第1章 ポートマフィアの侍、樋口一葉
一人と一匹が激突しようとした、その瞬間
「はぁーい、そこまでー」
間延びした声とともに、一人の男が二人の間へ割って入った
「!」
男は何気なく虎へ手を触れる。
次の瞬間、眩い光とともに巨大な白虎の姿は掻き消え、そこには気を失った敦だけが倒れていた。
「・・・え?」
触れただけで異能力が解除された状況に思わず目を瞬かせる
おそらくこれは
異能力を無効化する異能力なのだろう
その男は飄々とした笑みを浮かべたまま、こちらへ視線を向けてきた
「いやぁ、危ない危ない」
その様子を見て、私は静かにポケットへ手を入れる
指先に触れた小さな機械を取り出した
そこにあるのは小さな盗聴器
彼が手を取ったときに入れたものだ
私はそれを、コンクリートへ叩きつけ
パキッ。
さらに足で思い切り踏み潰した
男は何も言わず、意味深な笑みを浮かべてこちらを見ている
・・・なんか腹立つな
「太宰さん」
隊長が静かに口を開く
「今回は引きましょう。しかし、人虎の首は必ず我々マフィアが頂く」
「なんで?」
「簡単なこと。その人虎には闇市で
七十億の懸賞金が懸かっている」
隊長は淡々と告げる
こんな簡単に情報を教えていいのか?
「裏社会を牛耳って余りある額だ」
「へぇ。それは景気の良い話だねぇ」
(いやいや。どう考えても胡散臭いでしょ、その懸賞金
七十億って。どこの詐欺広告だよ)
とりあえず心の中だけで突っ込む
哀れなことに上の命令に従うしかないのが社会人だ
「探偵社には孰れまた伺います
その時、素直に七十億を渡すなら善し。渡さぬなら・・・」
「戦争かい?探偵社と?良いねぇ、元気で
やってみ給えよ。やれるものなら」
おぉ、なんかちょっとカッコいい・・・
でもいいのか?
「いいんですかー?
我々ポートマフィアは巨大な組織
零細探偵社なんて、一捻りですよ」
「知ってるよ。その位」
私の素朴な疑問に
彼ははあっさりと言い切った
隊長は静かに目を細める
「然り。外の誰より
貴方はそれをしっちしている」
一拍置いて
「元ポマフィアの太宰さん」
・・・・・・
「ええええええええっ!?」
思わず素っ頓狂な声が飛び出した。
「元マフィア!? この人が!?」
「うるさい」
「そうだよー。元ポートマフィアの
太宰治です」
「え”ぇぇぇぇぇ!?」
本日二度目の叫び
見えねぇ、全然見えねぇ
ただの手癖の悪いイケメンと思ってた
私はもう一度だけ彼・・・
太宰治を見た
相変わらず飄々と笑っているだけだ
「それでは失礼致します」
隊長は一礼をして去って行った
「えぇぇ・・・」
マジで去るのか
いいのかコレで?
疑問に思いながらも
隊長の後をついていった
元マフィアかぁ
あの子ならあの人のこと知ってるかな?
帰ったら聞いてみよう
そんなことを考えながら
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