【本編11】Final Meets 舞い降りた愛、生命そそぐ絆

 イケメン達の絆石ウィンクルムをミチルに返還すれば、ミチルのすり減った魂は修復される。
 だが、プルケリマとカリシムスの絆は初期化されるかもしれない。そうなれば、ミチルは己の「恋心」を忘れるだろう。

 法皇エーデルワイスは曽孫ミチル可愛さに、それを良しとせず、再び自ら生命を譲ろうとしていた。

 ミチルは今、とてつもない選択を迫られている。

 カリシムス達最愛を忘れるか。
 エーデルワイス肉親を失うか。

 それは、どちらもミチルの「生きる意欲」を削ぐものだ。
 命を長らえたところで、意味があるのか?

 ミチルは目の前が真っ暗になっていた。
 何も考えられない。どちらかを選ぶなんて、できない。



 

「……だが、それは可能性の話だろう?」

 闇の中、ぽんこつナイトの言葉が落ちる。

「初期化される、って言ったよね」

 その言葉にホストアサシンがほのかな光を灯した。

「おい、クソチビ法皇。ミチルをみくびってんな?」

 小悪魔プリンスが挑戦的な火を燻らせる。

「シウレンは強い子だ、そんな脅しには屈せぬぞ!」

 毒舌師範の怒号がますます炎を燃やした。

「ぼく、ミチル信じてる! ミチル、忘れないっ!」

 必死なルークの声が、その炎を輝かせる。

「……仮に忘れたとしても、ミチルは何度でも我らに惚れる」

 チルクサンダーの余裕の笑み。それは他のイケメン達に更なる闘志を燃やした。



 いいや!

「オレタチが何度でもミチルを惚れさせてみせるッ!!」



 ああ。
 イケメン達の言葉は、希望の光だ。
 六人がそう言ってくれただけで、ミチルの体に一本芯が通ったようになった。

 もう、大丈夫。
 何も怖い事はない。

 

「えぇじいちゃん、オレにウィンクルムを還す術、かけて」

「ミチル……」

 ミチルは、戸惑う曽祖父を安心させるように笑った。


 
「オレ達の絆は、そんな事で消えたりしない」

 そうだよ、だってオレは。


 
「みんなが大好きだから」


 
 誓うんだ。
 オレはみんなに誓う。
 空も、大地も、カミサマだって関係ない。


 
「オレは死なない。みんなの事も忘れない。オレは、今のオレが好きなんだ」



 絶対の信頼を持って。
 イケメン達を背にして言うミチルに、法皇はもはや折れるしかない。

「……忘れていた」

「うん?」

「当代のプルケリマとカリシムスは前代未聞のだという事をな」

「──うん!」



「ではこれより、セイソン・ミチルの魂を修復する術式を始める!」

 カツン、と杖で床を鳴らしてエーデルワイスは朗々と宣言した。
 するとワラワラと僧侶達が集まり始める。六人の僧侶が武器とウィンクルムをそれぞれひとつずつ持っていた。

「この術式は二段階に分ける。まずはワタシの魔力でもってウィンクルムを魔粒子に変え、武器に還元する」

 言いながら、エーデルワイスの足元に光る魔法陣が現れる。
 ウィンクルムと武器を持った僧侶達は、魔法陣の円線上に等間隔で立った。

「カ、カッケエェエ!」

 アニメでしか見たことのない光景が、ミチルの目の前に広がっている。
 エーデルワイスは複雑な呪文を唱えるとともに、杖を高らかに掲げた。


 
聖なる蒼き瞳サケル・プピラに光あれ!」


 
 その声に呼応して、六つのウィンクルムが蒼く光り、形を朧に変え、それぞれの武器に吸い込まれた。
 元々蒼く輝く武器達だったが、今は更にキラキラと蒼く輝いていた。

「……ふむ。第一段階は成功だ」

 軽く頷いた後、エーデルワイスは魔法陣の中央から退く。
 陣の外側まで出て、ミチルを呼んだ。

「ミチル。円の中央に立ちなさい」

「は、はは、はい!」

 急激に緊張が走る。
 さっきは大口を叩いたけれど、魔力溢れるCGみたいな現場に立たされて、ミチルはやはり不安になった。

 忘れない。
 絶対に忘れない。
 でも……



「法皇殿」

 そんなミチルの不安を打ち消すようなジェイの声が響く。

「我々が、その武器を持っていてもいいだろうか」

 イケメン六人は心を合わせてエーデルワイスを見つめた。
 請われた法皇は、ニコリと笑って頷く。

「……もちろん。皆でミチルを囲みなさい」

 僧侶達から自分の武器を受け取って、イケメン達はミチルをぐるりと囲んだ。
 中央のミチルは、みんなの笑顔を見て不安が消えていくのがわかる。
 大丈夫。きっと、大丈夫。

「目を閉じて、互いの事を想い続けなさい」

 ミチルとイケメン六人は大きく頷いて目を閉じた。



 エーデルワイスは再び杖を掲げて唱える。その声は天井を超えて空に昇るように響いた。

「七つの子を統べる全知全能のカミよ」

 聖堂に光が降り注いでくる。
 ミチルは目を閉じているけれども、どんどんと視界が明るくなっていくように感じていた。


 
「これなる巫子は御身の依代。その魂に今一度祝福を与え賜え」

 ああ……白い
 全てが光に包まれていく……


 
「蒼き運命、御身がのぞむ宿命から巫子を解放させ賜え」

 全てが白に染まる……
 蒼くなる前の色に……


 
「しかれども巫子は、巫子は必ず御身の元に赴くだろう……ッ!」

 蒼く輝く武器から、白い光が浮かび上がる。武器は輝きを失った。
 六つの光がミチルめがけて飛んでいく。
 それらはその胸の中にすうっと入り込んで溶けた。





 ……



 …………



「あ……」

 再び目を開ける。
 柔らかな光がミチルを包んでいた。



 我が愛を継ぐ者よ……



 ──カミサマ?



 其方の愛に殉じよう……
 全てを其方に託す……



 ──オレに任せるって、何を?



 世界を……頼む


 




「でえええっ!?」

 ミチルは慌てて叫んだ。
 ちょっと、なんか、とんでもないこと頼まれちゃったんじゃない!?
 ねえ、カミサマ! なんか言え!!

 しかしながら、不思議な声はそれ以上聞こえず、ミチルの視界は晴れていく。


 
「ミチル……?」

 すぐ側に少年法皇の姿があった。
 術の完了と同時に駆け寄っていたのだろう。
 ミチルよりも小さな手が、その体を支えていた。

「えぇじいちゃん……」

「今しがた、お前とワタシの生命の経路パスが切れた。ワタシが追い出されたのだ」

「それじゃあ……」

 エーデルワイスは涙ぐみながら笑って答える。

「お前の生命いのちは、再び輝き出した」

 ああ、良かった。
 オレは助かった。じいちゃんの命も失わずに済んだ。



 それから……



 ミチルは少し離れた視線の先、輝くように美しい男達を見た。
 彼らは……
 彼らの事は……



「ジェイ……」

 安心して頼れる、ぽんこつナイト。

「アニー……」

 甘やかしてくれる、ホストアサシン。

「エリオット……」

 一緒に笑ってくれる、小悪魔プリンス。

「ジン……」

 一歩先で導いてくれる、毒舌師範。

「ルーク……」

 いつも隣にいてくれる、優しいバーサーカー。

「チルクサンダー……」

 手を差し伸べたくなる、孤独なヴィラン。



 みんな、オレはね……
 
 

「オレ、坂之下さかのしたミチルは──」

 今こそ言うよ。
 あの続きを。

「オレのカリシムスみんなを、永遠に愛する事を誓いますっ!!」



「──ミチルゥウウウウァアアッ!!」

 イケメン団子がミチルをもみくちゃ!



 



 ミチルの心は晴れ晴れとしていた。
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