【本編11】Final Meets 舞い降りた愛、生命そそぐ絆

 ミチルの命が何とかなって喜んだのも束の間。
 間髪入れずに再びアーテル帝国が襲来した。
 アーテル皇帝、シャントリエリの要求は以下の通り。
 
 ①ペルスピコーズはチルクサンダー魔教会の傘下に入れ
 ②ミチルには皇帝の皇子を生ます


 
「アァの、クソ皇帝めがァア! ギッタギタに潰してやるァア!!」

 このセリフ、イケメン達かと思うじゃん?
 違うよ。うちのじいちゃん曽祖父さ。

「そーだ、ソーダ!! セクハラどぐされ皇帝は討つべし、討つべし!」

 あ、こっちはオレのイケメン達が騒いでます。
 じいちゃんが憤怒にまみれているので、つられて調子に乗ってます。



「ほ、法皇さま……どうかお気を鎮めて」
「カリシムス殿も、どうにかお静まりを……」

 オロオロしている僧正はいつの間にか三人に増えていた。
 大聖堂の雄叫び……法皇の尋常でない反応を見て、さらに上の僧正が二人呼ばれたのだ。
 部下には決して見せられない、この姿。僧正三人がかりでも収めるのは不可能だった。

「シャントリエリのヤロウめえええっ!!」

 法皇のみならず、イケメン六人も声を揃えて怒号を飛ばす。
 僧正三人は蜘蛛の子を散らすようにおおわらわであった。

「落ち着けえ! おまい達ぃいい!!」

 スウっと息を吸ってから、ミチルの大号令が響く。
 怒りで踊り狂っていた法皇&カリシムス達はピタリと止まった。

「セイソンさまぁあ!」

 僧正三人は涙を流して喜んだ。
 カリシムス達をまとめる責務はミチルにあるとしても、まさか法皇までとは。
 それは、わりと恥辱案件である。

「──はっ、しまった。怒りで我を忘れていた!」

 やっとの事で、法皇エーデルワイスは我に返る。
 イケメン達は主に要求②に対して怒っているだけだったが、法皇は①も②も我慢がならない事だ。
 教会も、可愛いマゴも、皇帝などにやってたまるか状態である。

「……んん、ふう。とにかく、アーテル皇帝の要求はひとつ足りとて呑むことは出来ぬ」

 今更落ち着いてみせてももう遅いが、僧正三人は空気を読んでエーデルワイスに跪いた。


 
「よーっし、じゃあ迎撃するかあ!」

 喧嘩っぱやいエリオットは、拳をバシバシ叩いて気合いを入れる。
 
「そうだな、テン・イー諸共俺のナイフで蜂の巣にしてやんぜえ……!」

 アニーはわりと暗い笑顔で応えた。本気も本気で、今度こそテン・イーをヤルつもりだ。

「シウレンは渡さん! 降りかかる火の粉は払うまで!」
「むむう、腕が鳴る……ッ!」
「噛みついて、食いちぎってやります!」
「ふ……ヒトの身になってどこまで魔力が落ちたか……いや、逆に魔力が上がったか試してやろう!」

 他四人もヤル気満々。
 だが、彼らの足取りを、エーデルワイスの杖の音が止めた。一歩進んで先導する。

「逸るな、バカ共。まずは無謀にもワタシに攻めてきたヤツらの顔を拝んでやる」

 ……まあ、確かに、えぇじいちゃんはテン・イーに勝ってたけど。

「そうか。宣戦布告だな? 血祭りの序曲だな?」

 ……エリオットは物騒過ぎない?

 ミチルはこいつら(曽祖父含む)を皇帝達に見合わせて大丈夫か不安になる。
 
 一気に喧嘩になったらどうしよう。相手は軍隊連れて来てるんでしょ?
 言っちゃ悪いけど、他のお坊さん達が戦えるとは思えないんだけど?



「オ、オレも行くよ!」

 こんな危険人物七人を、更なる危険人物に会わせたらどうなるか。
 ミチルはストッパーのつもりで、歩みを進める一同を追いかけた。

「バカを言うな。お前を狙う皇帝の目に、お前を触れさせる訳にはいかぬ」

 頑固ジジイと成り果てたエーデルワイスはミチルの申し出を一蹴する。

「その通りだ。あのセクハラどスケベ皇帝がオマエの姿を見たら大興奮では済まぬぞ」

 チルクサンダーもまた、額に怒りの筋をつけて言った。
 完全に、アーテル帝国内でミチルを♡♡♡未遂された事を根に持っている。

「でもさ……」

 ミチルは確かにあの皇帝には二度と会いたくない。♡♡♡されかけた記憶がフラッシュバックするからだ。
 だが、だからと言って逃げたくはない。これはミチル自身の問題でもあるのだから。

「わかった。シウレンよ、一緒に来なさい」

 さすが誰にも厳しい毒舌師範。ジンは粛々とした態度でミチルに手を伸ばす。

「先生……」

「そして直々に言ってやるのだ。『バーカ! 誰がお前の貧弱な×××なんかいるもんか! この××××野郎!』とな」

「うげえ!」

 耳を覆いたくなるような、シモネタかつ罵詈雑言だった!
 しかし、それはイケメン達の士気をかつてないほど上げた。

「そーだよ、ミチル! こっぴどくフッてやればいい! 全部下の見てる前でねえ!」

 アニーはとても嬉しそうにはしゃぐ。このままでは闇堕ちするかもしれない。

「その通り! こうも言ってやりなさい、『オレにはもう、すんごい六人のがあるんだからな!』とな!」

「セクハラはどっちだああ! どスケベシモネタ師範がああ!!」



「ほ、法皇さまぁ……」
「相手は曲がりなりにも、一国の皇帝です」
「出来ればもっと上品にぃ……」

 三人の僧正は、耳が腐るようなシモネタを聞かされてすでに泣いていた。

「いや……許す!」

「法皇さまぁああ!」

 我を取り戻した訳ではなかったエーデルワイス。
 その冷静でない発言に、僧正達は絶望に震え上がった。



「では、出るぞ!!」

 意気揚々と扉を開けるエーデルワイス。
 すぐ外には、とんでもなく多数の兵や馬がずらっと並んでいるのが見えた。

「ナニコレ……!?」

 その軍隊は、まだ遥か後方にあれど、その規模にミチルは絶句する。
 数千ではくだらない。おそらく数万の兵士達が、ペルスピコーズ大聖堂を取り囲んでいた。

「どうやってこんな大量の人達を……!?」

 ミチルを始め、イケメン達、エーデルワイスすらも一瞬怯んだ。
 その隙に、悠々と近づいてくる二つの人影。



「ククク……迎えに来たぞ、我が妃」

 金髪の。
 ソフモヒが。
 豪華な鎧を纏って立っていた。

「余の愛しき……ミチル」



 ……キモチワルイッ!
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