【DKBL】カップルごちゃまぜ超短編チャレンジ!

「イエイ、はっちゃん、ノッテるかー!?」

 カナタの大声でマイクがハウリングを起こしていた。

「……それほどではない」

 カラオケボックスにそぐわない顔で、エイトが淡々と答える。
 カナタはそれでも陽気に振る舞っていた。

「はっちゃんがァア、正直過ぎてェエ、つれぇええ!」

 キーンと響く狭い室内。エイトは眉をひそめて明らかに不機嫌そうにしていた。
 それでカナタもようやくマイクのスイッチを切って大人しく座る。

「……こういうの、ヤだった?」

 二人で遊ぶというとこんな場所しか思いつかない。カナタは少し自己嫌悪に陥る。

「嫌……というか、よくわからないな」

 エイトは首を傾げている。そこにお世辞も愛想もないのだろう。正直に述べるだけ。
 空回ってしまった、とカナタはため息を吐いた。

「はっちゃん、人付き合いなさ過ぎだろぉ……」

 カラオケの経験も乏しいなんて。本当にお前は高校生か。今まで何をして遊んでたんだ。
 かと言ってエイトに合わせて図書館で勉強などは絶対嫌なカナタである。

「まあ、でも、ここは密室だからな。それは悪くない」

「えっ」

「かなの息遣いや匂いがすぐに感じられる」

 ずいと近づくエイトの、獲物を定めるような視線にカナタは囚われた。
 ああ、なんだかこのままイロイロされてしまいそう……

「待て待て待て、密室じゃないから! 防犯カメラあるかラァ!」

「む。そうか」

 寸でのところで思い直し、カナタはエイトを制止した。

「では……これくらいか」

「うひっ」

 そっと手を握ってくるエイト。普段のコワイ雰囲気からは考えられないくらいに優しい。

「……柔らかいな」

 そんな風に微笑まれると、なんかもう、全部柔らかくなりそう。
 カナタは手だけが熱くなって、力が抜けた。
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