サンクレッド×光♀「その視線は雄弁に愛を語る〜IFルート〜」
※サンクレッド×光♀小説「その視線は雄弁に愛を語る」の別ルートです。
※本編を読んでいただいた方向けの内容ですので一読推奨ですが、サンクレッドとの甘いシーンだけを楽しむぶんには問題ないので、そのままどうぞ。
※途中分岐なので、とあるシーンからのぶつ切りです。唐突に始まって唐突に終わります。
「その視線は雄弁に愛を語る〜IFルート」
「悪い、遅くなった」
波打ち際に座り、ぼんやりと海を眺めていると、サンクレッドが後ろから声をかけてきた。
「あいつは黒渦団に引き渡してきたぞ」
あの後、サンクレッドは男を拘束したまま黒渦団の軍令部へと赴き、身柄を引き渡してきたらしい。一応サンクレッドも話を聞かれたらしいが、暁に所属している者が泥棒を捕まえたということで、いたく感謝されて終わったのだという。
わたしはサンクレッドに「ありがとう、おつかれさま」と労いの言葉をかけてから、結果的に足手まといになってしまったことを謝罪した。
「ごめんね、足手まといになっちゃった」
「謝る必要がどこにある。悪いのはナイフを投げたあいつだ。……足は大丈夫か?」
「んー……少し、痛いかな。でも歩けないほどではないよ」
立ち上がろうと足に力を入れた途端、右足に痛みが走り、思わず顔をしかめてしまう。
サンクレッドは歩き出そうとするわたしの肩を掴んでやんわり制止すると、有無を言わさずその場に座らされる。
「無理はするな。手当てしてやるから、傷を見せろ」
「えっ、でも、歩けないほどじゃ」
「いいから」
強めの口調で諭され、わたしはしぶしぶ口をつぐんで靴を脱いだ。
傷の状態は最初に走りながら見た時と変わらないが止血はされていて、ナイフが掠った場所に波打つようなズキズキとした痛みが走る。
サンクレッドは一瞬眉をひそめたけれど、外套のポケットから携帯用の薬や包帯を取り出して、素早く一通りの処置を行っていく。わたしはその手際の良さに感心するばかりだ。
「すごい、上手だね」
「これくらいできないと諜報なんてやってられないからな。今回はほぼ素人同然の輩だったせいか、毒も塗られていなかったのが幸いだったよ」
サンクレッドの言葉通りの的確な処置が施されたおかげで、右足の痛みは先程よりも良くなったような気がする。
わたしはサンクレッドに礼を言ってから、もう大丈夫だというように立ち上がろうとしたが、またもや肩を掴んで阻止されてしまう。
「まだ手当ては終わっていないぞ」
「え? 他に痛いところはないはずだけど……」
「かすり傷のようだが、いくつか傷ができている」
サンクレッドの視線の先を追ってみると、包帯が巻かれた場所から少しずれたところに、複数の小さな傷ができていた。そっと自分で触れてみたがあまり痛みはなく、出血もない。
盗みを働いた男を追走している最中、自分でも気付かないうちに傷を作ってしまったのだろうか。いずれにせよ、この程度ならば怪我のうちにも入らない。
「これくらいすぐ治るから大丈夫だよ」
「跡が残っても困るだろう。薬くらいは塗っておいてもいいんじゃないか?」
「ううん、平気だよ。この程度舐めとけば治るって」
これ以上サンクレッドの手を煩わせたくなくて、おどけたように肩をすくめてみせる。
「……なるほど。舐めときゃ治る、ね」
口の中で転がすようにわたしの言葉を反芻してから、サンクレッドが微笑んだ。
わたしが適当に口にしたのは、冗談にもならない冗談。心配してくれるサンクレッドを安心させるための、嘘にもならない小さな嘘。
――それが、わたしを心の底から後悔させることになるなんて、気づきもせずに。
「――他でもない、お前自身がそう望むなら俺はかまわないけどな」
わたしの右足を、サンクレッドは壊れ物に触れるかのような優しい手つきでゆっくりと持ち上げた。そのまま先程の手当の時よりも少し高い位置に固定されてしまったため、座っているのがきつくなってしまい、後方に倒れ込むような形で体勢を崩す。
はたから見れば、サンクレッドに右足を差し出しているような妙に恥ずかしい体勢になってしまっている気がする。
目立つところに一人で座っていたくなくて、人通りが少ない場所を探して待っていたたのが幸いしてか、今も周囲に人の姿はない。この格好を誰かに見られたら恥ずかしいどころの騒ぎではなかったから、それだけが救いだった。
「サンクレッド? あの、そろそろ下ろしてくれると」
助かるなあ――その台詞は、発されることなくわたしの口の中で消えていく。
何故か、と問うべくもない。
――サンクレッドが、わたしの右足に唇で触れてきたからだ。
「ちょ、ちょっと!」
半ば悲鳴のような声を上げるが、サンクレッドはわたしにかまわず右足に口づけを落とすのを止めようとはしなかった。
ちゅ、と音を立て、わたしの足にできた複数の傷跡をなぞるように順番に唇で触れていく。
わたしは真っ赤に染まる頬を隠そうともせず、駆け上がってくる羞恥心と早鐘を打つ心臓の音とともに、サンクレッドの一挙一動を見守ることしかできなかった。
「な、何やってるの!? 恥ずかしいから、やめっ」
「やめるも何も、お前が言ったんだぞ? ――舐めときゃ治るってな」
サンクレッドはそう言うと、わたしの足の傷をぺろりと舐めた。
ひゅ、と息を呑んで固まるわたしをじっと見つめて、サンクレッドはふっと目元を緩ませたが、すぐにわたしの右足へと視線を落とす。
そして、あろうことかまたわたしの右足にゆっくりと舌を這わせてくる。
「――っ」
息を詰めるわたしの目の前で、サンクレッドはわたしの右足の小さな傷ひとつひとつに唇を落とし、跡をなぞるように舐め上げていく。
あたたかくて濡れた舌が触れるたび、くすぐったいようなぞわぞわとした感覚が身体全体に巡って落ち着かない。柔らかな唇と交互に触れる舌の感触に、頭がどうにかなってしまいそうだ。
サンクレッドはいったい何がしたいのだろう。
この顔から火が出そうなほど恥ずかしい行動がわたしの言葉を真に受けた結果だというのなら、今すぐやめてほしいのに、わたしはどうしても静止の言葉をかけることができなかった。
合間にわたしを見つめる、その瞳の熱が。
わずかにわたしの足にかかる、吐息が。
わたしの思考を少しずつ奪っていく。
治療のため、治療のため――茹で上がりそうなほど煮立った頭で何度もその言葉を反芻する。
ものすごく恥ずかしいのに、少しも嫌だと思わない自分がいるのが不思議だった。その理由を考えたところで、今のわたしの頭では何の答えにも辿り着かなかったけれど。
「……こんなもんか」
永遠にも思えるような時間は、唐突に終わりを迎えた。
ちゅ、とひときわ大きなリップ音ののち、サンクレッドはわたしの右足を優しく地面に下ろしてくれる。ようやく解放された右足だというのに、動かす気力もない。
力が完全に抜け切ったままぼんやりとサンクレッドの顔を見つめるわたしに、彼は苦笑を浮かべた。
「少し、やりすぎたか」
大丈夫か、とサンクレッドが声をかけてくれるが、まったく大丈夫ではない。
混乱した頭のまま、それでもなんてことをしてくれたのだとでも言うように軽く睨みつけてみると、サンクレッドはわたしの頭にぽんと手の平を置いた。
「意地悪だったな、ごめんな」
ゆっくりと髪を撫ぜられる感触に、少しずつ緊張が解れていく。
治療方法の是非はひとまず置いておいても、心配してくれた気持ちはわからないでもないし、謝罪してほしいわけでもない。
迷いながらも、わたしはサンクレッドに向けて口を開いた。
「……別に、謝らなくてもいいよ。恥ずかしかったけど、嫌ではなかったから」
ぼそぼそと小さな声でそう言うと、サンクレッドは一瞬虚を突かれたような表情を浮かべたが、すぐに蕩けるような優しい笑みに変わる。
わたしの頭を撫でていた手が、そのまま頬へと移動して、サンクレッドの顔がぐっと近づいた。
「そういうこと言うと、期待するぞ」
掠れたような、吐息混じりの声は、わずかに震えていて。
わたしを見下ろすサンクレッドの瞳は強い光をたたえて、何かを堪えるようにゆらゆらと揺れていた。
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続いたら年齢制限ルートになるので続きません()
※本編を読んでいただいた方向けの内容ですので一読推奨ですが、サンクレッドとの甘いシーンだけを楽しむぶんには問題ないので、そのままどうぞ。
※途中分岐なので、とあるシーンからのぶつ切りです。唐突に始まって唐突に終わります。
「その視線は雄弁に愛を語る〜IFルート」
「悪い、遅くなった」
波打ち際に座り、ぼんやりと海を眺めていると、サンクレッドが後ろから声をかけてきた。
「あいつは黒渦団に引き渡してきたぞ」
あの後、サンクレッドは男を拘束したまま黒渦団の軍令部へと赴き、身柄を引き渡してきたらしい。一応サンクレッドも話を聞かれたらしいが、暁に所属している者が泥棒を捕まえたということで、いたく感謝されて終わったのだという。
わたしはサンクレッドに「ありがとう、おつかれさま」と労いの言葉をかけてから、結果的に足手まといになってしまったことを謝罪した。
「ごめんね、足手まといになっちゃった」
「謝る必要がどこにある。悪いのはナイフを投げたあいつだ。……足は大丈夫か?」
「んー……少し、痛いかな。でも歩けないほどではないよ」
立ち上がろうと足に力を入れた途端、右足に痛みが走り、思わず顔をしかめてしまう。
サンクレッドは歩き出そうとするわたしの肩を掴んでやんわり制止すると、有無を言わさずその場に座らされる。
「無理はするな。手当てしてやるから、傷を見せろ」
「えっ、でも、歩けないほどじゃ」
「いいから」
強めの口調で諭され、わたしはしぶしぶ口をつぐんで靴を脱いだ。
傷の状態は最初に走りながら見た時と変わらないが止血はされていて、ナイフが掠った場所に波打つようなズキズキとした痛みが走る。
サンクレッドは一瞬眉をひそめたけれど、外套のポケットから携帯用の薬や包帯を取り出して、素早く一通りの処置を行っていく。わたしはその手際の良さに感心するばかりだ。
「すごい、上手だね」
「これくらいできないと諜報なんてやってられないからな。今回はほぼ素人同然の輩だったせいか、毒も塗られていなかったのが幸いだったよ」
サンクレッドの言葉通りの的確な処置が施されたおかげで、右足の痛みは先程よりも良くなったような気がする。
わたしはサンクレッドに礼を言ってから、もう大丈夫だというように立ち上がろうとしたが、またもや肩を掴んで阻止されてしまう。
「まだ手当ては終わっていないぞ」
「え? 他に痛いところはないはずだけど……」
「かすり傷のようだが、いくつか傷ができている」
サンクレッドの視線の先を追ってみると、包帯が巻かれた場所から少しずれたところに、複数の小さな傷ができていた。そっと自分で触れてみたがあまり痛みはなく、出血もない。
盗みを働いた男を追走している最中、自分でも気付かないうちに傷を作ってしまったのだろうか。いずれにせよ、この程度ならば怪我のうちにも入らない。
「これくらいすぐ治るから大丈夫だよ」
「跡が残っても困るだろう。薬くらいは塗っておいてもいいんじゃないか?」
「ううん、平気だよ。この程度舐めとけば治るって」
これ以上サンクレッドの手を煩わせたくなくて、おどけたように肩をすくめてみせる。
「……なるほど。舐めときゃ治る、ね」
口の中で転がすようにわたしの言葉を反芻してから、サンクレッドが微笑んだ。
わたしが適当に口にしたのは、冗談にもならない冗談。心配してくれるサンクレッドを安心させるための、嘘にもならない小さな嘘。
――それが、わたしを心の底から後悔させることになるなんて、気づきもせずに。
「――他でもない、お前自身がそう望むなら俺はかまわないけどな」
わたしの右足を、サンクレッドは壊れ物に触れるかのような優しい手つきでゆっくりと持ち上げた。そのまま先程の手当の時よりも少し高い位置に固定されてしまったため、座っているのがきつくなってしまい、後方に倒れ込むような形で体勢を崩す。
はたから見れば、サンクレッドに右足を差し出しているような妙に恥ずかしい体勢になってしまっている気がする。
目立つところに一人で座っていたくなくて、人通りが少ない場所を探して待っていたたのが幸いしてか、今も周囲に人の姿はない。この格好を誰かに見られたら恥ずかしいどころの騒ぎではなかったから、それだけが救いだった。
「サンクレッド? あの、そろそろ下ろしてくれると」
助かるなあ――その台詞は、発されることなくわたしの口の中で消えていく。
何故か、と問うべくもない。
――サンクレッドが、わたしの右足に唇で触れてきたからだ。
「ちょ、ちょっと!」
半ば悲鳴のような声を上げるが、サンクレッドはわたしにかまわず右足に口づけを落とすのを止めようとはしなかった。
ちゅ、と音を立て、わたしの足にできた複数の傷跡をなぞるように順番に唇で触れていく。
わたしは真っ赤に染まる頬を隠そうともせず、駆け上がってくる羞恥心と早鐘を打つ心臓の音とともに、サンクレッドの一挙一動を見守ることしかできなかった。
「な、何やってるの!? 恥ずかしいから、やめっ」
「やめるも何も、お前が言ったんだぞ? ――舐めときゃ治るってな」
サンクレッドはそう言うと、わたしの足の傷をぺろりと舐めた。
ひゅ、と息を呑んで固まるわたしをじっと見つめて、サンクレッドはふっと目元を緩ませたが、すぐにわたしの右足へと視線を落とす。
そして、あろうことかまたわたしの右足にゆっくりと舌を這わせてくる。
「――っ」
息を詰めるわたしの目の前で、サンクレッドはわたしの右足の小さな傷ひとつひとつに唇を落とし、跡をなぞるように舐め上げていく。
あたたかくて濡れた舌が触れるたび、くすぐったいようなぞわぞわとした感覚が身体全体に巡って落ち着かない。柔らかな唇と交互に触れる舌の感触に、頭がどうにかなってしまいそうだ。
サンクレッドはいったい何がしたいのだろう。
この顔から火が出そうなほど恥ずかしい行動がわたしの言葉を真に受けた結果だというのなら、今すぐやめてほしいのに、わたしはどうしても静止の言葉をかけることができなかった。
合間にわたしを見つめる、その瞳の熱が。
わずかにわたしの足にかかる、吐息が。
わたしの思考を少しずつ奪っていく。
治療のため、治療のため――茹で上がりそうなほど煮立った頭で何度もその言葉を反芻する。
ものすごく恥ずかしいのに、少しも嫌だと思わない自分がいるのが不思議だった。その理由を考えたところで、今のわたしの頭では何の答えにも辿り着かなかったけれど。
「……こんなもんか」
永遠にも思えるような時間は、唐突に終わりを迎えた。
ちゅ、とひときわ大きなリップ音ののち、サンクレッドはわたしの右足を優しく地面に下ろしてくれる。ようやく解放された右足だというのに、動かす気力もない。
力が完全に抜け切ったままぼんやりとサンクレッドの顔を見つめるわたしに、彼は苦笑を浮かべた。
「少し、やりすぎたか」
大丈夫か、とサンクレッドが声をかけてくれるが、まったく大丈夫ではない。
混乱した頭のまま、それでもなんてことをしてくれたのだとでも言うように軽く睨みつけてみると、サンクレッドはわたしの頭にぽんと手の平を置いた。
「意地悪だったな、ごめんな」
ゆっくりと髪を撫ぜられる感触に、少しずつ緊張が解れていく。
治療方法の是非はひとまず置いておいても、心配してくれた気持ちはわからないでもないし、謝罪してほしいわけでもない。
迷いながらも、わたしはサンクレッドに向けて口を開いた。
「……別に、謝らなくてもいいよ。恥ずかしかったけど、嫌ではなかったから」
ぼそぼそと小さな声でそう言うと、サンクレッドは一瞬虚を突かれたような表情を浮かべたが、すぐに蕩けるような優しい笑みに変わる。
わたしの頭を撫でていた手が、そのまま頬へと移動して、サンクレッドの顔がぐっと近づいた。
「そういうこと言うと、期待するぞ」
掠れたような、吐息混じりの声は、わずかに震えていて。
わたしを見下ろすサンクレッドの瞳は強い光をたたえて、何かを堪えるようにゆらゆらと揺れていた。
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