【本編9】Last Meets 籠の中のレプリカは最愛を探す




 待っていたんだ、ぼくのプルクラ。



「ミチル、です……」

 ぼくをヒトに戻してくれたプルクラ。
 ミチルはその姿も、流す涙も美しかった。

 君がきっとぼくの運命の人。
 ぼくは君に一目惚れ、しました。



 プルクラ、天から降りてくる美しい人。
 父さんのプルクラは、母さんだった。
 ぼくにも、ぼくだけのプルクラが来てくれるって思ってた。

 それがミチル。
 カエルラ=プルーマではない世界から降りてきた、プルクラ。
 何より、ぼくの「狂化」を治してくれたのだから、ミチル以外にプルクラはいない。

 ああ、ぼくはついに巡り会えたんだ。ぼくだけのプルクラに。
 だけど、ミチルにはすでに「イケメン」という男性が四人いた。

 コイビト? って聞いたらミチルは「違う」って言ったけど。
「違う」って言うミチルの顔は「そうだよ」って言ってるみたいで、ぼくは悲しくなった。

 ミチル、ぼくはそのイケメンの中に入れるかな。
 ぼくもその中で、ミチルに選んでもらうこと、できるかな。

 選ばれたい。
 ミチルに、ぼくを選んで欲しい。
 ミチルがぼくのプルクラだから。



 チルクサンダー魔教会。随分久しぶりに来た。
 ミチルはずっとここを怖がっている。

 正直言えば、ぼくも怖い。
 だけど、ぼくの呪いがついに消えると言った。
 ミチルと出会ったおかげ。ぼくは嬉しい。

 ミチルはずっと様子がおかしかった。
 呪いを解く儀式が不安なのかもしれない。
 それとも、もっと別の理由が……?

 ミチルの不安は、ぼくの不安。
 明日の儀式も、もしかしたらいいものじゃないかもしれない。
 そんなことを考えていたら兄さんが助けに来てくれた。

 兄さん、相変わらず破天荒。
 教会はメチャクチャ。ミチルもメチャクチャ怖がっている。

 大丈夫だよ、ミチル。兄さんはぼくに危険なこと、しない。
 ミチルにも危険なこと、させないから。
 ぼくが守るから。



 兄さんが帰った後、ぼくは母さんのことをミチルに話した。
 ミチルは一生懸命、話を聞いてくれた。

 ありがとう、ミチル。
 ミチルはやっぱりぼくのプルクラ。

 ぼくはもう待てない。
 今すぐ、ミチルが欲しい。
 ぼくのプルクラ……なってくれる?



 ◇ ◇ ◇



 父さんを交えて、ミチルのこれまでをもう一度聞いた。
 ミチル、とてもすごい冒険をいくつも乗り越えていた。
 その側には、ぼくじゃない「イケメン」がいた。
 
「ベスティアは、オレがやらなくちゃいけない敵だ。そのベスティアを帝国が操っているのか、調べたいんです」

 そう言うミチルは、とても強くて凛々しい。
 ミチルの気高さは、彼らとともに築かれたんだ。
 ぼくの知らないところで。

「ルーク、ずっと言えなくてごめんね。えっと……今の話、どう思った?」

 ミチルはまず、ぼくを気にかけてくれた。
 無知でちっぽけなぼくを、尊重してくれた。

 ミチルはぼくのことも大切に思ってくれる。
 この場では一番に考えてくれた。

 そんなミチルの言うこと、間違いであるはずがない。
 ぼくは、ミチルの全てを信じます。



 ◇ ◇ ◇



 ミチルの言う「イケメン達」が現れた。
 みんな輝くような男性で、自信にあふれてる。
 何より、ミチルへの愛にあふれてる。

 ミチル、とても嬉しそう。
 やっと会えた仲間だものね。
 昨日までのぼくなら、ヤキモチ妬いてた。
 だけど、ミチルがイケメン達に告げた言葉でぼくは目が覚めた。

「みんなの事は、オレが絶対守るから。だからみんなもオレを信じて欲しい」

 まっすぐな視線と心。
 それがミチルの美しさ。

 ミチルは、彼らと一緒にいながら美しくなった。
 それなら、ミチルはぼくといても美しくなる?
 ぼくはそうだったらいい、と思う。

 だから、コドモっぽいヤキモチは妬かない。
 ぼくはまず、この人達と対等にならなければ。

 それだけでなく。
 ミチルに勇気をあげられるような存在になりたい。
 ミチルがイケメン達と反乱に参加するって決めたみたいに。


 
「わかった……」

 ミチルが立ち上がった。

「それでいいなら、オレも反乱に参加する」

 蒼い決意を携えて。



 ミチル、すごいね。
 ジェイさんも、アニーさんも、エリオット王子様も、ジンさんも。皆、ミチルについていく。
 ぼくも同じ。ぼくも、ミチルについていく。絶対に側から離れない。
 ぼくは、ミチルの盾になる。



 ◇ ◇ ◇



 ミチルに誓ったあの夜のことは忘れない。
 頭からは消えてしまったとしても、心が覚えている。
 いつか、これがミチルを守る証になると、ぼくは信じてる。



 反乱決行の日がやってきた。
 ミチルの衣装は、美しくて、眩しくて、とても清らかだった。
 誰にもミチルは汚させない。ぼくは強く決意する。

 ぼくが矢面に立つことで、ミチルの神性が際立つ。兄さんが出発前にそう言った。
「俺様が始めちまったことだから、身内の親父とお前にも頑張ってもらうぜ」と言われて、ぼくは嬉しかった。
 兄さんが今度はぼくを置いていかなかったことが、嬉しかった。

 ミチル達と兄さんの利害は一致したものだったかもしれない。
 それでも、ミチルを危険に巻き込んだのはぼく達だ。
 だからぼくは命にかえてもミチルだけは守る。

 ミチル。なんて尊い存在。
 君がぼくの愛。君がぼくの全て。

 その気高い瞳を携えて、ぼくに手を差し伸べる。
 ぼくはその手を迷わずとろう。



 だけど……



 突然、暗闇に落とされた。





 ぼんぼろぼーん……

 

 どこ?


 
 ぼんぼろぼーん……



 何も見えない。



 ぼんぼろぼーん……



 ミチル、どこ?



 真っ暗だ。
 とても、寒い。
 それから苦しい。

 息を吸おうとしても、吐こうとしても、何もない。
 暗い、寒い、痛い、苦しい、それから、とても悲しい。

 ミチル。
 ミチル、どこ?

 ミチル。
 ぼくの愛。

 ミチル。
 ぼくの光。

 ミチル。
 君の手が見えない。



 ぼくは、一人になってしまったの?
 ミチルはもういない?
 もう、ミチルに会えない?



 ミチル。
 嫌だ。

 ミチル。
 会いたい。

 ミチル。
 この手で、抱きしめたい。



 ミチル。
 ミチル。
 ミチル……ッ!



「ルークゥ!!」

 ──ミチル?

 

「一緒に行こう!」

 ああ、ミチル。そこにいたの。

 

「ずっと、一緒だよ……」

 うん、ずっと一緒。

 

『こんなちっぽけなオレでも、キミの光になれるなら。
 いつだってキミを抱きしめるよ』



 ありがとう。
 ミチルはぼくのホコリ。

 大好き……





「やっちゃいなさい! 忠犬ルーク!」

 ミチルの言葉でぼくは生まれ変わる。
 君の瞳の中、蒼い炎がぼくに勇気を与えてくれた。


 
 命令して! あいつを、倒せって……!



「ルーク、セット!」

 体が軽い。
 目の前の敵から目は逸らさない。

「ゴーーーーッ!!」

 ああ、ぼくは、自由だ。
 ミチル、君の命令は何でも聞いてあげる。



 ぼくは戦う!
 君のために!

 

「ワオオオオーン……!」

 ぼくは君の、ワンコ。
 君だけに忠誠を誓う。



「ルークゥ!」

 その胸でぼくを迎えて。

「ミチル!」

 ぼくのホコリ、今、行きます。



 ミチル、愛しています。
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