【DKBL】生徒会ラブラブ大作戦!
三年生になるまで恋人ができなかった俺の前に、突如彼は現れた。
初々しい一年生の集団の中、そこに俺だけの花を見つけてしまった。
「──君!」
とにかくその時の俺は舞い上がっていて、声をかけずにいられなかった。
「名前は?」
「ぼ、僕……ですか?」
その花は、大きな瞳を見開いて可憐な唇から鈴が鳴るような声を漏らした。
「花井、ユウです……」
はない ゆう
俺はその名を胸の奥まで刻みつけた。
「花井くん……」
「え、えっと……三年生の人ですか?」
戸惑っている。なんて可愛いんだ……
ダメだ! まだ触るな!!
俺はそんな自分との葛藤を制して、努めて先輩らしく自己紹介した。
「急に済まない。俺は今期の生徒会長・加賀谷イツキ」
「加賀谷、先輩……じゃなくて、会長ですか……」
不覚にも、己の名を呼ばれて俺は頭が真っ白になった。
白くなっていく頭で、それでも俺は懸命に考えた。
彼をここで逃してはならない。なんとか繋がりをもてないか──
!
その時のヒラメキを、俺は一生自画自賛することになる。
「君、生徒会に入らないか?」
◇ ◇ ◇
「会長! 先週の会議の議事録、出来上がりました!」
にこやかな笑み、軽やかな足取りで、生徒会書記の一年生・花井ユウは奥の席で作業中の生徒会長に声をかけた。
「ああ、ありがとう、花井。早く上げてくれて助かるよ」
悠然に笑って議事録を受け取った生徒会長・加賀谷イツキの胸中が、「ユウ可愛いユウ可愛いユウ可愛い」で埋め尽くされていることは誰も知らない。
「いえ! あの、ワガママを言って生徒会室を開けていただいてすみません!」
ユウは恐縮しながらイツキに向かってペコリと一礼した。
なんて可愛い仕草なんだ、という気持ちをイツキは絶対に出さずに応える。
「いや、構わない。ちょうど俺もやっつけてしまいたい書類があったからな」
今日は生徒会の活動日ではない。それなのに、イツキとユウは仕事をしていた。
ユウが、自分は不慣れだから議事録の作業をしたいとイツキに申し出たからだ。
先週の会議の録音は生徒会室のパソコンに入っていて、持ち出すことは出来ない。
サラリーマン風に言えば、ユウは休日出勤を願い出たのである。
今日、生徒会室を開ければ二人きり……だと?
そんな煩悩に支配されたイツキが、これを断るはずはなかった。
もっとも、ユウのおねだり(イツキ的にはそう表現したい)を断ることなどそもそもあり得ないのだが。
一年生にだけ仕事を押しつける訳にはいかない。
自分は生徒会長として、他の役員を監督する責任がある。
そんなもっともらしい論理で武装して、イツキはまんまとユウと放課後デート(イツキ的にはそう表現したい)を実現した。
「会長の方はまだかかりますか?」
「ああ……うん、そうだな……まあ、それなりに……」
やっつけてしまいたい書類などはない。
イツキはパソコンの画面越しに、一生懸命に手を動かすユウの横顔を覗き見していただけ。
白紙の文書ファイルを見られないように、イツキは生返事で切り抜けようとした。
「それじゃあ、僕、お茶淹れますね」
「あ、ありがとう。花井は先に帰ってもいいんだぞ?」
嘘だ!
帰らないでくれ!!
心とは裏腹に格好つけてしまう自分を、イツキは呪わしく思った。
「とんでもないです! 僕が無理を言って開けてもらったんだから、お手伝いします!」
真面目で従順なユウがそう言うと、イツキは内心で飛び上がって喜ぶも、それを顔には出さずにまた格好つける。
「そうか。ありがとう。じゃあ、とりあえず紅茶を入れてくれるか? 一番いいやつ……皆には内緒だぞ」
「はい! 美味しく淹れますね!」
心なしか、ユウが頬を染めた気がする。
可愛い可愛い可愛い。
イツキは荒くなりそうな息を懸命に堪えて、備え付けの給湯室へと向かう小さな背中を見送った。
初々しい一年生の集団の中、そこに俺だけの花を見つけてしまった。
「──君!」
とにかくその時の俺は舞い上がっていて、声をかけずにいられなかった。
「名前は?」
「ぼ、僕……ですか?」
その花は、大きな瞳を見開いて可憐な唇から鈴が鳴るような声を漏らした。
「花井、ユウです……」
はない ゆう
俺はその名を胸の奥まで刻みつけた。
「花井くん……」
「え、えっと……三年生の人ですか?」
戸惑っている。なんて可愛いんだ……
ダメだ! まだ触るな!!
俺はそんな自分との葛藤を制して、努めて先輩らしく自己紹介した。
「急に済まない。俺は今期の生徒会長・加賀谷イツキ」
「加賀谷、先輩……じゃなくて、会長ですか……」
不覚にも、己の名を呼ばれて俺は頭が真っ白になった。
白くなっていく頭で、それでも俺は懸命に考えた。
彼をここで逃してはならない。なんとか繋がりをもてないか──
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その時のヒラメキを、俺は一生自画自賛することになる。
「君、生徒会に入らないか?」
◇ ◇ ◇
「会長! 先週の会議の議事録、出来上がりました!」
にこやかな笑み、軽やかな足取りで、生徒会書記の一年生・花井ユウは奥の席で作業中の生徒会長に声をかけた。
「ああ、ありがとう、花井。早く上げてくれて助かるよ」
悠然に笑って議事録を受け取った生徒会長・加賀谷イツキの胸中が、「ユウ可愛いユウ可愛いユウ可愛い」で埋め尽くされていることは誰も知らない。
「いえ! あの、ワガママを言って生徒会室を開けていただいてすみません!」
ユウは恐縮しながらイツキに向かってペコリと一礼した。
なんて可愛い仕草なんだ、という気持ちをイツキは絶対に出さずに応える。
「いや、構わない。ちょうど俺もやっつけてしまいたい書類があったからな」
今日は生徒会の活動日ではない。それなのに、イツキとユウは仕事をしていた。
ユウが、自分は不慣れだから議事録の作業をしたいとイツキに申し出たからだ。
先週の会議の録音は生徒会室のパソコンに入っていて、持ち出すことは出来ない。
サラリーマン風に言えば、ユウは休日出勤を願い出たのである。
今日、生徒会室を開ければ二人きり……だと?
そんな煩悩に支配されたイツキが、これを断るはずはなかった。
もっとも、ユウのおねだり(イツキ的にはそう表現したい)を断ることなどそもそもあり得ないのだが。
一年生にだけ仕事を押しつける訳にはいかない。
自分は生徒会長として、他の役員を監督する責任がある。
そんなもっともらしい論理で武装して、イツキはまんまとユウと放課後デート(イツキ的にはそう表現したい)を実現した。
「会長の方はまだかかりますか?」
「ああ……うん、そうだな……まあ、それなりに……」
やっつけてしまいたい書類などはない。
イツキはパソコンの画面越しに、一生懸命に手を動かすユウの横顔を覗き見していただけ。
白紙の文書ファイルを見られないように、イツキは生返事で切り抜けようとした。
「それじゃあ、僕、お茶淹れますね」
「あ、ありがとう。花井は先に帰ってもいいんだぞ?」
嘘だ!
帰らないでくれ!!
心とは裏腹に格好つけてしまう自分を、イツキは呪わしく思った。
「とんでもないです! 僕が無理を言って開けてもらったんだから、お手伝いします!」
真面目で従順なユウがそう言うと、イツキは内心で飛び上がって喜ぶも、それを顔には出さずにまた格好つける。
「そうか。ありがとう。じゃあ、とりあえず紅茶を入れてくれるか? 一番いいやつ……皆には内緒だぞ」
「はい! 美味しく淹れますね!」
心なしか、ユウが頬を染めた気がする。
可愛い可愛い可愛い。
イツキは荒くなりそうな息を懸命に堪えて、備え付けの給湯室へと向かう小さな背中を見送った。
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