第1章 ポートマフィアの侍、樋口一葉
夢を見た
遥か遠い昔の夢を
苦しくて、辛くて
それでも、笑っていた
それでも、幸せだった
――あの頃の夢を。
ドサッ!
「ぐふぅっ!」
腹に鈍い衝撃が走り、思わず変な声が漏れる。
「何を寝ている。行くぞ、樋口」
低く冷たい声。
私の腹の上には、様々な武器が詰め込まれた鞄が鎮座していた。
「・・・うぇー」
夢から現実へ強制送還
犯人はもちろん、この人
ポートマフィア遊撃隊隊長
芥川龍之介
私は鞄を持ち上げようとして、その重さに顔をしかめた
(つーかこれ・・・重っっ!!)
「隊長ぉ・・・これ重いっスよ
置いてっていいですか?」
「駄目だ」
即答だった
「武装探偵社へ赴く際
木刀では目立つ。警棒も入れてある
それらで何とかしろ」
「はぁーい」
やる気ゼロの返事に
一瞬だけ隊長に睨まれる
(やべ)
しかし幸運なことに、ちょうど目の前は分かれ道だった。
「私は別行動だ」
「了解でーす」
説教を受けることなく解散、ラッキー
隊長はこの後、街中に設置された軍警の爆弾の件で動くらしい
(いいなぁ。そっちの方が楽そう)
私の仕事はというと
武装探偵社へ近付き、相手を引き付ける囮役
要するに、面倒くさい仕事だ
(ブラック企業かよ・・・いや、マフィアだからブラックで当然か)
心の中でぼやきながら、スマートフォンを取り出す
地図アプリを起動し、武装探偵社までの道順を確認
「えーっと・・・こっちか」
歩き始めて数分
ビルが立ち並ぶ見慣れない街並みを眺めながら、私はふと立ち止まる
「……やっっべ」
画面と周囲を何度も見比べる
「迷子になりそう」
the、方向音痴
それだけは前世から何一つ改善されていなかった
「あいつなら『勘で行け』とか言うんだろうなぁ・・・」
私は小さくため息をつくと、再びスマホとにらめっこを始めた
「・・・とりあえず、人に道聞こ」
今日もまた
ポートマフィア遊撃隊副隊長・樋口一葉の受難は、こんなところから始まるのだった
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