第2部 居場所
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
────グレートフォックス・医務室
「ファルコ、マナはどうだ?」
崩落した遺跡から帰還して数時間後。 依頼主への報告を終えたフォックスは、負傷したメンバーの様子を窺いに来た。
「まだ目を覚まさねぇ。」
ファルコが連れ帰ったマナの瞳は、閉じられたままだ。 命に別状はないと医師に言われたが、意識が戻らない状態が続いている。
「そうか……ペッピーとスリッピーは? 傷の具合はどうだ?」
同じ医務室内にいる二人にも声をかける。
「ワシは大したことはない。スリッピーがのう……。」
「大丈夫だよ! ちょっと犬にお尻を噛まれたようなもんだよ。」
遺跡で出会った生物兵器を何とか持ち帰ろうとして、攻撃を受けたらしい。
「……すまない。俺の調査不足だな。」
メンバーのうち三人が負傷した。 リーダーとして失態だと、フォックスは考えていた。
「遊撃隊などやっておると、危険は付き物だ。気にするな、フォックス。」
「フォックスの所為じゃないよ! こんな時にも対処できるように、何か考えないとねー。」
ベッドに横たわっている二人は、フォックスを責めようとはせず、彼を励ますように笑った。 そんな会話をよそに、ファルコはただ、マナの傍らで彼女の顔を見つめていた。
────あの胸騒ぎは何だったんだ? なぜ、俺はコイツの位置がわかった?
疑問が湧いては消える。
────もし、間に合ってなかったら?
あの高さから落ちたマナが、無事で済むはずはなかった。 そこまで考えて、ファルコは背筋が少し冷たくなるのを感じた。
────……しばらくは、目ぇ離せねぇな。
「……おい……おい! ファルコ、聞いてるか?」
「……なんだよ。」
二度ほど呼びかけてもファルコが反応しなかったことに怪訝な表情を浮かべつつ、フォックスは言葉を続ける。
「俺は事故の処理があるから、マナについててやってくれ。」
「ああ。分かった。」
やがてスリッピーとペッピーが寝静まり、部屋が静かになる。 いつもメンバーとつるんで騒いでいるマナの声は、未だ聞こえない。
「……早く目ぇ覚ませよ。」
ファルコは、焦りとも寂しさともつかない感情を抱えたまま、微かな声で呟いた。
*
────数日後。
「おい、一人で作業してたら危ねぇぞ。」
まだ療養中で動けないスリッピーの代わりに、できる範囲の整備をしようと、格納庫でアーウィンの下に潜っていたマナ。
「大丈夫だよ、ファルコ。スリッピーといっつもやってるし……慣れてきたよ。」
様子を見に来たファルコへ、アーウィンの下から顔を覗かせて笑いかける。
「まだお前も病み上がりなんだ。無理する必要はねぇ。」
「大丈夫だってば!」
引き下がらないファルコをよそに、マナは再びアーウィンの下へ潜る。
「お前……」
────名前で呼んでくれないんだな。
あの崩落事故の中で、ファルコはマナの名を初めて口にした。 でも、咄嗟のことだったのか、日常に戻った今、その呼び名は聞こえない。 彼女はそれを少し残念に思いながらも、指摘せずに過ごしていた。
「ファルコ、マナ。ちょっと来てくれないか。」
フォックスが格納庫に訪れ、声をかける。
「ん? どうしたの、フォックス。」
マナは作業の手を止め、フォックスの前に出る。
「実はな、フリー・アズ・ア・バードから依頼が来てるんだ。」
「は?」
ファルコが不機嫌な声を上げる。 思わずファルコを見て、様子を窺うマナ。
「フリー・アズ・ア・バードってなに?」
「以前ファルコがヘッドを務めていた、宇宙暴走族グループさ。」
「ぼ、暴走族のヘッド……だったんだ!」
ファルコの粗暴でぶっきらぼうな態度は、そこから来ていたのか。 マナは妙に納得してしまった。
「……言うなよ、フォックス……。」
「いいじゃないか。どうせ会いに行けばすぐ分かることだ……で、だ。」
「会いに行けばって……何の依頼なんだ?」
眉間に皺を寄せるファルコ。
「それはまた現地で彼らに詳しく聞こう。マナ……病み上がりで本当にすまないが、君の力が必要なんだ。一緒に来てくれるか?」
スターフォックスの経済状況は、マナも知っている。 グレートフォックス購入時の借金、運営にかかる雑費など、とにかくお金が必要な状態だ。 仕事を選んでいる余裕はない。
「私はもう万全だから! 行こう!」
医師からも通常活動に戻って問題ないと言われている。 少しでも力になれるならと、マナは声を張って返事をした。
「ありがとう、マナ。」
フリー・アズ・ア・バード。 ファルコの過去を知る人たちがいるかもしれない。 そう考えると、少し興味が湧いてきたマナだった。
*
「確か、この辺りのはずだ。」
フォックスに連れられ、ファルコとマナはとある辺境の惑星に来ていた。 スモッグが立ち込め、少し息苦しい。 周囲には雑然と機械の部品や鉄くずが転がっていた。
「……あの倉庫じゃねぇか?」
遠くに、霧がかって見える建物がある。 ファルコの脱退後、新しく根城を移したらしい。 現リーダーのキャット・モンローから送られてきたデータを頼りに、一行は先へ進む。 ファルコの後に続くマナは強い風に吹かれ、背後から近づく気配に気づかなかった。
「おい、動くな。」
「……っ?!」
背中に硬い感触。 恐らく銃。
「風が強い……おい、ちゃんと着いてきてるの……」
後ろにいるはずのマナを振り返ったファルコの目に飛び込んできたのは、何者かに羽交い締めにされ、背中へ銃を突きつけられている彼女の姿だった。
「ファルコ……!」
恐怖に揺れるマナと目が合う。 彼女の声で、フォックスも振り向いた。
「おい! そいつを離せ!」
低く叫び、ファルコは腰に装備したブラスターに手をかける。 緊張が走る中、マナを捕らえた深いローブの人物は、ニヤリと笑みを浮かべた。
「……あはは! お姫様はちゃんと守ってあげないとねぇ? そんな怖い顔しないで?」
「……その声……!」
涼やかな声を発したローブの人物は、マナを解放すると、そのままローブを脱いだ。
「キャットか……。」
チッと舌打ちをしながら、ファルコはブラスターから手を離す。
「なんだ、驚かさないでくれよ。」
険しい表情をしていたフォックスも、ようやく緊張を解いた。
「銃なんか持ってないわよ?」
キャットが、マナの背中に当てていた物を見せる。
「これ、レンチ?!」
「紛らわしいことするんじゃねぇ!」
ファルコが声を荒らげる。 彼の怒声を軽く聞き流し、猫の女性は涼しげに笑った。
FREE AS A BIRDの現リーダー、キャット・モンロー。 彼女はマナと視線を合わせると、悪びれもせずニコリと笑った。
*
程なくして、彼らの拠点に着いた三人。
「みんな、ファルコが帰ってきたわよ。女の子連れてー!」
「おいっ! キャット……!!」
アジトで待機していた他のメンバーが、一斉にこちらを向く。
「兄貴っ!! お久しぶりです!」
「ファルコさん! お元気で何よりッス!!!」
「彼女なんすか!?」
「〜っ! 一気に喋んな、お前ら!」
ファルコの周りにワッと人が集まり、口々に彼へ声をかける。
「あなたがフォックス? いい男じゃない!」
「ねぇ、私とデートいかない?」
フォックスはというと、これまた女性のメンバーに取り囲まれていた。 それぞれが対応に追われる中、マナだけがポツンと雰囲気に圧倒されて立ち尽くしていた。
「あなたがマナちゃんよね?」
その傍らにキャットが近づき、マナの顔を覗き込む。
「え、私のこと知ってるんですか?」
「そりゃあねぇ。ファルコが女の子連れてくるなんて珍しいものぉ! フォックスからも話を聞いていたわ。優秀なスタッフだって。」
キャットは面白くて仕方がないといった様子で、ニヤニヤと笑っている。
「おい、キャット。余計なこと言うな。」
囲まれながらも、キャットがちょっかいをかけていることに気づき、牽制するファルコ。
「おいフォックス! 早く依頼の話をしろ!」
「あ、あぁ、分かってるよ! ごめん、君たちまた後で……キャット、本題に入っていいかな?」
周りの女性たちをやんわりと遠ざけると、キャットに視線を送った。
「ええ、そうね。仕事の話をしましょう。」
キャットは地図を広げ、ある箇所を指さす。
「ここが前のアジトの場所。ファルコも知ってるでしょう?」
ファルコもテーブルに近づき、キャットの手元を確認する。
「ああ、そうだな。その場所がどうしたんだ?」
「まだ荷物が少し残っていたんだけど、それを盗んでる奴がいるみたいなの。」
「見張りを置いてねぇのかよ。」
「もちろん置いてるわ! でも、なかなか尻尾を出さない……私の機体の部品まで盗られてて、修理できないの!」
「頭にくるわ!」
キャットが毛を逆立てる。
「で、あなたたちには犯人の正体を調べて、もちろん泥棒も捕まえてほしいわ。」
「調査のためのホバーバイクは貸し出してくれるんだよな?」
「ええ、フォックス。ちゃんと準備してあるわ。三台あるんだけど、一台はサイドカーだから……マナちゃんはそこに乗ってもらおうかしら!」
「……こいつも現地に連れていくのか?」
その言葉を聞いて、ファルコが少し眉を寄せ、隣にいるマナを見る。
「盗まれた機器が本物かどうか、見極める必要があるんですよね?」
簡単な概要をフォックスから事前に聞いていたマナは、今一度キャットに確認した。
「そうよ。高価な部品でね……偽物もたくさん出てるわ。よろしくね、マナちゃん。」
「はい! キャットさん、よろしくお願いします!」
負傷しているスリッピーの代わりに、この役を務めることになったマナ。 本人は役目を果たそうと気合いが入っているが、ファルコはあまり気乗りしていなかった。
「……。」
「じゃあ、早速調査に行こう。盗品が増える前に、早めに対処した方がいい。」
黙り込んでしまったファルコを横目に、フォックスが促す。
「そうね。まずは旧アジトに向かいましょ。」
そう言いながら、キャットは眉間に皺を寄せているファルコを見て、意味ありげに笑みを浮かべた。 *
「ほら、ちゃんとヘルメット被れよ。ここ緩いだろ。」
マナがホバーバイクに乗る準備をしていると、ファルコが近づいてきて、ヘルメットのサイズを調整してくれた。
「大丈夫だよ、子供じゃないんだし……。」
あはは、と笑う彼女。 ホバーバイクのサイドカーに乗り込むマナを見ながら、ファルコがまた眉を寄せる。
「今回の敵から襲撃があるかもしれねぇだろ。シートベルトも見せろ。」
「あらあら、ファルコ! 手厚いお世話するじゃない。執事にでも転職したのかしら。」
その様子を見て、キャットがニヤニヤ笑う。
「……っ、うるせぇな! こいつは戦闘要員じゃねぇんだ! 気をつけとくに越したことはねぇ。」
ファルコは当然のように、マナの乗るサイドカーの運転席へ跨がった。 誰に言われたわけでもなく、自分からその役を買って出たのだ。
「ふーん?」
キャットはファルコとマナを交互に見て、意味ありげに口角を上げた。
「お前たち、出発するぞ。」
フォックスは騒いでいる三人に声をかけ、ホバーバイクを発進させた。
*
「随分寂れちまったな。」
かつてのアジトの様子を見回しながら、ファルコが口を開く。
「あれ、この写真って……」
マナは棚の上にあった小さな写真立てを見つけた。 そこにはトロフィーを片手に持つファルコと、仲間たちが親しげに肩を組んでいる様子が写っていた。
「なんか、ファルコ若い! 嘴とかにピアスついてる……。」
今よりもさらに目つきが鋭く、身につけたアクセサリーのせいか、少し雰囲気が違って見える。
「……でも、楽しそう。」
仲間に囲まれ、得意げに笑みを浮かべている過去のファルコ。 マナは、彼の知らなかった一面を見た気がした。
「ファルコが16歳ぐらいの時の写真ね! 可愛いでしょ?」
「おい、あんま見んな!」
「俺にも見せてくれ……あぁ、出会った頃はこんな感じだったな。」
フォックスはファルコの写真を見て笑う。
「それは、バイクレースで賞を取った時の写真でね。練習の時に派手に壁へ突っ込んだりしちゃって!」
「おいキャット! 喋りすぎだ!」
昔話をペラペラと話すキャット。 そうこうしているうちに、アジトの倉庫に到着した。
「……また荒らされてるわね。」
キャットは声を低くする。 資材の入った箱が開けられていたり、空箱が不自然に転がっていたりと、明らかに誰かが物色した跡が残っていた。
「マナ。何か犯人の痕跡が残ってないか探してくれるか。」
「うん。任せて!」
スリッピーから預かった端末を片手に、調査を開始した。 しばらく探した後、マナが声を上げる。
「この足跡、登録されてるメンバーのものじゃない。」
スリッピーが事前に登録していたデータにはない痕跡。
「……これ、新しい足跡だ……。裏口に向かってる。」
マナが視線を辿っていくと、その先には外へ繋がる扉があった。 扉を開けると、遠くにまた建物が見える。
「ねぇ、キャットさん。あの建物は?」
「第二倉庫ね。」
「……あっちも見に行ってみましょう! まだ近くに犯人がいるかも!」
再びバイクを発進させ、第二倉庫に向かう一行。 サイドカーに揺られるマナは、レーダーから目を離さずにいた。
「おい、あんまり下向いてると酔うぞ。」
「敵が近くにいるかもしれない。」
真剣にレーダーを見つめるマナは、ファルコの注意にも耳を貸さない。 その時、マナが弾かれたように後ろを振り返った。
「ファルコ……後ろ!!」
マナの声に反応し、ファルコは咄嗟にハンドルを切る。
「……っ!!」
その直後、レーザーの閃光がファルコの頬すれすれを掠め、後方の地面を焼いた。
「フォックス、キャットさん! 敵だよ!」
前を行く二人に無線を飛ばす。
『お出ましか。』
『とっ捕まえてあげるわ!』
「三台! Uターンして逃げてく!! 追いかけてっ!」
レーダー上の三つの反応が、急速に遠ざかっていく。 ファルコはバイクのエンジンを吹かす。
「いくぞ! フォックス、キャット!」
三人は旋回し、ターゲットの後を追った。
「ちょ……ちょっと、スピード出すぎじゃない? ファルコ?」
周囲の景色が、凄まじい速さで後方へ流れていく。
「敵の姿が見えてきた。また撃ってくるぞ!」
前方を走るターゲットのバイクから、再び無数のレーザーが飛んでくる。 ファルコが慣れた手つきで攻撃を躱していった。
『随分、好戦的だな。それほどついてきてほしくないのか。』
『このあと盗品をどこかに運ぶつもりなのかもね。させないわ!』
キャットが一気にスピードを上げ、先頭のファルコを追い抜く。 そして、そのまま脇道へ滑り込んでいった。
「おい、キャット! 何するつもりだ!」
『近道よ。』
次にキャットの姿を認めた時には、敵の一人の真後ろにつけていた。
「さあ、お仕置きの時間ね?」
腰のブラスターを引き抜き、敵のバイクへ狙いを定める。 レーザーが推進部に命中すると、相手のバイクはバランスを崩して転倒し、瞬く間に後方へ置き去りになった。
「聞こえる? 転倒した奴、回収してちょうだい。逃がさないでね。」
『はい! 姐さん! 任せてくださいっ。』
キャットはすぐさまアジトにいる仲間へ指示を送った。
「凄い、キャットさん! カッコよすぎ!」
地形を熟知し、一気に攻めへ転じたキャットを見て、マナは目を輝かせて感嘆した。
『ありがとっ!』
「……随分楽しそうだな。」
「え?」
その様子を見ていたファルコが、少し低い声を出す。
「なんでもねぇ。掴まってろ!」
さらにエンジンが唸りを上げ、加速していく。
「ちょ、ファルコ!? 速い速い!」
バイクに乗り慣れていないマナは、凄まじい速さで流れていく景色に目を白黒させる。
「追いつくんだろ。」
『あらぁ? 張り合ってるの?』
『おい、ファルコ。無茶はするな。』
「うるせぇ!」
マナは再びレーダーを確認し、進路を探る。
「右の脇道! そこを通れば前に出られる!」
「了解だ!」
ファルコは鋭くバイクを旋回させ、狭い脇道を駆け抜ける。 大通りへ出る直前、前方に急勾配の坂が現れた。
「ファ……ファルコ! このスピードのままあの坂に突っ込んだら……!」
車体が浮き上がる。 着地に失敗すれば、バイクごと粉々になりかねない。
「心配すんな! 頭下げて掴まってろ!」
坂に押し上げられ、バイクが空中へ飛び出す。
「わぁー!!」
強烈な浮遊感に耐えきれず、マナが悲鳴を上げる。
「終わりだっ!」
ファルコは空中でブラスターを構え、眼下の敵へレーザーを放った。 レーザーが命中したバイクは火を吹き、失速して転倒する。
「はっ! 俺から逃げようなんざ100万年早ぇんだよっ!」
着地したバイクのバランスを見事に保ち、ファルコが挑発を口にする。
「……凄い、ファルコ。流石だね!」
アーウィンだけでなくバイクまで乗りこなすファルコを、マナは素直に凄いと感じた。
「こんなもん普通だ、普通。」
彼はどこか気分が良さそうに笑った。
『やるじゃない、ファルコ。流石レーサーやってただけあるわね!』
『敵はあと一人だ! 追い詰めるぞ!』
「ちっ! 最後の一人はなかなか手が焼けるな……。」
残った敵を追い、キャットやフォックスが仕掛けるも、なかなか追いつけない。
『あのバイク、結構上手いわね。』
『このままじゃ逃げ切られるぞ。』
「……この先、道が二手に分かれてる!」
マナが声を上げる。
『ファルコ、右へ回れ! 俺が左から塞ぐ!』
「分かった!」
「挟み撃ちだね! フォックス、左! 300メートル先の道を曲がったら前に出られるよ!」
『了解だ!』
フォックスはアクセルを踏み込み、マナの指示に従う。
「ファルコ、その先30秒でターゲットと合流する!」
「分かった!」
フォックスがあっという間に敵の行く手を塞ぎ、ターゲットは咄嗟に右へハンドルを切った。
「残念、こっちは行き止まりだぜ?」
ファルコは目の前へ飛び込んできた敵に、ブラスターを放った。
*
「流石フォックス! 機転が利くよね。見習いたいよ。」
咄嗟の作戦を思いついたフォックスへ、マナはバイクを降りながら声をかける。
「マナのナビゲーションもなかなかだったぞ。空中戦だけじゃなくて、地上でもやれるんだな。」
「えへへ、ありがとう。」
「……お前、今日は誰でも褒めるな。」
フォックスに褒められ、笑顔を浮かべるマナを、ファルコが後ろからじっとりと睨む。
「えっ?」
「何でもねぇ。」
マナが振り向く前に、ファルコは視線を逸らした。
「最後の敵を確保したわ。マナちゃん、こっちに来て。盗品を見てちょうだい。こいつが持ってたわ。」
キャットが、機体制御用の小さなチップを差し出す。
「はい!」
マナはスリッピーから預かった端末をかざす。
「識別コード一致。偽物じゃない、本物です!」
「万事解決ね! さぁ、アジトに戻りましょ!」
*
任務を果たしたあと、夜も遅いからとアジトに泊まることになった。
「あ、ペッピー。スリッピーの調子はどう?」
『体調は問題ないぞ。ただ、尻が痛くて椅子に座れないと嘆いとるわ。』
ペッピーは怪我をしているスリッピーを見るため、グレートフォックスに残っていた。
「あはは、そっか。問題なくて良かったよ。それから、今日はキャットさんが泊まっていってって。」
『そうか。ファルコの古巣なんだ。ゆっくりしてくるといい。』
「ありがとう。何かあったらすぐ連絡してね。」
通信を切り、宴が開かれている部屋へ戻る。 室内へ続くドアを開くと、皆の騒ぐ声が一気に大きくなった。
「さすがファルコさん! バイクの腕は衰えてないっすね!」
「で、ファルコさん、あの人間の女の子とはどういう……」
「ファルコォ!! 飲もうぜぇ!」
口々にファルコへ声をかけ、楽しそうに彼を囲んでいる。 フォックスの方を見ると、彼もまた女性陣に囲まれていた。
「ファルコ……いいな、仲間がたくさんいて。」
彼らがファルコを信頼し、脱退した今も変わらず慕っていることが窺えた。 少し離れたところで席に着いたマナは、どこか羨ましそうにその光景を眺めていた。
「あら、今はスターフォックスがあなたの仲間じゃないの?」
隣の席に着いたキャットは、頬杖をついてマナの顔を覗き込む。
「そう……ですね! でもみんな凄くて、私はまだまだなんです。」
少し眉を下げながら苦笑するマナ。 何とか皆についていっているだけで、肩を並べるにはまだ程遠いと、彼女は考えていた。
「ふーん? そんなことないと思うけど……でさ、マナちゃん?」
「何ですか?」
ニンマリと笑うキャットを、不思議そうに見るマナ。
「好きな人とかいるの?」
「えっ!? 何ですか、いきなり。」
飲もうとしていたジュースを吹き出しそうになる。
「まあまあ、いいじゃない。女同士なんだし! 普段男に囲まれて、恋バナなんてしないでしょ? ねぇねぇ、どうなの?」
畳みかけるように聞かれ、マナは少し圧倒される。
「と……特にいないですけど。」
「へぇ〜?」
キャットの笑みが深まる。
「な、何ですか? その顔。」
「別にぃ? じゃあ、話題を変えるわ。」
キャットがマナの耳元に口を寄せる。
「ファルコはどう? 男として。」
「……! いや、どうって、ファルコは先輩で仲間だし……。」
「……仲間ねぇ?」
相変わらずニヤついた目で見てくる彼女の視線に耐えきれず、マナは言葉を絞り出す。
「そ、そういえば、ファルコって昔どんな感じだったんですか? 昔からの知り合いなんですよね?」
「そうね。」
「前からあんな感じだったんですか?」
「まあ、性格はそれほど変わってないかもだけどぉ……一つ、気になることがあるわ。」
少し離れたところにいるファルコへ、キャットが視線を向ける。
「何ですか?」
「ファルコ、女の子に困るタイプではなかったんだけどぉ……でもね。」
マナへ視線を戻す。
「今みたいに甲斐甲斐しく他人の世話を焼いてるアイツを見るのは、初めてよ?」
「え……。」
確かに思い返してみれば、今日一日だけでも、要所要所でファルコに声をかけられていた気がする。 特に、あの落下事故からは。
「まぁ……最近私が大きな事故に遭って、それで気にかけてくれてるんだと思います。」
「……事故ねぇ。」
キャットはふふっと笑いながら、再びファルコを見る。
「でも、ファルコって心配した相手全員のヘルメット直して、ベルト確認して、一緒のバイクに乗るような男だったかしら?」
「そう、なんですか……ね?」
「それなら、ここの全員の面倒見なきゃいけなくなるわ!」
キャットが声を上げて笑う。
「……。」
笑うキャットを見ながら、マナはなんとも言えない表情を浮かべ、少し離れたファルコへ視線を投げたのだった。