純愛
ヒロイン名前設定
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「体育祭楽しみだね〜」
「俺リレーやりたいんだよなー」
莉子とクラウスくんが、リビングで体育祭の話をしている。
あれからすぐに、クラウスくんもうちにやって来て、みんなで夕飯を食べることになった。
私はキッチンで、夕飯の準備。
クラピカは…
「……………」
う…(汗
キッチンのダイニングテーブルに座り、いつも持ち歩いている本を読んでいた。
すぐ後ろに、クラピカがいる…
それだけで、包丁を持つ手が震えてしまう。
”うちで夕飯食べてかない?”
とっさに出た言葉…
私が男子にあんなこと言うなんて、自分でも信じられない…
「お姉ちゃーん、何か手伝う?」
リビングにいる莉子が、私を呼ぶ。
『いいの?』
「うん!手伝うよー」
莉子が私の隣にやって来る。
『じゃあ、トマト切って』
「はーい」
莉子は私の隣で、手慣れた手つきでトマトを切り始めた。
「私も何か手伝える事あるか?」
「…俺も」
振り返ると、いつの間にかクラウスくんもクラピカの隣に座っていて、兄弟して同じことを言っていた。
『あーないから、ゆっくりしてて』
これはお礼なんだから、手伝わしちゃ意味なし。
「今日は親仕事なのか?」
クラウスくんが、家中を見渡して言った。
「うちの親、サロンのお店の経営者なの。離婚して慰謝料もらって、そのお金でお店開いたんだよ?子を持つ親として、ありえなくない?(汗」
莉子が、呆れながら言った。
「だけど、そのサロンは大人気で…今じゃちょっとしたセレブだよ、あの人…(汗)第二の人生で、私達子どもを田舎にほったらかしにして、自分は東京のマンション借りて住んでるの。
ま、私達としては気楽だけどね~小うるさい親がいない分、好き勝手出来るし、お小遣いは結構貰えるし♪」
…………。
莉子はケラケラと笑い、軽い口調でそう言った。
今、莉子が言ったことは全て事実。
好き勝手やっている母は、仕送りだけして、ほぼ東京に行ってしまっている。
子どもを置いて、母親は東京で働いている…なんて言えないので、周りには出張だと嘘をついていた。
ま、莉子の言う通り…親が居ない方が楽なのは確か。
自由に生活できるしね…
「なーんだ。うちとあんまり変わんねぇじゃん」
少し安心したように言う、クラウスくん。
変わんないって…?
「俺んちも母子家庭で、お袋は地元の海外でファッションの仕事してるから家に居ない。水上んちと一緒で、仕送りして貰って兄ちゃんと二人暮らしだよ」
そうだったの?
クラピカの家も…うちと同じ?
「お袋が海外に行き始めたのは最近で、さすがに心配だからって親戚が近くに住んでるこの街に引っ越してきたんだ」
そっか。
それで東京から、ちょっと田舎の方に引っ越してきたんだね…
クラウスくんの隣にいるクラピカを見ると、どうでもよさそうな顔をして頬杖をついて本を読んでいる。
「お袋も親父が死んでからしばらくは大変だったけど、一年経ってから仕事人間になった気がする。お前が言ったように、第二の人生ってやつ?自分のために楽しんで生きてるって感じ」
「わかるわかる!ま、お母さんの人生だから好きにすればいいよー」
「確かに~」
ぶっ飛んだ母親を持つと、子どもは大人の考えになるんだな(汗
妙に冷めてるっていうか…
『さ、ご飯だよ』
テーブルに作ったおかずを並べ、箸やグラスも用意する。
『莉子、味噌汁よそってくれる?』
「はいはーい」
私は、お茶碗にご飯を盛った。
急遽、クラピカ兄弟をうちに呼ぶことになったから…ご飯もう一回炊き直しなんだよね…。
きっと、男の子だからたくさん食べるだろうから…。
『クラピカ達は、ご飯の量はこれぐらいでいい?…………え?』
お茶碗に盛ったご飯の量を見てもらおうと、クラピカ達の方へ目をやると…
クラピカ兄弟は、テーブルに並べられたおかずを見て、何やら感動している様子。
『ど、どうしたの?』
「お兄ちゃん!これがちゃんとした飯なんだよな!?」
「そうだ、よく目に焼き付けろ」
は?
目に焼き付けろって…
「こんな美味そうな晩飯、初めて見た!」
「そうだな」
『え?』
美味そうって…
唐揚げとサラダときんぴらごぼうって感じで、普通だけど?
「お袋は料理全然ダメだったから、家庭料理で美味いやつとか食ったことない。お兄ちゃんはこっちに引っ越してきてから作り始めたけど、お袋よりは美味いよ」
ふーん…
お母さん、そんなに苦手なんだ。
けど、うちのお母さんだって料理上手な方じゃないしな…
本当、似た者親子だね。
「いただきまーす♪」
「頂きます」
箸をきれいに持って、手を合わせるクラピカ。
「兄ちゃん!米が立ってる!びちゃびちゃじゃないよ!!」
「…本当だ」
お茶碗のご飯を見て、また感動するクラピカ兄弟。
『は、早く食べなよ…』
「フフッ」
私と莉子は、こんな風にみんなでご飯を食べることは、ほぼ初めてだったので…
こんな風に、作った料理を褒められるのはすごく新鮮なことだった。
「うめー!兄ちゃん!これ、この前の定食屋で食ったやつよりうめー!」
唐揚げを食べて、クラウスくんがそう言って叫んだ。
クラウス君は、思ったことを素直に口に出すタイプなんだな…
それに比べてクラピカは…
「……………」
黙々と、私のご飯を食べている。
箸のスピードがかなり早い…
美味しいって、思ってくれてるってことかな…
クラウスくんと違って、クラピカは口数が少ないから、分かりづらいよ。
だけど、クラピカ兄弟はおかずは全て食べてくれた。
少し炊き過ぎたと思ったご飯も、綺麗さっぱりなくなった。
「次右!」
「あ!ボスが~」
夕食後。
片づけを終えて、私達はまったりモード。
莉子とクラウスくんはリビングでゲーム。
私とクラピカは…
『…………』
「…………」
リビングのソファーに座って、莉子とクラウスくんがやってるゲームを見ている。
隣のおばちゃんから貰った苺をデザートに出し、それをつまむことしかしてない。
クラピカに話しかける勇気が、ないんだ…
『あ、ジュースおかわりいる?』
莉子とクラウスくんのグラスのジュースが、空っぽになっているのに気がついた。
「あ、もらうー」
「お願いしまーす」
私は立ち上がり、クラピカの前を通ってキッチンへ向かった。
そして、冷蔵庫からペットボトルのジュースを出す。
クラピカと私…
全く盛り上がらないのは、何故?
委員会やってる時は、結構話せるのに…
なんで一歩外に出るとこーなの?
「あ、電話がかかってきたからちょっと外行って来まーす」
ゲームをやる手を止め、クラウスくんがスマホを持って家を出て行った。
「私ちょっとトイレ~」
莉子はトイレに行った。
え、急にクラピカと二人きり…
どうしよ…
グラスにジュースで注ぐ手が、ブルブルと震えてしまう。
「…ヅラにゃんこって、これの事か?」
『ギャーーーーーー!』
いつの間にか、私の隣にいるクラピカ。
ビックリして大声をあげ、私は注いでいたジュースをこぼしてしまった。
『び、びっくりした…』
「そそっかしいな」
『誰のせいよっ!』
こぼれたジュースを、布巾で拭く私。
「…で、これがそのヅラにゃんこか?」
クラピカは冷蔵庫に貼ってある、私が集めているあのパンのシールを貼る用紙を指差した。
用紙には、ヅラにゃんこの絵が描いてあった。
『そう、それそれ!』
「…お前…本当にこれが欲しいのか?」
『ほ、欲しいよ』
ここまで集めたんだから、絶対欲しい!
あと3枚だし。
「…そうか。では、これはどういう意味だ?」
『え?』
クラピカが私に見せてきたものは、スマホの画面。
画面には、私とのLINEのトークの内容が出ていた。
『こ、これ…』
「この前、お前が送って来たやつだ。「がんばって」とはどういう意味だ?」
画面には、私が間違えて送ったヅラにゃんこが「がんばって」と言っているスタンプが出ていた。
あぁ…
スルーされたと思ってたけど、やっぱり突っ込まれた…
『お、お礼を言いたかっただけだよ』
「お礼…?」
『そう…スーパーの帰りに送ってくれたでしょ?でも何送っていいか分からなくて、迷ってたら変なスタンプを送信しちゃった…』
「…………」
クラピカが真顔になる。
そして…
「………ダサいな」
っ!?
そう言って、ぷっと笑った。
『どうせダサいですよっ…』
そそっかしくて、ダサい女ですよ私は!
「いきなり「がんばれ」って、送られる方の気持ちにもなってみろ」
『そーだよね、ごめん』
あ、謝っちゃった。
なんか悔しい…
「それともう一つ、聞きたいことがあるんだが…」
『………え?』
もう一つ?
「一昨日のスーパーの態度…あれは何だ?」
ビクッ。
急に怖い顔をするクラピカ。
『な、なにって…』
「同じ委員会の仲間としては、冷たい態度だったが」
『な、仲間って…あんた………ぇ!』
言い返そうと思っていたら、クラピカが私の耳に口を近づけて来た。
そして…
「…結構傷ついたぞ」
!!!!
そう、耳元で呟いた。
「お姉ちゃーん!トイレットペーパー切れてるよー!!」
!!
すると、莉子がトイレから戻って来た。
私はとっさにクラピカから離れ、用もないのに流し台の水を流して、洗い物をしてるフリをする。
クラピカの息が…耳にかかった…/////
心臓が飛び出そうなくらい、ドキドキが止まらない…
「ただいまー」
クラウスくんも、電話を終え戻って来たみたい。
「クラウス、そろそろ帰るぞ」
クラピカがキッチンを離れ、クラウスに近づいた。
「えー!ジュースまだ飲んでない…」
「なら飲んでいけ(汗」
キッチンに入って来て、私がついだジュースを飲むクラウスくん。
「私もー」
莉子もキッチンにやって来て、クラウスくんとジュースを飲み始めた。
クラピカは、莉子達が遊んでたゲーム機を片づけている。
あ、そうだ。
私は2階へ駆け上がり、自分の部屋の机の上に置いていた小さいノートを手に取った。
そしてまた、1階のリビングへ…
『…クラピカ』
「…!」
ゲーム機を片付けているクラピカに近づき、そのノートを差し出す私。
『…簡単なレシピ書いといた。雑誌で見つけた記事とかも…良かったら、参考にしてみて…』
この前のLINEのやり取りで、クラピカからレシピを教えてほしいと言われたので…
私は早速、ノートにちょっとしたレシピブックを作ってみた。
「…すまない、感謝する。早速明日作ってみる」
…!/////
優しい笑みを浮かべるクラピカ。
また…あの笑顔で…
私…
クラピカが笑った顔、好きかも…////
「じゃあね~明日学校でねー!」
「おう!飯ごちそうさまー」
クラピカとクラウスくんを玄関先で見送る、私と莉子。
莉子とクラウスくんは、お互い笑顔で手を振っている。
私とクラピカは…
「…………」
『…………』
お互いただ見つめる…
ただただ、見つめる…
そして私達に背を向けて、クラピカとクラウスくんは帰って行った。
帰っちゃった…
うちでご飯食べていったのに、少ししか話さなかったな…
ーーー「…結構傷ついたぞ」ーーー
……/////
さっき、クラピカから言われた言葉を思い出して、カァっと顔が熱くなった。
あれ、どういう意味だろう…
別に深い意味はないのは分かってるけど…。
でも…
耳元でささやかれた時の、クラピカの息…まだ耳に残ってる。
耳を指で触ると、胸がキューっと締め付けられた。
「…で、お兄さんとはなんか進展あった?」
隣にいる莉子が、軽い口調でそう言ってきた。
『あああ、あんたなに言ってんのっっ!?』
し、進展って…
「とぼけないでよね~お姉ちゃん見てれば、クラウスくんのお兄さんとどんな関係なのかくらい分かるよ~だから、二人っきりにしてあげたのに…♡」
『えっ…もしかしてあんた…!さっき、わざと二人っきりにしたの!?』
ってことは、クラウスくんもグル!?
電話するって言って外に行ったのは、演技だったってこと!?
「だって、お姉ちゃんがお兄さんと話したそうだったから…。クラウスくんに耳打ちで提案したら、協力してくれたの!」
『…………』
私と莉子は、話ながら家の中に入る。
「…それで?お姉ちゃんとお兄さんは、どんな関係??」
『あ、お風呂入ってこよーっ(汗』
「逃げるなー待てえい!」
バスルームに逃げる私を、莉子が追いかけて来た。
そして一緒にお風呂に入ることになり、莉子にしつこく追及された私は、降参してクラピカとの出会いから、今日までの事を話した。
「なにそれ~!?すごいロマンチック~♡」
『………/////』
全て話すと、莉子はテンションが上がり、はしゃぎ始めた。
「委員会が一緒で、家が近くて、家庭の事情も同じだなんてすごーい!!しかも、お互いの下の妹弟は、同じ学校だよ~!?」
『…ま、まあね』
ロマンチックと言われれば、そうなるのかなぁ…
お互い同じことが多いし。
「でもショックだなー。何でも話してくれたお姉ちゃんが、私に一言も話してくれないなんて…」
莉子は不満そうに、口を尖らせた。
『ご、ごめん!恥ずかしくてさ…』
いくら妹の莉子にでも、話すのは恥ずかしかった…
「でもお姉ちゃんが、あんな異性の友達作るなんて珍しいよね?どっちかっていうと、ああゆうクールタイプの男の子苦手じゃん」
莉子の言ってることは当たってる…
確かに私は、今まであんまり男に興味がなかった。
中学時代の、あの友達グループもそんな感じで、結構男っぽい付き合いだったから…私は好きだったんだよなぁ。
ま、ダメになっちゃったけどね…。
「でも嫉妬しちゃうなぁークラウスくんのお兄さんに、お姉ちゃん取られちゃったー」
『は、はぁ!?』
取られちゃった?
「でもお兄さんみたいな人だったら、私も賛成するよ?超カッコイイし、いい人だし♡」
『ちょ、ちょっと待って!!私とあいつとの関係、なんか勘違いしてない?』
「え?付き合ってるんでしょ?」
『付き合ってなーーーーーいっ!』
何でそうなるの!?
「えー!!私はてっきり、付き合ってるのかと…」
『そんなわけないでしょ…』
「でも、好きなんでしょ?」
『す、好きじゃないよっっ!!』
なんで、そんなことになってるわけ!?
「ふーん…でも、お兄さんはお姉ちゃんのこと好きだと思うけどなぁ」
『……えっ、なんで??』
なんでそんなこと…
まだ知り合って、間もないのに…
「だって~他校の男子に絡まれて、お兄さんに助けてもらったとき、家まで送ってくれたでしょ?あのとき、ずっとお姉ちゃんの話してたし…」
え…
『ど、どんな!?』
莉子に顔をぐっと近づける。
「”水上って、昔からそそっかしいのか?”とか…”水上を見ていると面白い”とか…」
なにそれ。
私の話って、悪口ですか?
莉子がクラピカと話した会話の一部を、私に話してくれた。
ーーー…
「お姉ちゃん、学校じゃ大人しくないですか?姿消してるっていうか…」
「水上は一見ツンとしてクールに見えるが、本当は感受性豊かだな。表情に直ぐ現れる。分かりやすいと言うべきか…」
「そうなんです!お姉ちゃん、実は超分かりやすいんですよね〜!!(笑」
「授業中、何を考えているのかは知らないが、口を開けて色んな表情をしている」
「あはは、想像つく♪」
ーーー…
……なによ、あんた達…
影で、そんな会話してた訳ー!?(汗
「お兄さん、お姉ちゃんの事よく見てるんだね!好きじゃなかったら、そんなことしなくない?」
『そういう事じゃないって!あいつこっちに引っ越してきて、まだ私しか知り合いがいないからだよ!』
私の事、「委員会の仲間」だって言ってたし…
「ふぅ~」
莉子は深~いため息をついて、湯船のお湯を肩にかけた。
『なによその、ふぅってのはっっ!』
そんなわけない。
クラピカと私は…委員会が同じなだけだよ。
翌日。
ふあ…眠い。
昨日、あんまり眠れなかったような…
莉子が変なこと言うからだよ。
学校のある最寄り駅に着き、電車を降りた。
「…水上」
『わーーーーーっっっ!!』
改札に向かって歩いていると、突然耳元で誰かにささやかれた。
「…朝から元気だな」
『クラピカ…同じ電車だったんだ…』
振り返ると、クラピカが私を見下ろしていた。
『び、びっくりした~(汗)驚かさないでよねっ』
「別に驚かせるつもりではなかったんだが…」
そう言って、クラピカは私を通り越して歩いていった。
なんだ…普通にしてる。
昨日…あんなことあったし、莉子にも変なこと言われたから…
ーーー「…結構傷ついたぞ」ーーー
また…昨日クラピカに言われたことを思いだし、恥ずかしくなってしまう私。
「何をしている、早く行くぞ」
っ!!
数メートル先で、クラピカがこっちを振り向き、私を呼んだ。
一緒に…行くってこと?
一瞬目をそらしたが、私は小走りでクラピカに近づいた。
そして、一緒に学校に向かった。
「昨日はご馳走様」
学校が見えて来た時、クラピカが歩きながらそう言った。
『そ、そんな…たいしたこと…』
「クラウスもお前に宜しくと言っていた」
『そう…』
まぁ、喜んでくれたのは良かったけど。
「それから、これもありがとう」
『あ…』
クラピカは昨日私があげた、小さいレシピノートを鞄の前ポケットから出した。
『…持ってきたの?』
「電車で読んでいた」
『作れそうなのあった?』
一応、初心者でも作れそうな簡単なレシピを選んだつもりなんだけど…
「……オムライスだろうか」
オムライスか~土定番だね(笑
でも、作れるようになったら便利だし、いいかもね。
「だが私は料理のセンスはないな。親の血を引いているだけはある…」
『練習すれば大丈夫だよ!』
お母さん、そんなに苦手なのか…
そんな会話をしながら、クラピカと私は学校へ向かった。
「やはり雑草生えてるな…」
裏庭に着き花壇を見ると、この前抜いたばかりなのに、もう雑草が生えていた。
花壇の手入れって大変なんだな…
この委員会になって、つくづく感じるよ。
鞄を置き、物置を開け軍手を取る私。
「水上…」
『今日は私が草むしりやるから、クラピカが水やりしてよ』
「水上…」
『何?』
片方の手に軍手をはめていると、クラピカが私の前に立ち、名前を呼んだ。
手元を見ていた視線を、ゆっくりとクラピカに移すと…
クラピカは、私を真顔で見下ろしていた。
な、なに…
クラピカに見つめられ、急に緊張してしまう。
そ…
えっ…
どうしたらいいのか分からずにいると、クラピカは私の頬を両手で掴んで、くいっと上に持ち上げた。
『ククク、クラピカ!?』
「…………」
なにこの体制…
まるで、これからキスするみたい…
「…目閉じるんだ」
『はぁ!?』
「早く…」
『っ~~~』
言われた通り、目閉じちゃった!!!
ペタッ
ぺた?
ペタペタ。
あれ?
目を閉じると、真っ暗の中…
顔に何かを貼られたような感覚が。
「昨日のお礼だ」
『えっ…』
目を開け、顔を触ると…
っ!!
頬に、なにか貼ってある…
それを指で剥がし、見ると…
『あ!パンのシール!!』
それは、私が集めているあのパンのシールだった。
そのシールは、反対側の頬に一枚と、おでこに一枚貼ってあった。
『3枚ある!これでお茶碗もらえる!!』
私のテンションは、一気に上がった。
「集めてると言ってたからな…」
『ありがとう!嬉しいっ!!』
ハッ…!
しまった…。
嬉しくて、つい普通に喜んじゃった。
こんなリアクションしたら、またバカにされる…
「そんな風に笑った顔、初めて見たな」
『え…』
てっきりからかわれると思ったのに、クラピカは私を見つめて優しく微笑んだ。
思ってたリアクションと違う。
どうして…?
『あ、そうだ!忘れないうちに渡しとくっ』
恥ずかしさを隠す為、私は話を変えた。
そして鞄から、ランチパックを出して、クラピカに差し出した。
『な、なんか大変そうだし…私のついでだし…良かったら食べて』
私が差し出したのは、お弁当。
今朝すっごーく迷ったけど、クラピカ用のお弁当を作った。
料理苦手そうだし、毎日コンビニじゃなんかかわいそうで…
でも、自分の作る”ついで”!
あくまでも”ついで”だから!!////
ただ、それだけ!!
「…これ、誰が作ったんだ?」
クラピカは、私からランチパックを受け取って言った。
『今日は私ですよっ!妹のじゃなくてごめんねー』
どうせ、私の作ったのは女子力低いですよ!
前に、妹が作ったおにぎりを食べるとき…
私が作ったんじゃないなら食べる~みたいなこと言ってたもんね!
「礼を言う、ありがとう」
『!!////』
そう言って、私の頭をポンッと撫でるクラピカ。
胸がドキッと鳴った。
あれ?
違ったよ…
今日は思ってることと、反対の事が起きるな…////
クラピカが、なんか素直だから…
ちょっと、やりにくい。
『…私もありがとう。これ』
指3本についているシールを、クラピカに見せて言う私。
だったら、私も素直にならなくちゃ…
いつもつんけんしてたら、かわいくないもん…
「さっきみたいに、笑って言ってくれないのか?」
『えっ…』
「笑った方が、可愛い」
『えぇっ…!////』
かわ…
かわかわかわ…いい!?
「ホース、水道にさしてくる…」
『う、うん…』
私に背を向けて、中庭の水道に行くクラピカ。
私…
莉子が言うように…
クラピカの事、気になってるのかなぁ…。
クラピカの背中を見て、そう思ったーーー…
next…