【本編9】Last Meets 籠の中のレプリカは最愛を探す

 世界を救う使命を持ったセイソンは、伴侶のカリシムスと契ることで世界を浄化する。
 具体的には、セイソンとカリシムスは婚姻の儀式を行った後、ペルスピコーズにて特別な部屋で三日三晩♡♡♡。
 それはもう激しく、寝る間も惜しんで♡♡♡で♡♡♡な♡♡♡を♡♡♡する。

 その後、セイソンとカリシムスは神託が降りた地で仲睦まじく暮らし、毎晩激しめの♡♡♡が義務になる。
 日中は何をしようと、仕事しようと耕作しようと自由。でも夜になったらそれはもう♡♡♡で♡♡♡……

「待って待って、もういい! 耳がおかしくなるっ!!」

 ミチルは真っ赤になって耳を塞いでぶんぶん首を振った。
 この世界に来て、最大級のセクハラをされた。しかも見た目十四歳の少年に。
 なんなの、この世界はみんな性癖がひん曲がってんの!?

「……なんということだ」
「やべえぞ、おれ達にそんな体力が続くのか……?」
「そんなことよりもミチルのおしりの方が心配だ」
「ミチル……裂ける……ッ!?」
「ところで三日三晩♡♡♡する部屋とはどんなものだ?」

 イケメン達は大真面目になって言い合っていた。
 その様にミチルは目眩がする。

「婚姻の儀式で祝福を受けたセイソンの〇〇〇とカリシムスの〇〇〇には、瞬時に回復する能力が与えられる」

「おおい、えぇちゃぁん! とんでもねえどスケベ仕様作ってんじゃねえ!」

 見た目十四歳の少年が言っていい言葉ではない。だが、エーデルワイスはきょとんとしていた。
 法皇の性教育、間違えてますよ。

「それは……すごいな……」
「ああ。それならいくらでもできるな」
「不老不死に等しいのではないか?」
「ぼくには、刺激、強いです……」
「マジかよ、すげえこと考えるじゃん……」

 お前たちぃいい!
 ミチルは言葉を失っていた。怒ったらいいのか、恥じらったらいいのか、もうわからない。

 だが、とミチルは思い直す。
 ここで毅然と怒れるのは、もはやオレだけなんだ! ふざけるなよ、はっきり言ってやる!

「えぇちゃん!」

「なんだ」

「そんなどスケベ使命、横暴だ! オレ達を何だと思ってる! ごにょごにょ……する能力なんて、動物じゃねえぞぉ! 基本的人権を要求する!!」

 ミチルにびしぃと指をさされたエーデルワイスは、とても意外そうに驚いていた。

「何、不満なのか?」

「当たり前だろぉおお!」

「衣食住に困らず、日中は自由に、文化的に人としての営みが出来るのに?」

「そんなアメで誤魔化すな! 毎晩ごにょごにょ……が義務なんてのがおかしいんだよっ!」

 ミチルがそう反論すると、エーデルワイスは「ああ」と息を吐いて落ち着いて言った。

「義務と言うのは言い過ぎた。其方達が♡♡♡することを義務に感じる必要はない。婚姻の儀式を経たセイソンとカリシムスはそう意識せずとも、毎晩♡♡♡したくなる。自然な夫婦の営みだ。その影響力を世界が分けてもらうだけのこと」

「えええ……!?」

 ちょっと今、なんて言った? ものすごい事言わなかった?
 それってオレ達が♡♡♡せずにいられないようになるってこと?

「愛し合う二人が毎晩求め合うのは『普通』のことだろう? それがプルケリマシステムの真髄だ」

「な、なんてどスケベシステム……ッ!」

 これはすでにミチルの理解が及ばない所まで来ている。
 ミチルがどん引きしていると、イケメン達は大真面目で頷いていた。

「確かに、その感情は今でも充分に言えることだ」
「ミチルがいいなら、おれは今夜からでもオッケーだぜ!」
「結局、求めてしまう、思います……」
「俺の不眠症はこのためにあったのか!」
「夜だけと言わず、儂は今ここで×××……」

 お前たちぃいいいいぃい……ッ!
 ちょっともう勘弁してえ! 誰か助けてえ!!



「今回は同性同士というイレギュラーだから教えてやろう。あまり内情をバラすと本人達が興醒めしてしまうので本来は伏せておくのだが……」

「ひええ!?」

 まだ重大なスケベセクハラ仕様があるのかと、ミチルは恐れ慄く。
 エーデルワイスは淡々とした表情でまた語り出した。

「セイソンがこの世界に降臨し、その姿を見た者の中でカリシムスとなれる素質がある者は瞬時にそのセイソンに魅了される。セイソンの方でも、自分にふさわしいカリシムスは誰なのか、無意識のうちに選定を行っているのだ」

「あ……」

 ミチルにも、イケメン達にも心当たりはあった。
 ミチルはこの世界に来てから何故かイケメンを見て過剰に興奮してしまうようになった。地球にいた時は二次元にしか興味がなかったのに、ここに来てからはイケメン五人の一挙手一投足にドキドキしっぱなしである。
 もっとも、その事については今そう言われたから気づけたのであるが。

「確かに、ミチルを初めて見た時胸が高鳴った」
「俺もすんげえ可愛いと思って下心こみで助けたっけな」
「おれはすでにベッドの上にミチルがいたからな。チョー好みの伽が来たって興奮した」
「理想の合法美少年が具現化して、儂はついに幻を見るまでになったかと焦った」
「ミチル、とても、美しいです」

 口々に言うイケメン達。その言葉の中にはまあまあ気持ち悪い未公開情報もあったが、ミチルはぽっと照れてしまった。

「それはプルケリマシステムが正常に働いた証拠だ。セイソンとカリシムスはお互いに強く惹かれ合うように、その精神のスイッチが入るのだ」

「……え?」

 ミチルは先ほどから嫌な想像が引っかかっていた。
 婚姻の儀式をしたらお互いを毎晩求め合うようになる、とか。
 この世界にやって来た時に惹かれ合うスイッチが入る、とか。

 そんな、まるで誰かに操られているような言い方。
 洗脳を受けているみたいな言い方。

 ミチルの想像が悪い方向に合っているのだとしたら。



 オレ達は、システムによって恋愛感情を操作されている……?
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