ジェイの章 私の誇り尊き天使
生き残った二人は、今、幸せの絶頂にあった!
「はい、ジェイ♡ あーん♡」
「うむ、ミチル。あーん」
「おいちい?」
「うむ、うまい」
朝食も摂れずに式典に臨んで。
うっかり命の危機に晒されて、昼食も逃す。
ミチルもジェイも、お腹が激減りだった……ッ!
とりあえず二人にはご馳走というご褒美が与えられた。
二人っきりなので、このラブラブ体たらくである。
世界の英雄であるカリシムスの命を狙った罪は重い。
事はカエルレウムだけでは止まらないかもしれない。
そんな世界の大罪人、元国防大臣ブッドレアは、ネモフィラ将軍によって緊急逮捕された。
今は別室にて地獄の尋問(byクローバー)を受けている。
はっきり言おう。
尋問(byクローバー)の後、ブッドレアが人の形を保っているかは保障できないっ!
「ふうー、やれやれ。あー楽しかった☆」
ストレスでも発散したんだろうか。スッキリした顔をして、クローバーが二人の遅いランチタイムに入ってきた。
ちょうど、ミチルが口移しでジェイにブドウを食べさせているところ。
「ワーオ、すごいですねえ。王宮のど真ん中で。大胆だなあ」
予想外の闖入者に、ミチルもジェイもオタオタ慌てる。
クローバーの言う通り、ここは王宮内の食堂なので誰かが入ってくる予想くらいはしておくべき。
完全に緩んで、ブドウをマウス・トゥ・マウスで、一緒にもぐもぐ♡とかやってる場合ではない。
「く、クローバー殿……ッ!」
「ブ、ブドウが、ブドウが喉に……ッ! げえっほ、えっほ!」
ほんの数時間前。大いなるメロドラマを演じていた二人だったのに。
今やギャップ満載のアホ変態。
クローバーは無言で冷たい笑顔を浮かべている。
「すまない、遅くなった」
続けてネモフィラ将軍も入ってきた。
さすがに将軍の前ではピシッとするミチルとジェイである。
クローバーはそれを見て悔しがった。
「あっ、惜しいな。将軍にこそ見せるべき光景だったのに!」
「ごめんなさいっ! 許してください!」
ミチルはなんか謝った方がいい気がした。
ジェイのアホラブ行動をクローバーから告げ口されたら、今後に関わる。
「ミチル様……ひとつ、貸しですよ?」
「ひいいぃ!」
クローバーの、感情のない細目がコワイ。
ミチルは大いに震え上がった。
「顧問殿、報告を聞こう」
さすが将軍。ミチルとジェイの常識外れラブラブ行動には興味がないようだ。
食堂テーブルの、何も乗っていない端の席に着いて、ネモフィラ将軍はクローバーにそう催促した。
「はあ。まあ、いいですけどねえ」
クローバーは頭をポリポリ掻きながら首を傾げている。
ミチルもジェイも、フォークを置いて背筋を伸ばした。
「えーっと、どうしようかなー……」
促された割に、クローバーはなんだか渋っている。
「情報の取捨選択が難しいんだよなー……」
取捨選択て!
全部は教えてくれないんかい!
ミチルは心の中でつっこんだが、口に出せる勇気はない。
「顧問殿。気遣いは無用。貴方が必要だと思うなら、遠慮なく言って欲しい」
「え。やだなあ。責任重大だなあ」
クローバーはますます困ったような笑顔を浮かべて、とりあえずと前置いて、とある「国」について語り出す。
「じゃあ、まずは失われた王国・ケラススについて少し説明しましょうか」
「あ……」
ミチルは唐突に思い出す。
ブッドレアが口走った言葉を。
『そいつはケラスス王家の末裔なのだ!』
ジェイを指差して、確かにそう言った。
何の事かわからなかった。初めて聞く言葉だったから。
だが、「王家の末裔」と言うだけでも本当はおおよその検討はついていた。
「ジェイは……」
ケラスス王家の末裔。
「その国の王子様なんですか?」
「ええっ!?」
ミチルがクローバーを待たずにそう聞くと、ジェイの方が大きく驚いていた。
あ、やべ。
気を失っていたジェイには初知りだったか。
「な、何を言うんだ、ミチル!?」
「あー……ごめえん」
そんな二人のやり取りを、クローバーはオホンとわざとらしく咳をして止める。
「ジェイ・アルバトロス君、よく聞きなさい」
クローバーの細目が少し開いて、遠い伝説を語る。
「五十年ほど前。誰も知らない国が滅びました」
どういう事?
誰も知らないのに、滅んだってわかるの?
ミチルもまた、ジェイとともに首を傾げてクローバーの話を聞く。
「その国の名はケラスス。誰も、カエルラ=プルーマに暮らす誰も知らない国です」
だから……
なんで誰も知らないのに、国の名前を知ってんの?
ミチルは脳裏に何度も疑問符が浮かぶ。
けれど、その国については何か、茶化してはいけない雰囲気を感じた。
ミチルもジェイも、固唾を飲んでクローバーの続きを待つ。
「誰も知らないことにされた 国でした」
そう言い直すクローバーの表情はとても神妙で深刻だ。
ミチルは、その国にはとんでもない秘密があるのではと想像した。
「誰にも知られずに滅び、忘れ去られる運命だった国。そんな亡国にも、生き残った者がいた」
食堂の空気が冷えていく。
シンと静まり返る部屋に、クローバーの淡々とした言葉が響く。
「ある時、亡国ケラススの王女が、このカエルレウムの地に流れ着いた」
こんな事になるなんて、ミチルは全然予想出来なかった。
「……まあ、詳細は省きますけど」
ジェイの「真実」がこんな風に現れるなんて、思ってもみなかった。
「ジェイ・アルバトロス」
クローバーの、口が「真実」を告げる。
「君は、そのケラスス王女のお孫さんにあたります」
ジェイが……亡国の王子様だったなんて。
「はい、ジェイ♡ あーん♡」
「うむ、ミチル。あーん」
「おいちい?」
「うむ、うまい」
朝食も摂れずに式典に臨んで。
うっかり命の危機に晒されて、昼食も逃す。
ミチルもジェイも、お腹が激減りだった……ッ!
とりあえず二人にはご馳走というご褒美が与えられた。
二人っきりなので、このラブラブ体たらくである。
世界の英雄であるカリシムスの命を狙った罪は重い。
事はカエルレウムだけでは止まらないかもしれない。
そんな世界の大罪人、元国防大臣ブッドレアは、ネモフィラ将軍によって緊急逮捕された。
今は別室にて地獄の尋問(byクローバー)を受けている。
はっきり言おう。
尋問(byクローバー)の後、ブッドレアが人の形を保っているかは保障できないっ!
「ふうー、やれやれ。あー楽しかった☆」
ストレスでも発散したんだろうか。スッキリした顔をして、クローバーが二人の遅いランチタイムに入ってきた。
ちょうど、ミチルが口移しでジェイにブドウを食べさせているところ。
「ワーオ、すごいですねえ。王宮のど真ん中で。大胆だなあ」
予想外の闖入者に、ミチルもジェイもオタオタ慌てる。
クローバーの言う通り、ここは王宮内の食堂なので誰かが入ってくる予想くらいはしておくべき。
完全に緩んで、ブドウをマウス・トゥ・マウスで、一緒にもぐもぐ♡とかやってる場合ではない。
「く、クローバー殿……ッ!」
「ブ、ブドウが、ブドウが喉に……ッ! げえっほ、えっほ!」
ほんの数時間前。大いなるメロドラマを演じていた二人だったのに。
今やギャップ満載のアホ変態。
クローバーは無言で冷たい笑顔を浮かべている。
「すまない、遅くなった」
続けてネモフィラ将軍も入ってきた。
さすがに将軍の前ではピシッとするミチルとジェイである。
クローバーはそれを見て悔しがった。
「あっ、惜しいな。将軍にこそ見せるべき光景だったのに!」
「ごめんなさいっ! 許してください!」
ミチルはなんか謝った方がいい気がした。
ジェイのアホラブ行動をクローバーから告げ口されたら、今後に関わる。
「ミチル様……ひとつ、貸しですよ?」
「ひいいぃ!」
クローバーの、感情のない細目がコワイ。
ミチルは大いに震え上がった。
「顧問殿、報告を聞こう」
さすが将軍。ミチルとジェイの常識外れラブラブ行動には興味がないようだ。
食堂テーブルの、何も乗っていない端の席に着いて、ネモフィラ将軍はクローバーにそう催促した。
「はあ。まあ、いいですけどねえ」
クローバーは頭をポリポリ掻きながら首を傾げている。
ミチルもジェイも、フォークを置いて背筋を伸ばした。
「えーっと、どうしようかなー……」
促された割に、クローバーはなんだか渋っている。
「情報の取捨選択が難しいんだよなー……」
取捨選択て!
全部は教えてくれないんかい!
ミチルは心の中でつっこんだが、口に出せる勇気はない。
「顧問殿。気遣いは無用。貴方が必要だと思うなら、遠慮なく言って欲しい」
「え。やだなあ。責任重大だなあ」
クローバーはますます困ったような笑顔を浮かべて、とりあえずと前置いて、とある「国」について語り出す。
「じゃあ、まずは失われた王国・ケラススについて少し説明しましょうか」
「あ……」
ミチルは唐突に思い出す。
ブッドレアが口走った言葉を。
『そいつはケラスス王家の末裔なのだ!』
ジェイを指差して、確かにそう言った。
何の事かわからなかった。初めて聞く言葉だったから。
だが、「王家の末裔」と言うだけでも本当はおおよその検討はついていた。
「ジェイは……」
ケラスス王家の末裔。
「その国の王子様なんですか?」
「ええっ!?」
ミチルがクローバーを待たずにそう聞くと、ジェイの方が大きく驚いていた。
あ、やべ。
気を失っていたジェイには初知りだったか。
「な、何を言うんだ、ミチル!?」
「あー……ごめえん」
そんな二人のやり取りを、クローバーはオホンとわざとらしく咳をして止める。
「ジェイ・アルバトロス君、よく聞きなさい」
クローバーの細目が少し開いて、遠い伝説を語る。
「五十年ほど前。誰も知らない国が滅びました」
どういう事?
誰も知らないのに、滅んだってわかるの?
ミチルもまた、ジェイとともに首を傾げてクローバーの話を聞く。
「その国の名はケラスス。誰も、カエルラ=プルーマに暮らす誰も知らない国です」
だから……
なんで誰も知らないのに、国の名前を知ってんの?
ミチルは脳裏に何度も疑問符が浮かぶ。
けれど、その国については何か、茶化してはいけない雰囲気を感じた。
ミチルもジェイも、固唾を飲んでクローバーの続きを待つ。
「
そう言い直すクローバーの表情はとても神妙で深刻だ。
ミチルは、その国にはとんでもない秘密があるのではと想像した。
「誰にも知られずに滅び、忘れ去られる運命だった国。そんな亡国にも、生き残った者がいた」
食堂の空気が冷えていく。
シンと静まり返る部屋に、クローバーの淡々とした言葉が響く。
「ある時、亡国ケラススの王女が、このカエルレウムの地に流れ着いた」
こんな事になるなんて、ミチルは全然予想出来なかった。
「……まあ、詳細は省きますけど」
ジェイの「真実」がこんな風に現れるなんて、思ってもみなかった。
「ジェイ・アルバトロス」
クローバーの、口が「真実」を告げる。
「君は、そのケラスス王女のお孫さんにあたります」
ジェイが……亡国の王子様だったなんて。