第1部 着任
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マナの初任務から、数日後────
「ようこそいらっしゃいました! スターフォックスご一行様!」
周囲では派手な音楽が重低音を響かせながら唸り、色とりどりの原色のネオンが輝いている。
恭しく現れた店員は、招かれた客たちを迎え入れた。
「お招きいただきありがとう。楽しませてもらうよ。」
フォックスが片手を上げて答える。
「当クラブは、料理や酒も高級品……そして……」
店員はフォックスの耳元に顔を寄せ、小声で囁く。
「可愛い子たちも揃っていますから! 期待してくださいね!」
「あー……あはは。いいじゃないか。」
その言葉に、生返事を返すフォックス。
テロリストグループを撃退した彼らは、その謝礼として、とあるクラブパーティーに招かれていた。
「……フォックス、あんまり羽目を外すんじゃないぞ。」
「進んで来たわけじゃないさ。付き合いだよ、付き合い。」
小言を言ってくるペッピーに、首を振りながら返答する。
「せっかく呼ばれたんだし、楽しまなきゃねー! マナー! デザート探しに行こー?」
「……。」
スリッピーは、隣にいる彼女から反応がないことを不思議に思い、顔を覗き込む。
「どうしたの? 大丈夫?」
「……あぁ! ごめん! なんだっけ?」
やっとスリッピーと目が合う。
「デザート食べよ!」
「う、うん!! 行こっか!」
彼女は、これまでずっと寮生活で毎日のように机へ向かっていたため、こういった場所に来たことがなかった。
多数の獣人が集まるホールでは、男女が親密に触れ合う光景を間近で目撃してしまうこともある。
────は、早く出たいな……。
強く抱き締め合ったり、人目につくところでキスを交わしたりするカップル。
気まずくて仕方がなかった。
「俺は酒飲んでくる。フォックス、行こうぜ。」
ファルコはフォックスを連れ立って、バーカウンターへ向かった。
マナはペッピー、スリッピーと共にテーブルへ腰を下ろす。
「みんな、こういうの……慣れてるの?」
まだキョロキョロとしているマナをよそに、スリッピーがパフェをつつきながら笑う。
「まあ、依頼のお礼とかではよく呼ばれるねー! マナちゃんは苦手そうだね。」
「毎回、フォックスとファルコを見張るのが大変なんだよ。」
はぁ、とため息をつくペッピー。
「二人ともよくお酒飲むし、モテるしねー!」
ケラケラと笑いながら、少し離れたところにあるバーカウンターへ視線を向ける。
つられてマナも同じ方向を見た。
「あ、ほら! もう女の子が声をかけてるよ。」
フォックスの周りには狐の女性たちが何人も集まり、楽しげな笑い声が響いていた。
一方、ファルコの傍にも二、三人の鳥類系の女性が集まっている。
その中でも、淡いピンクの羽毛をした女性だけは、ひときわ距離が近かった。
「ねぇ、あなたスターフォックスのファルコでしょ?」
艶を帯びた声で、女性はファルコに話しかける。
「あぁ、そうだ……。」
女性を一瞥すると、ファルコはグラスを傾けて酒を飲んだ。
「エースパイロットなんでしょ? 私、強い男が好きなの。一緒に飲んでも?」
自分へ視線を向けようとしないファルコの顔を、少し覗き込むようにする。
「好きにしろよ。」
その様子を、マナは食い入るように見つめていた。
ファルコの傍らにいる女性は、艶ややかな羽毛に覆われ、すらりとした体躯をしている。
人間のマナから見ても分かる。
美人だ。
────なんか、お似合いだな。
女性に向けるファルコの態度は、いつものマナに対するものとは少し違って見えた。
「慣れてる……のか。」
フォックスもファルコも、腕の立つ一流のパイロットだ。
異性にモテないわけがなかった。
普段、グレートフォックスで友人のように接している彼らが、ほんの少し遠くにいるように感じた。
「ねぇ……このあと時間あるの?」
ファルコの腕に、女性の腕が絡む。
「いや……時間は……。」
不意に、マナがこちらを見ていることに気づく。
目が合った瞬間、ファルコの胸に何とも言えない感情が湧き上がり、思わず視線を逸らした。
「いいじゃない。お隣のリーダーさんは、どこかに行ったわよ?」
隣にいたはずのフォックスがいない。
「アイツ……また連れていかれたな……!」
複数の女性に囲まれやすいフォックスは、あっという間に彼女たちに連れ去られていた。
「時間があるってことよね?」
女性がにこりと笑う。
「俺は……。」
一度目が合ってしまったせいか、マナのことが妙に気になり、ファルコはまたそちらを見てしまう。
すると、再び視線がぶつかった。
────なんでこっち見てんだよっ!! なんか気まずいだろ!?
「ファルコ、なんでこっち見てるんだろ……。」
焦るファルコをよそに、マナはようやく視線を落とした。
「……なんか、みんなでいるのが当たり前だと思っちゃってた。」
「えっ……? どういうこと?」
ペッピーはフォックスを探しに大慌てで飛び出していったため、テーブルにはスリッピーだけが座っていた。
「フォックスとファルコはやっぱり、パイロットとして特別なんだなって。」
少し寂しそうな笑みを浮かべるマナに、スリッピーは不思議そうに首をかしげた。
*
────翌日。敵基地上空。
四機のアーウィンが縦横無尽に空を飛び回る。
『正面三機、ファルコお願い!』
「了解。」
『左から増援!』
「見えてる!」
ファルコの機体が鋭く旋回し、敵機を撃破する。
『じゃあ右はフォックス!』
「……ずいぶん慣れたじゃねぇか。」
無線越しでも、ファルコがニヤリと笑っているのが分かる。
『優秀な教官がいたからね。』
「俺だろ。」
『フォックスとペッピーとスリッピーのおかげ! まぁー……ファルコもちょーっと……だけ?』
「俺を最後に付け足すな!!」
「ははは! からかわれてるじゃないか、ファルコ。」
フォックスが愉快そうに会話へ入ってくる。
『ほら、無駄口叩いてないで! ファルコ、右後方!』
「分かってる!」
いつも通りの声。
昨夜、クラブで女性に囲まれていた人物と同じとは思えない。
────こっちのファルコの方が、なんか落ち着く。
「大体は片付けたかのぉ?」
ペッピーがレーダーを確認する。
「あっ、一機逃げてくよ!! 六時方向!」
スリッピーが声を上げる。
「逃がすかよっ!」
一番距離の近かったファルコが追おうとする。
『ファルコ、追わないで!』
「はぁ!? あと一機だぞ!」
言いながらも、ファルコはGディフューザーのブレーキを展開する。
『その先、地形がおかしい。待って!』
「……チッ。」
『何その反応!』
「いや。正解だ。」
速度を上げて飛び出していれば、峡谷に設置された対空ミサイルの照準レーダーに捕捉されていただろう。
狭く入り組んだ峡谷内へ入り込んだ状態で狙われれば、ミサイルを避け切るのは難しかったはずだ。
「うわー! マナちゃんナイスー! 修理代が浮いたね、ファルコ。」
「うるせぇ!!」
悔しそうに怒鳴る。
「お見事だ、マナ! どんどん成長してるな!」
フォックスが嬉しそうに賞賛した。
『ありがとう、フォックス! で、この先の峡谷なんだけど……何かありそうだよ。』
「ほう。依頼主が言っていた地下遺跡か?」
ペッピーがディスプレイの資料を確認する。
『そうかもしれない。準備して調査した方がいいかも。』
「分かった。スターフォックス、全機帰投せよ!」
フォックスの掛け声を合図に、アーウィンは母艦へと向かった。
*
「ロープと、それから熱探知機とぉ……。」
スリッピーが倉庫の中をゴソゴソと漁る。
漁るたびに物が滑り落ちてきて、今にも足の踏み場がなくなりそうだ。
「ス、スリッピー! もうちょっと散らかさないように……。」
マナが後ろから声をかける。
ここも早く整理しないとなぁ、と思いながら、足元へ落ちてきた道具を脇へ避けていく。
「あ、あったー! 高性能ランタン!」
地下探検はランタンがないと始まんないよね、と言いながら、スリッピーは荷造りを進めていく。
「地下探検なんて、ワクワクするね。スリッピー!」
「うん! 空ばっかり飛んで、フィールドワークは全然だったからね。」
ニコニコと笑みを浮かべるスリッピー。
「こら! 二人とも遊びじゃないんだぞ! 遺跡は深い。細心の注意を払わんと……。」
「分かってるよ、ペッピー! ペッピーも一緒なんだから、安心でしょ?」
小言が始まりそうなペッピーへ、マナは両手を突き出して制止する。
「そうそう! も〜! お宝探しなんてテンション上がっちゃうんだけど!」
振り向いたスリッピーと目を合わせる。
「「ねー!」」
二人揃って首を傾げ、息を合わせる。
その様子を見て、ペッピーは頭を抱えるばかりだった。
*
『こちらフォックス。スリッピー、ペッピー。目的地に到着後は、アーウィンを自動操縦に切り替えて待機させてくれ。』
「こちらスリッピー。了解、フォックスー。」
「こちらペッピー。了解だ。」
マナたちは数時間前に訪れた峡谷へ、再び足を運んだ。
マナはスリッピーのアーウィンの補助席に乗り込み、程なくして目的地へ降り立った。
「さて、この地図によると……。」
マナは地図を広げ、先へ続いていると思われる方向へ目を向ける。
ここは深い谷に覆われており、光が届きづらい。
先の道は、ランタンに照らされた数メートル先までしか見えなかった。
『打ち合わせ通り、俺とファルコは上空で警護にあたる。無線は繋いだままにしてくれ。』
「了解。」
地上の三人が返事を返した。
「かなり暗いねぇ……。」
スリッピーがランタンを照らす。
三人は地図を頼りに、道なき道を進んでいった。
周囲を照らしてみると、壁面には古代文字のようなものが彫り込まれた跡が残されている。
「……気味が悪いのう。」
「そう? なんか罠でも仕掛けられてそうでワクワクしない?」
「こんなとこで罠なんて、冗談やめてよ。」
スリッピーの軽口を聞きながら、マナが無線を飛ばす。
「どう? フォックス、ファルコ。異常はない?」
『こちらフォックス。特に問題ないぜ。お宝発見を首を長くして待ってるよ。』
『こちらファルコ……退屈すぎて寝ちまいそうだ。』
ふぁ、と欠伸をする声まで聞こえてきた。
「寝たら落ちるよ、ファルコ。」
『誰に言ってんだ。』
マナの冗談に、ファルコが少し笑う。
『とにかく、お宝を発見……したら……早……』
「あれ、フォックス?」
『危……険……な……』
「通信障害かな……フォックス、フォックス!」
そのまま雑音だけが耳に残り、声は完全に途切れてしまった。
マナがレーダーを確認すると、そちらも反応を示さなくなっている。
「……レーダーと通信がダメになってる。引き返した方がいいかも。」
「えー! これからなのにー!」
「スリッピー! わがままを言うな! そうだな。危険になる前に出直そう。」
三人が来た道を戻ろうとした、その時。
奥の暗闇に、赤い光が揺らめいた気がした。
「待て! 二人とも!」
ペッピーが腰に装備していたブラスターを素早く構える。
────ヴゥルルル……!!!
獣のような唸り声が闇の奥から響いた。
「なにっ……!?」
マナは思わず後ずさり、恐怖のあまりスリッピーへ抱きつく。
「うん……? あれ、古代の生物兵器だよ!」
ランタンの光にぼんやりと照らされたその獣には体毛がなく、全身が鈍い金属の光を放っていた。
口元には鋭い牙が並び、四足で地面を這うようにして迫ってくる。
「うわっー! 凄い! 持って帰って分解したいー!」
「言っとる場合か! 逃げるぞ!」
ペッピーがブラスターを牽制に何発か撃ち込む。
『グゥ……!!!』
「怯んだ! 今のうちだ!」
ペッピーは踵を返し、マナとスリッピーの背中を押した。
一方、上空ではフォックスが地上の三人へ何度も呼びかけていた。
『おい、スリッピー、ペッピー、マナ! 聞こえるか。応答しろ。』
『なんだ、通信が途切れたのか?』
『レーダーにも反応がなくなった……捜索に向かおう、ファルコ。』
『ああ。』
二人はアーウィンを傾け、遺跡の上空へ接近していった。
「はぁ……はぁ……! スリッピー、ペッピー! この先に行けば……。」
マナが二人を振り返る。
しかし、そこには闇が広がるばかりだった。
「スリッピー! ペッピー!」
手にしたライトを四方へ向けながら、必死に二人の姿を探す。
気配がない。
マナの鼓動が急速に速くなっていく。
「どうしよう……はぐれるなんて……!」
────グルゥヴルルッ!
遠くから、また唸り声が聞こえる。
「……とにかく奥に行くしかない……開けた場所があるはず……。」
頭に残っている地図を頼りに、遺跡の中心部へ向かって走った。
広い場所へ出れば、通信も回復するかもしれない。
後ろを何度も振り返りながら、懸命に道を駆け抜ける。
すると、前方に僅かな光が差し込む場所が見えた。
「ここが……遺跡の中心部……。」
そこは巨大な空洞となっており、架けられた石橋の下には、底の見えない奈落が広がっている。
中央には、何かの神を象ったと思われる巨大な石像が立っていた。
「あ、通信……ダメだ。回復してない。ペッピーとスリッピー、大丈夫かな……。」
ここで救助を待つしかない。
そう考えながら、マナは石像へ続く橋を進んだ。
またあの生物兵器が襲ってくるかもしれない。
可能な限り距離を取りたかった。
「……何これ。何か書いてある? 読めるかな?」
石像の足元まで来ると、その台座には古代文字で何かが刻まれていた。
どうせここで待つしかないのなら、少しでも成果を持って帰ろう。
そう思い、マナは端末を片手に解読を始める。
「汝……墓を……穢す者……頭を垂れて……罰を……受けよ……何これ、怖。」
その場から離れようとした瞬間。
マナの足元へ、鈍い衝撃が走った。
「……っ、なに……!!」
石畳の橋が砕ける。
「────っ!」
マナの体が、奈落へ投げ出された。
闇に続く深淵は、いつまで経っても底へたどり着かない。
落下しながら、マナの思考は完全にパニックへ陥った。
────どうしよう、どうしよう、どうしよう……!! 私、死ぬの……!?
お母さん。
フォックス。
ペッピー。
スリッピー。
誰でもいいから助けて!!
「……ファ……ルコ!! ファルコォ!!!」
届くはずのない叫びを上げた。
────なんだ?
『どうした、ファルコ。早く着陸地点に……。』
不自然に動きを止めたファルコへ、フォックスが問いかける。
『……お前はそっちから行け。胸騒ぎがする。』
Gディフューザーのブーストを全開にし、ファルコはただ自分の勘に従った。
『おい! そっちにアーウィンが入れる通路はないぞっ!』
『ある! なんか分かんだよっ!』
『どういうことだ!』
『うるせぇ!! 今、話してる暇はねぇ!』
ファルコの機体は吸い込まれるようにして、岩壁に開いた小さな空洞へ飛び込んだ。
内部には鍾乳石の柱が幾重にも伸びている。
ファルコはそれらを紙一重でかわしながら、高速で駆け抜けていく。
────なんだ、この嫌な胸騒ぎは……!
「はぁ……はぁ……!」
マナは落下の途中、幸いにも遺跡の一部へ服が引っかかり、宙吊りの状態になっていた。
その眼下には、なお底の見えない闇が広がっている。
「助けて……助けて……!」
ただ祈ることしかできない状況に、涙が滲んでくる。
一方、ファルコは鍾乳洞を抜け、石像が立つ広場へたどり着いていた。
マナの姿はない。
────いや、なんでアイツがいるって思ってんだ?
「……下だっ!!」
考えることをやめた。
何かに導かれるように、ファルコはアーウィンを急降下させる。
────ゴォォォ……!
マナの耳に、微かにエンジン音が届いた。
「……! アーウィン?!」
『お……い……大丈……夫か!』
途切れ途切れの通信が聞こえる。
どうしてファルコが。
通信もレーダーも途切れていたはずだ。
マナは驚きながらも、大きな安堵を覚えた。
「ファルコ……!!」
『待っ……てろ、すぐに……!』
少し先で宙吊りになっているマナの姿を認め、ファルコは事態の深刻さを理解する。
────ゴゴゴッ……!
再び遺跡の崩落が始まり、マナを支えていた石壁へ亀裂が走る。
────まずいっ……!!
ファルコがブーストを最大出力まで引き上げた。
「あっ……?」
引っかかっていた服が裂ける。
マナの体が、再び闇へ落ちた。
『────っ、マナ!!!』
さらにブーストを踏み込む。
アーウィンが警報を上げた。
ファルコは一気に追い抜かず、マナの落下速度に合わせるよう慎重に推力を調整する。
「……ファルコ……。」
マナは気が遠くなっていくのを感じた。
『気を失うなっ!』
アーウィンをぎりぎりまでマナへ近づけ、機首で掬い上げるようにして受け止める。
『捕まってろっ!』
マナに負担をかけないよう、徐々に速度を落としていく。
コックピットの上へ必死にしがみつくマナと、ファルコの目が合った。
『大丈夫だ。俺の腕を信じろ。』
────PULL UP!! PULL UP!!
アーウィンの警報が鳴り響く。
底が近い。
ファルコは限界まで地面を引きつける。
『止まるぞ! 掴まれっ!』
地面すれすれで機首を引き起こす。
機体が大きく軋み、砂埃を巻き上げながら着地した。
「はぁ……はぁ……っ!!」
無事にアーウィンからマナを下ろし、ファルコは座り込んだ彼女の隣へ腰を下ろした。
「……怪我はねぇのか?」
「うん……かすり傷……ぐらいだよ。」
ファルコが持っていた水を差し出す。
マナはそれを受け取ると、勢いよく喉へ流し込んだ。
そして、ようやく一息つく。
「……助けてくれてありがとう……もうダメかと思ったよ。」
力のない笑顔を浮かべる。
「そりゃ……助けるだろ。俺たちはチームだ。」
「うん……そうだね……さっきさ……。」
少し言い淀むマナ。
「なんだよ?」
「名前……呼んでた? マナって。」
────呼んでたか?
というか、今まで俺は呼んでなかったのか?
「ファルコ?」
動きが止まってしまった彼の顔を、マナが覗き込む。
「あぁ……そうだったか?」
「……うん。」
彼女は、ほんの少し微笑んだ。
なぜそんなことを今聞かれるのか、ファルコには分からなかった。
「それから、なんで私がいる場所が分かったの? レーダーも消えてたよね?」
「……俺にも分からねぇ。勘だよ、勘。まぁ助かったんだからいいだろ。」
マナは、偶然にしては出来すぎていると感じていた。
しかし、今ここで考えたところで答えが出ないことも明らかだった。
「そう……だね……早く……帰らない……と……。」
安堵した途端。
張り詰めていた糸が切れたように、全身から力が抜けていく。
「おい!」
ファルコが咄嗟に、その頭を受け止める。
ファルコの声が、遠く聞こえていった。
第1部 終
第1部イメージソング:
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店員はフォックスの耳元に顔を寄せ、小声で囁く。
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「あー……あはは。いいじゃないか。」
その言葉に、生返事を返すフォックス。
テロリストグループを撃退した彼らは、その謝礼として、とあるクラブパーティーに招かれていた。
「……フォックス、あんまり羽目を外すんじゃないぞ。」
「進んで来たわけじゃないさ。付き合いだよ、付き合い。」
小言を言ってくるペッピーに、首を振りながら返答する。
「せっかく呼ばれたんだし、楽しまなきゃねー! マナー! デザート探しに行こー?」
「……。」
スリッピーは、隣にいる彼女から反応がないことを不思議に思い、顔を覗き込む。
「どうしたの? 大丈夫?」
「……あぁ! ごめん! なんだっけ?」
やっとスリッピーと目が合う。
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「う、うん!! 行こっか!」
彼女は、これまでずっと寮生活で毎日のように机へ向かっていたため、こういった場所に来たことがなかった。
多数の獣人が集まるホールでは、男女が親密に触れ合う光景を間近で目撃してしまうこともある。
────は、早く出たいな……。
強く抱き締め合ったり、人目につくところでキスを交わしたりするカップル。
気まずくて仕方がなかった。
「俺は酒飲んでくる。フォックス、行こうぜ。」
ファルコはフォックスを連れ立って、バーカウンターへ向かった。
マナはペッピー、スリッピーと共にテーブルへ腰を下ろす。
「みんな、こういうの……慣れてるの?」
まだキョロキョロとしているマナをよそに、スリッピーがパフェをつつきながら笑う。
「まあ、依頼のお礼とかではよく呼ばれるねー! マナちゃんは苦手そうだね。」
「毎回、フォックスとファルコを見張るのが大変なんだよ。」
はぁ、とため息をつくペッピー。
「二人ともよくお酒飲むし、モテるしねー!」
ケラケラと笑いながら、少し離れたところにあるバーカウンターへ視線を向ける。
つられてマナも同じ方向を見た。
「あ、ほら! もう女の子が声をかけてるよ。」
フォックスの周りには狐の女性たちが何人も集まり、楽しげな笑い声が響いていた。
一方、ファルコの傍にも二、三人の鳥類系の女性が集まっている。
その中でも、淡いピンクの羽毛をした女性だけは、ひときわ距離が近かった。
「ねぇ、あなたスターフォックスのファルコでしょ?」
艶を帯びた声で、女性はファルコに話しかける。
「あぁ、そうだ……。」
女性を一瞥すると、ファルコはグラスを傾けて酒を飲んだ。
「エースパイロットなんでしょ? 私、強い男が好きなの。一緒に飲んでも?」
自分へ視線を向けようとしないファルコの顔を、少し覗き込むようにする。
「好きにしろよ。」
その様子を、マナは食い入るように見つめていた。
ファルコの傍らにいる女性は、艶ややかな羽毛に覆われ、すらりとした体躯をしている。
人間のマナから見ても分かる。
美人だ。
────なんか、お似合いだな。
女性に向けるファルコの態度は、いつものマナに対するものとは少し違って見えた。
「慣れてる……のか。」
フォックスもファルコも、腕の立つ一流のパイロットだ。
異性にモテないわけがなかった。
普段、グレートフォックスで友人のように接している彼らが、ほんの少し遠くにいるように感じた。
「ねぇ……このあと時間あるの?」
ファルコの腕に、女性の腕が絡む。
「いや……時間は……。」
不意に、マナがこちらを見ていることに気づく。
目が合った瞬間、ファルコの胸に何とも言えない感情が湧き上がり、思わず視線を逸らした。
「いいじゃない。お隣のリーダーさんは、どこかに行ったわよ?」
隣にいたはずのフォックスがいない。
「アイツ……また連れていかれたな……!」
複数の女性に囲まれやすいフォックスは、あっという間に彼女たちに連れ去られていた。
「時間があるってことよね?」
女性がにこりと笑う。
「俺は……。」
一度目が合ってしまったせいか、マナのことが妙に気になり、ファルコはまたそちらを見てしまう。
すると、再び視線がぶつかった。
────なんでこっち見てんだよっ!! なんか気まずいだろ!?
「ファルコ、なんでこっち見てるんだろ……。」
焦るファルコをよそに、マナはようやく視線を落とした。
「……なんか、みんなでいるのが当たり前だと思っちゃってた。」
「えっ……? どういうこと?」
ペッピーはフォックスを探しに大慌てで飛び出していったため、テーブルにはスリッピーだけが座っていた。
「フォックスとファルコはやっぱり、パイロットとして特別なんだなって。」
少し寂しそうな笑みを浮かべるマナに、スリッピーは不思議そうに首をかしげた。
*
────翌日。敵基地上空。
四機のアーウィンが縦横無尽に空を飛び回る。
『正面三機、ファルコお願い!』
「了解。」
『左から増援!』
「見えてる!」
ファルコの機体が鋭く旋回し、敵機を撃破する。
『じゃあ右はフォックス!』
「……ずいぶん慣れたじゃねぇか。」
無線越しでも、ファルコがニヤリと笑っているのが分かる。
『優秀な教官がいたからね。』
「俺だろ。」
『フォックスとペッピーとスリッピーのおかげ! まぁー……ファルコもちょーっと……だけ?』
「俺を最後に付け足すな!!」
「ははは! からかわれてるじゃないか、ファルコ。」
フォックスが愉快そうに会話へ入ってくる。
『ほら、無駄口叩いてないで! ファルコ、右後方!』
「分かってる!」
いつも通りの声。
昨夜、クラブで女性に囲まれていた人物と同じとは思えない。
────こっちのファルコの方が、なんか落ち着く。
「大体は片付けたかのぉ?」
ペッピーがレーダーを確認する。
「あっ、一機逃げてくよ!! 六時方向!」
スリッピーが声を上げる。
「逃がすかよっ!」
一番距離の近かったファルコが追おうとする。
『ファルコ、追わないで!』
「はぁ!? あと一機だぞ!」
言いながらも、ファルコはGディフューザーのブレーキを展開する。
『その先、地形がおかしい。待って!』
「……チッ。」
『何その反応!』
「いや。正解だ。」
速度を上げて飛び出していれば、峡谷に設置された対空ミサイルの照準レーダーに捕捉されていただろう。
狭く入り組んだ峡谷内へ入り込んだ状態で狙われれば、ミサイルを避け切るのは難しかったはずだ。
「うわー! マナちゃんナイスー! 修理代が浮いたね、ファルコ。」
「うるせぇ!!」
悔しそうに怒鳴る。
「お見事だ、マナ! どんどん成長してるな!」
フォックスが嬉しそうに賞賛した。
『ありがとう、フォックス! で、この先の峡谷なんだけど……何かありそうだよ。』
「ほう。依頼主が言っていた地下遺跡か?」
ペッピーがディスプレイの資料を確認する。
『そうかもしれない。準備して調査した方がいいかも。』
「分かった。スターフォックス、全機帰投せよ!」
フォックスの掛け声を合図に、アーウィンは母艦へと向かった。
*
「ロープと、それから熱探知機とぉ……。」
スリッピーが倉庫の中をゴソゴソと漁る。
漁るたびに物が滑り落ちてきて、今にも足の踏み場がなくなりそうだ。
「ス、スリッピー! もうちょっと散らかさないように……。」
マナが後ろから声をかける。
ここも早く整理しないとなぁ、と思いながら、足元へ落ちてきた道具を脇へ避けていく。
「あ、あったー! 高性能ランタン!」
地下探検はランタンがないと始まんないよね、と言いながら、スリッピーは荷造りを進めていく。
「地下探検なんて、ワクワクするね。スリッピー!」
「うん! 空ばっかり飛んで、フィールドワークは全然だったからね。」
ニコニコと笑みを浮かべるスリッピー。
「こら! 二人とも遊びじゃないんだぞ! 遺跡は深い。細心の注意を払わんと……。」
「分かってるよ、ペッピー! ペッピーも一緒なんだから、安心でしょ?」
小言が始まりそうなペッピーへ、マナは両手を突き出して制止する。
「そうそう! も〜! お宝探しなんてテンション上がっちゃうんだけど!」
振り向いたスリッピーと目を合わせる。
「「ねー!」」
二人揃って首を傾げ、息を合わせる。
その様子を見て、ペッピーは頭を抱えるばかりだった。
*
『こちらフォックス。スリッピー、ペッピー。目的地に到着後は、アーウィンを自動操縦に切り替えて待機させてくれ。』
「こちらスリッピー。了解、フォックスー。」
「こちらペッピー。了解だ。」
マナたちは数時間前に訪れた峡谷へ、再び足を運んだ。
マナはスリッピーのアーウィンの補助席に乗り込み、程なくして目的地へ降り立った。
「さて、この地図によると……。」
マナは地図を広げ、先へ続いていると思われる方向へ目を向ける。
ここは深い谷に覆われており、光が届きづらい。
先の道は、ランタンに照らされた数メートル先までしか見えなかった。
『打ち合わせ通り、俺とファルコは上空で警護にあたる。無線は繋いだままにしてくれ。』
「了解。」
地上の三人が返事を返した。
「かなり暗いねぇ……。」
スリッピーがランタンを照らす。
三人は地図を頼りに、道なき道を進んでいった。
周囲を照らしてみると、壁面には古代文字のようなものが彫り込まれた跡が残されている。
「……気味が悪いのう。」
「そう? なんか罠でも仕掛けられてそうでワクワクしない?」
「こんなとこで罠なんて、冗談やめてよ。」
スリッピーの軽口を聞きながら、マナが無線を飛ばす。
「どう? フォックス、ファルコ。異常はない?」
『こちらフォックス。特に問題ないぜ。お宝発見を首を長くして待ってるよ。』
『こちらファルコ……退屈すぎて寝ちまいそうだ。』
ふぁ、と欠伸をする声まで聞こえてきた。
「寝たら落ちるよ、ファルコ。」
『誰に言ってんだ。』
マナの冗談に、ファルコが少し笑う。
『とにかく、お宝を発見……したら……早……』
「あれ、フォックス?」
『危……険……な……』
「通信障害かな……フォックス、フォックス!」
そのまま雑音だけが耳に残り、声は完全に途切れてしまった。
マナがレーダーを確認すると、そちらも反応を示さなくなっている。
「……レーダーと通信がダメになってる。引き返した方がいいかも。」
「えー! これからなのにー!」
「スリッピー! わがままを言うな! そうだな。危険になる前に出直そう。」
三人が来た道を戻ろうとした、その時。
奥の暗闇に、赤い光が揺らめいた気がした。
「待て! 二人とも!」
ペッピーが腰に装備していたブラスターを素早く構える。
────ヴゥルルル……!!!
獣のような唸り声が闇の奥から響いた。
「なにっ……!?」
マナは思わず後ずさり、恐怖のあまりスリッピーへ抱きつく。
「うん……? あれ、古代の生物兵器だよ!」
ランタンの光にぼんやりと照らされたその獣には体毛がなく、全身が鈍い金属の光を放っていた。
口元には鋭い牙が並び、四足で地面を這うようにして迫ってくる。
「うわっー! 凄い! 持って帰って分解したいー!」
「言っとる場合か! 逃げるぞ!」
ペッピーがブラスターを牽制に何発か撃ち込む。
『グゥ……!!!』
「怯んだ! 今のうちだ!」
ペッピーは踵を返し、マナとスリッピーの背中を押した。
一方、上空ではフォックスが地上の三人へ何度も呼びかけていた。
『おい、スリッピー、ペッピー、マナ! 聞こえるか。応答しろ。』
『なんだ、通信が途切れたのか?』
『レーダーにも反応がなくなった……捜索に向かおう、ファルコ。』
『ああ。』
二人はアーウィンを傾け、遺跡の上空へ接近していった。
「はぁ……はぁ……! スリッピー、ペッピー! この先に行けば……。」
マナが二人を振り返る。
しかし、そこには闇が広がるばかりだった。
「スリッピー! ペッピー!」
手にしたライトを四方へ向けながら、必死に二人の姿を探す。
気配がない。
マナの鼓動が急速に速くなっていく。
「どうしよう……はぐれるなんて……!」
────グルゥヴルルッ!
遠くから、また唸り声が聞こえる。
「……とにかく奥に行くしかない……開けた場所があるはず……。」
頭に残っている地図を頼りに、遺跡の中心部へ向かって走った。
広い場所へ出れば、通信も回復するかもしれない。
後ろを何度も振り返りながら、懸命に道を駆け抜ける。
すると、前方に僅かな光が差し込む場所が見えた。
「ここが……遺跡の中心部……。」
そこは巨大な空洞となっており、架けられた石橋の下には、底の見えない奈落が広がっている。
中央には、何かの神を象ったと思われる巨大な石像が立っていた。
「あ、通信……ダメだ。回復してない。ペッピーとスリッピー、大丈夫かな……。」
ここで救助を待つしかない。
そう考えながら、マナは石像へ続く橋を進んだ。
またあの生物兵器が襲ってくるかもしれない。
可能な限り距離を取りたかった。
「……何これ。何か書いてある? 読めるかな?」
石像の足元まで来ると、その台座には古代文字で何かが刻まれていた。
どうせここで待つしかないのなら、少しでも成果を持って帰ろう。
そう思い、マナは端末を片手に解読を始める。
「汝……墓を……穢す者……頭を垂れて……罰を……受けよ……何これ、怖。」
その場から離れようとした瞬間。
マナの足元へ、鈍い衝撃が走った。
「……っ、なに……!!」
石畳の橋が砕ける。
「────っ!」
マナの体が、奈落へ投げ出された。
闇に続く深淵は、いつまで経っても底へたどり着かない。
落下しながら、マナの思考は完全にパニックへ陥った。
────どうしよう、どうしよう、どうしよう……!! 私、死ぬの……!?
お母さん。
フォックス。
ペッピー。
スリッピー。
誰でもいいから助けて!!
「……ファ……ルコ!! ファルコォ!!!」
届くはずのない叫びを上げた。
────なんだ?
『どうした、ファルコ。早く着陸地点に……。』
不自然に動きを止めたファルコへ、フォックスが問いかける。
『……お前はそっちから行け。胸騒ぎがする。』
Gディフューザーのブーストを全開にし、ファルコはただ自分の勘に従った。
『おい! そっちにアーウィンが入れる通路はないぞっ!』
『ある! なんか分かんだよっ!』
『どういうことだ!』
『うるせぇ!! 今、話してる暇はねぇ!』
ファルコの機体は吸い込まれるようにして、岩壁に開いた小さな空洞へ飛び込んだ。
内部には鍾乳石の柱が幾重にも伸びている。
ファルコはそれらを紙一重でかわしながら、高速で駆け抜けていく。
────なんだ、この嫌な胸騒ぎは……!
「はぁ……はぁ……!」
マナは落下の途中、幸いにも遺跡の一部へ服が引っかかり、宙吊りの状態になっていた。
その眼下には、なお底の見えない闇が広がっている。
「助けて……助けて……!」
ただ祈ることしかできない状況に、涙が滲んでくる。
一方、ファルコは鍾乳洞を抜け、石像が立つ広場へたどり着いていた。
マナの姿はない。
────いや、なんでアイツがいるって思ってんだ?
「……下だっ!!」
考えることをやめた。
何かに導かれるように、ファルコはアーウィンを急降下させる。
────ゴォォォ……!
マナの耳に、微かにエンジン音が届いた。
「……! アーウィン?!」
『お……い……大丈……夫か!』
途切れ途切れの通信が聞こえる。
どうしてファルコが。
通信もレーダーも途切れていたはずだ。
マナは驚きながらも、大きな安堵を覚えた。
「ファルコ……!!」
『待っ……てろ、すぐに……!』
少し先で宙吊りになっているマナの姿を認め、ファルコは事態の深刻さを理解する。
────ゴゴゴッ……!
再び遺跡の崩落が始まり、マナを支えていた石壁へ亀裂が走る。
────まずいっ……!!
ファルコがブーストを最大出力まで引き上げた。
「あっ……?」
引っかかっていた服が裂ける。
マナの体が、再び闇へ落ちた。
『────っ、マナ!!!』
さらにブーストを踏み込む。
アーウィンが警報を上げた。
ファルコは一気に追い抜かず、マナの落下速度に合わせるよう慎重に推力を調整する。
「……ファルコ……。」
マナは気が遠くなっていくのを感じた。
『気を失うなっ!』
アーウィンをぎりぎりまでマナへ近づけ、機首で掬い上げるようにして受け止める。
『捕まってろっ!』
マナに負担をかけないよう、徐々に速度を落としていく。
コックピットの上へ必死にしがみつくマナと、ファルコの目が合った。
『大丈夫だ。俺の腕を信じろ。』
────PULL UP!! PULL UP!!
アーウィンの警報が鳴り響く。
底が近い。
ファルコは限界まで地面を引きつける。
『止まるぞ! 掴まれっ!』
地面すれすれで機首を引き起こす。
機体が大きく軋み、砂埃を巻き上げながら着地した。
「はぁ……はぁ……っ!!」
無事にアーウィンからマナを下ろし、ファルコは座り込んだ彼女の隣へ腰を下ろした。
「……怪我はねぇのか?」
「うん……かすり傷……ぐらいだよ。」
ファルコが持っていた水を差し出す。
マナはそれを受け取ると、勢いよく喉へ流し込んだ。
そして、ようやく一息つく。
「……助けてくれてありがとう……もうダメかと思ったよ。」
力のない笑顔を浮かべる。
「そりゃ……助けるだろ。俺たちはチームだ。」
「うん……そうだね……さっきさ……。」
少し言い淀むマナ。
「なんだよ?」
「名前……呼んでた? マナって。」
────呼んでたか?
というか、今まで俺は呼んでなかったのか?
「ファルコ?」
動きが止まってしまった彼の顔を、マナが覗き込む。
「あぁ……そうだったか?」
「……うん。」
彼女は、ほんの少し微笑んだ。
なぜそんなことを今聞かれるのか、ファルコには分からなかった。
「それから、なんで私がいる場所が分かったの? レーダーも消えてたよね?」
「……俺にも分からねぇ。勘だよ、勘。まぁ助かったんだからいいだろ。」
マナは、偶然にしては出来すぎていると感じていた。
しかし、今ここで考えたところで答えが出ないことも明らかだった。
「そう……だね……早く……帰らない……と……。」
安堵した途端。
張り詰めていた糸が切れたように、全身から力が抜けていく。
「おい!」
ファルコが咄嗟に、その頭を受け止める。
ファルコの声が、遠く聞こえていった。
第1部 終
第1部イメージソング:
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