【本編11】Final Meets 舞い降りた愛、生命そそぐ絆

 ティラノサウルス型ベスティアと化した、アーテル皇帝シャントリエリ。自我を有し、その巨体でイケメン達を一蹴……するはずだったが、第一の男ジェイ第二の男アニーの共闘により苦戦を強いられる。
 テン・イーの魔術でさらにパワーアップを遂げたシャントリエリは、人型ベスティアとなりその自我を消した。

 破壊神・ベストリエリが降臨したのである。


 
「……」
 
 何の表情もない。空虚なる黒い影に成り果てたベストリエリは、闇の波動をところ構わず撒き散らす。
 チュドーン、ドシャーン、ゴワーンなどという破壊音がそこここから聞こえて、ミチル達は右往左往。

「ギャアアア! 何コレ、どうすんの、コレエ!?」

 エーデルワイスとおてて繋いで逃げまどうミチルを、何故か破壊神は追いかけてくる。
 奥底にミチルへの恋情でも残っているのだろうか。だとしたら、それは哀れな末路である。

「ミチル、手を離して逃げなさい! ここはワタシが食い止める!」

「バカァ、コノォ! どこの世界にじいちゃんを見捨てて逃げる孫がいるんじゃい!」

「ていうか、邪魔だ! 手が塞がっていては防御魔法もままならない!」

「ええーっ! じいちゃん、ヒドイッ!」

 遠慮なく拒否られたミチルは、思わず手を離す。
 エーデルワイスはミチルの前に立ち塞がって、破壊神からの攻撃を防ぐ魔防シールドを張った。

「ミチル、ワタシの後ろを動くな! こいつはお前を狙っている、ワタシ達が引きつけておいてカリシムス達に対処させよ!」

「ぷえっ」

 そ、そんなこと言われても!?
 こんなオレにどんな対処法が浮かぶって言うんだ!

 ミチルはとりあえずイケメン達の方を見るが、皆一様に「マジ!?」みたいな顔をしていた。

「みんなの武器は使えなくなってるし……」

 イケメン達が握っている武器達。以前はあんなに近くに感じていたのに、その蒼い力を手放した今はとても遠い。

「ああぁ……ッ!!」

「じいちゃん!?」

 破壊神の攻撃が強くなった。立ち向かったエーデルワイスを敵と見定めて排除にシフトしたのだ。
 どす黒い闇の波動を、エーデルワイスはその細腕で懸命に抑えているが、あまり長く持ちそうになかった。

「やっぱり……オレがもう一度みんなに武器を!」

「ダメだ、ミチル!!」

 イケメン六人は声を揃えて叫んだ。



「ミチル、君はそこで見ていてくれ」
「そうだよ、ミチル。君はもう充分頑張った」
「オメー、ここからがおれの大魔法タイムだって知らねえな?」
「ふっ、儂の第三掌をお見舞いしてやろう」
「ぼくだって、戦えます!」
「我がこのような邪悪なモノに遅れをとるものか」



 イケてる笑顔で自信満々に言うイケメン達。
 だが、ミチルにはそれが強がりだとわかっている。好きな男達の事だから、ミチルには痛いほどわかってしまう。

 彼らはミチルを生かすためなら、何でもすると。



「みんなぁ、待って! 置いてかないでえ!」

 ミチルは懸命に叫んだ。


 
「オレは、この世界が好きなんだ!」

 最初は何だこれ、ふざけんなって思ってた。


 
「ジェイ、アニー、エリオット、ジン、ルーク、チルクサンダー……みんながいるこの世界が大好きだ!」

 異世界転移なんてほんとはしたくないって思ってた。
 だけど。


 
 みんなに出会ったから。
 みんなに恋をしたから。

 この世界カエルラ=プルーマも好きになれた。
 オレはここを守りたい。


 
 オレは。


 
「オレは世界を守って、みんなとうほうほ暮らすんだ!!」




 
 

 ──よくぞ言いました、ミチル・プルケリマ

 

 突然、なんだか神々しい声が聞こえた。

「ふえっ!?」

 ミチルは思わず天を仰ぎ見る。
 空が光っていた。その光の中から、円を描き丸くなった二匹の蛇がゆっくりと下りてくる。

「な、なんじゃあ!?」

 その強く、尊大な光に、破壊神の動きも皆の動きも止まった。
 二匹の蛇はミチルの目の前まで下りてきて、柔らかい声で語りかける。
 瞳も口も閉じているのに、その声は心の奥まで聞こえた。

「……私達は円環のヘビ」

「えんかん? 無限大マーク(∞)みたいになってるヘビが?」

 円環のヘビは、二つの頭で代わる代わるに言葉を紡ぐ。


 
「六人のカリシムスに同等の愛を注ぐ」

「あなたこそ、カミのレプリカにふさわしい」

「「七つの子を統べるカミの代弁者にふさわしい」」


 
 ヘビが口を揃えてそう言うと、ミチルの頭に光る白い羽で作られたリースが載せられる。
 その羽は知ってる。
 オレに何度もくしゃみをさせた羽たちだ……!


 
「地下におわすカミサマからの贈り物です」

「祈りなさい」

「与えなさい」

「あなたの最愛に、絆を宿しなさい」



 何を言ってるのか、全然わかんないけど。
 みんなを想って祈ればいいんだね!

 ミチルはそのまま目を閉じた。
 頭に乗った白い羽の冠は、ゆっくりと蒼く染まっていく。
 蒼い、蒼い、強い光が六方に分かれてミチルの最愛達まで届いた。

 イケメン達の左の薬指。それぞれに銀色の環が嵌められる。
 ミチルの頭上にあった蒼い羽が一枚ずつ彼らの元へ向かい、その指輪に蒼い刻印を残した。

 蒼い羽の冠はふわっと消えて、ミチルは目を開ける。
 イケメン達に愛を与えるように、蒼い瞳が輝いていた。


 
聖なる蒼き瞳サケル・プピラ……」

 誰からともなく、その言葉が皆の口をつく。
 それは、ミチルを讃える祝詞となった。



「剣が、蒼く輝いている……!」

 ジェイは自分の大剣が「戻ってきた」事を知った。

「……やれる!」

 蒼く光るナイフを持って、アニーは勝利を確信した。

「待たせたな! 超絶なのをぶっ飛ばしてやるぜえ!」

 エリオットのセプターも蒼い輝きを増している。

「気が漲る……参るっ!」

 蒼く光るバングルとともに、ジンも構えた。

「ワオオーン!」

 ルークは蒼く輝く忠犬へと姿を変える。

「魔力が……溢れる……!」

 チルクサンダーの長い黒髪は、蒼い魔力を帯びて生きているように舞い踊った。



「……ッ」

 破壊神は、その何も見えない視界でも、六つの蒼き光が迫るのを知った。

「お前にミチルは渡さなーいッ!!」

 六つの聖なる執着心が、蒼く輝いて黒い影を切り裂いた。


 
「──!!」

 破壊神・ベストリエリは、黒い影である自身を散らす。
 影が晴れた後には、シャントリエリのが残るだけだった。

 ドサリ、と倒れる音は軽い。
 そのなきがらも、じきに黒い霧となって散っていくのだろう。


 
「わ、我が君……無念」

 テン・イーは膝を折り、苦悶の表情でその場に大量の血を吐いた。
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