの方に愛想笑いを向けている。
この二人、グルか!? いや、グルってなんだ! 門番のおじさんは役人でしょ?
役人が知ってて礼儀正しくしてるって事は、こいつも役人なのか!? 官僚か? キャリア組なのか?
……そんな思考をミチルがぐるぐると巡らせているうちに。
「ふふふ。お会いできて光栄です、ミチル様」
「ヒイイ!」
不覚。ハンサムに手を握られてしまった。
いやだ、あんな経験はもう無理です! オレはすでに人妻(?)なんだから!
「私は、カエルレウム魔法顧問のクローバー」
背筋がオゾゾとしているミチルに構わず、ゆるふわハンサムはニコニコ笑っていた。
魔法顧問がなんぼのもんじゃい、と思っているミチル(注 怖くて口が聞けない)に、希望の光を灯したのはハンサムの付け足した言葉。
「アルブスから出向の身です。我が師の名はスノードロップ」
「ぽえ……っ!」
知ってるジジイの名前がデターーーー!
ミチルは途端に身体に血が巡る。恐怖心が薄らいでいった。
あのクソ魔ジジイの弟子。そういえば、そんな話を聞いた事がある!
「ぽっ、ぽんとに?」
だがミチルも成長した。鵜呑みに信じることはしない。動揺で言葉遣いがおかしくなったとしても。
「我が師のパイは食べましたか? 美味しかったでしょう。私のお勧めはタルトの方ですがね」
「ぽわい!」
スノードロップの森のお菓子作りを知っている事が、ミチルの警戒心を解いた。
なあんだ、ほんとにクソ魔ジジイの弟子みたい。ミチルはやっと安心する。
「すみませんね。ラベンダー君は上からどやされて最近ノイローゼ気味でね。そんな時に貴方がたがいらっしゃると知らされたものだから」
ゆるふわハンサム……もとい、クローバーはミチルの手を離さずにニコニコ笑顔のまま続ける。
「送り出したまま何ヶ月も音沙汰がなかった部下を見た途端に、色んなものが爆発しちゃったんでしょう」
「えっ、オレ達が来るって知ってたんですか?」
ミチルが驚いて尋ねると、クローバーはやはりニコニコしたまま頷いた。
「もちろん。ペルスピコーズ法皇様から伝達が来ていますよ」
「なあんだー、じいちゃん、ナイスう」
ミチルを目に入れても痛くないエーデルワイスに抜かりがあるはずがない。
曽祖父の名前を出されて、ミチルは即座にあっさり心を緩めた。
「さあ、参りましょう。最愛の配偶者を放って仕事に行くなど、不届きなカリシムスですね」
「ええー♡ 配偶者だなんて、そんなあ」
エスコート風におてて繋いで王宮へ。
ミチルはおだてられて上機嫌でクローバーについて行った。
取り残された門番のおじさんが、人知れず呟く。
「今回のプルケリマがアホだっていう噂は本当だったのか……」
◇ ◇ ◇
ついに入ってしまった、カエルレウム王宮。豪華な建物なのは間違いない。大理石的な床がピカピカしている。
だが、ミチルはアルブスの王宮も見ているし、世界一の教会を我が物顔で闊歩していた。
横道に逸れて、騎士の控える事務所に通されたぐらいでは驚かないのである。
「ああージェイ! いたあ!」
ガミガミガミガミ……
ミチルがその部屋に通された時、愛しのジェイは猫背になって叱られており。
ガミガミガミガミ、ガーミガミ!
真っ赤になって怒り続けるラベンダーがまず、ミチル達に気づいてやっと叱責が止まった。
「クローバー様! 勝手に入られては困ります!」
「ええー? だってこんなにかわゆいお客様を待たせちゃダメでしょお?」
クローバーからのエスコートを受けて、ミチルは彼の左手に右手を乗せながら完全に緩んでいた。
ジェイの背中を確認できて安心したのが大きな要因だ。
「ミチル……ッ、ミ、ミチル!?」
ジェイは振り返ってミチルの姿を確認した途端、わかりやすく動揺した。
ミチルを置いて来てしまった。
上司にドヤされているのを見られてしまった。
さらに……
「ん?」
ミチルはジェイの視線の先に気づく。
重ねられたおてて♡に、それは注がれていた。
「むっ、胸が焦げる……ッ!」
ハンサム程度に嫉妬するんじゃない!
大歓声と大怒号を浴びながら、ジェイは上官風の騎士に引きずられていった。
残されたミチルは、なんか結構なハンサムからナンパ(?)されている!
「な、なんすか……?」
ミチルは警戒心丸出しで、目の前のゆるふわハンサムと対峙した。
おじさんにナンパされた経験はあるけれど、若いハンサムからはない。
もっともナンパを飛び越えて【いやーん】な経験ならあるけれど。
であるからして、ミチルにとって「若いハンサム」はほぼ敵なのである!
「初めまして。私はクローバー」
ゆるふわハンサムは、細い目でニコニコ笑う。とても胡散臭い。
ミチルは体を強張らせたまま、動けなかった。
「はあ……」
どうしよう。
こんな事になるなら、迷ってないでさっさとジェイを追いかければ良かった。
だがもうジェイはいない。かすかに頼れるのは面識がある門番のおじさんだ。
ミチルはとっさにおじさんに「助けて」の視線を投げかけた。
するとおじさんは詰所の扉を開けてこちらにやってくる。良かったとホッとしたのだが。
「これはクローバー様。ここまで来なさるなんてお珍しい」
「ん!?」
ミチルは門番のおじさんには無視されてしまった。
おじさんはゆるふわハンサムの方に愛想笑いを向けている。
この二人、グルか!? いや、グルってなんだ! 門番のおじさんは役人でしょ?
役人が知ってて礼儀正しくしてるって事は、こいつも役人なのか!? 官僚か? キャリア組なのか?
……そんな思考をミチルがぐるぐると巡らせているうちに。
「ふふふ。お会いできて光栄です、ミチル様」
「ヒイイ!」
不覚。ハンサムに手を握られてしまった。
いやだ、あんな経験はもう無理です! オレはすでに人妻(?)なんだから!
「私は、カエルレウム魔法顧問のクローバー」
背筋がオゾゾとしているミチルに構わず、ゆるふわハンサムはニコニコ笑っていた。
魔法顧問がなんぼのもんじゃい、と思っているミチル(注 怖くて口が聞けない)に、希望の光を灯したのはハンサムの付け足した言葉。
「アルブスから出向の身です。我が師の名はスノードロップ」
「ぽえ……っ!」
知ってるジジイの名前がデターーーー!
ミチルは途端に身体に血が巡る。恐怖心が薄らいでいった。
あのクソ魔ジジイの弟子。そういえば、そんな話を聞いた事がある!
「ぽっ、ぽんとに?」
だがミチルも成長した。鵜呑みに信じることはしない。動揺で言葉遣いがおかしくなったとしても。
「我が師のパイは食べましたか? 美味しかったでしょう。私のお勧めはタルトの方ですがね」
「ぽわい!」
スノードロップの森のお菓子作りを知っている事が、ミチルの警戒心を解いた。
なあんだ、ほんとにクソ魔ジジイの弟子みたい。ミチルはやっと安心する。
「すみませんね。ラベンダー君は上からどやされて最近ノイローゼ気味でね。そんな時に貴方がたがいらっしゃると知らされたものだから」
ゆるふわハンサム……もとい、クローバーはミチルの手を離さずにニコニコ笑顔のまま続ける。
「送り出したまま何ヶ月も音沙汰がなかった部下を見た途端に、色んなものが爆発しちゃったんでしょう」
「えっ、オレ達が来るって知ってたんですか?」
ミチルが驚いて尋ねると、クローバーはやはりニコニコしたまま頷いた。
「もちろん。ペルスピコーズ法皇様から伝達が来ていますよ」
「なあんだー、じいちゃん、ナイスう」
ミチルを目に入れても痛くないエーデルワイスに抜かりがあるはずがない。
曽祖父の名前を出されて、ミチルは即座にあっさり心を緩めた。
「さあ、参りましょう。最愛の配偶者を放って仕事に行くなど、不届きなカリシムスですね」
「ええー♡ 配偶者だなんて、そんなあ」
エスコート風におてて繋いで王宮へ。
ミチルはおだてられて上機嫌でクローバーについて行った。
取り残された門番のおじさんが、人知れず呟く。
「今回のプルケリマがアホだっていう噂は本当だったのか……」
◇ ◇ ◇
ついに入ってしまった、カエルレウム王宮。豪華な建物なのは間違いない。大理石的な床がピカピカしている。
だが、ミチルはアルブスの王宮も見ているし、世界一の教会を我が物顔で闊歩していた。
横道に逸れて、騎士の控える事務所に通されたぐらいでは驚かないのである。
「ああージェイ! いたあ!」
ガミガミガミガミ……
ミチルがその部屋に通された時、愛しのジェイは猫背になって叱られており。
ガミガミガミガミ、ガーミガミ!
真っ赤になって怒り続けるラベンダーがまず、ミチル達に気づいてやっと叱責が止まった。
「クローバー様! 勝手に入られては困ります!」
「ええー? だってこんなにかわゆいお客様を待たせちゃダメでしょお?」
クローバーからのエスコートを受けて、ミチルは彼の左手に右手を乗せながら完全に緩んでいた。
ジェイの背中を確認できて安心したのが大きな要因だ。
「ミチル……ッ、ミ、ミチル!?」
ジェイは振り返ってミチルの姿を確認した途端、わかりやすく動揺した。
ミチルを置いて来てしまった。
上司にドヤされているのを見られてしまった。
さらに……
「ん?」
ミチルはジェイの視線の先に気づく。
重ねられたおてて♡に、それは注がれていた。
「むっ、胸が焦げる……ッ!」
ハンサム程度に嫉妬するんじゃない!