純愛 番外編
ヒロイン名前設定
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海旅行当日の朝。
リビングには旅行バッグが幾つかまとめて置いてある。
私と香奈江、莉子は準備万端でウキウキだった。
クラウスくんは私のお母さんに拉致されている(笑)
後はクラピカを待つだけ。
因みにこのことはまだクラピカは知らない。
内緒で驚かせようとクラピカお母さんからの命令で誰もこの事は伝えていなかった。
学校に向かう支度を済ませて制服姿で階段を下りて来たクラピカに、クラピカのお母さんが声をかけた。
「あ、お兄ちゃんやっと来た!じゃあそろそろ出発ね。クラピカも鞄を置いて出掛けるわよ」
楽しそうに話す母親にクラピカは目を見開く。
「出掛ける?何処へ」
「皆で一泊二日で海旅行に行くのよ」
「学校は?」
「もう連絡したわ。さぁ行くわよ!水着も用意してあるから」
そう言ってクラピカに男用の水着を見せる。
「おいっ!」
クラピカはその水着を奪い取った。
「全く、突然過ぎるだろう(汗)しかしクラウスは…」
その時、スマホに着信が入った。
着信:クラウス
「もしもし」
「兄ちゃん!?オレ拉致された!」
「来ないと弟がどうなっても知らないわよ~」
私のお母さんの声にクラピカは深いため息をついた。
ピンポーン
朝早くから突然ドアのインターフォンが鳴り、私は玄関モニターを見て答えた。
『はい、どちら様~?って、レオリオ!?』
「俺だ!!香奈江から聞いたぜ!!こんな物騒な世の中に女子だけで海はあぶねェ!だから俺も連れてってくれ!!」
そう必死に説得するレオリオ。
いや、クラピカもクラウスくんもいるけどね(汗)
こうして私達(莉子、クラピカ、クラウス、お母さん、クラピカのお母さん、香奈江、レオリオ)は海へ出発した。
交通は電車で乗り継いで2時間。
皆はウキウキしながら他愛のない話で盛り上がっている。
因みにクラピカは…静かに読書。
余り乗り気じゃなさそうなクラピカだけど、最高の旅行にするんだもんね。
クラピカの水着姿…
たーのーしーみー♥♥♥
もう想像しただけで鼻血が出ちゃいそう///
早く見たいなぁ~♪♪
はぁ、幸せ♥
そんなことを考えながら、待ちに待った海に到着した。
天気は快晴。
海は綺麗な青色に輝いている。
そして白い砂浜。
海だぁ~っ!!
海を見て一気にテンションが上がる私。
『クラピカ!海だよ海!!』
余りの嬉しさにクラピカの肩をバシバシ叩く私。
「見れば分かる。全く子供だな」
『何よー!せっかく海に来たんだから、もっとテンション上げないと!』
「お姉ちゃん!早く水着に着替えよー!」
『あ、うん!今行くー!!』
莉子に呼ばれて私達は海の近くの更衣室に向かった。
お母さんが買ってくれた水着を着て、前身鏡で何度もチェックする私。
なんか…清純すぎるかな。
でも可愛い♥
私が着ている水着は胸とお腹がちゃんと隠れて、下にひらひらが付いているスカイブルーのオシャレな水着だった。
ビキニじゃなくてホントよかった。
胸に自信がないし、クラピカにビキニ姿なんてとてもとても…///
更衣室から外に出ると、クラピカのお母さんが私を見て笑顔を浮かべて言った。
「あら、凛ちゃん可愛い~♥とっても素敵よ!!」
『あ、ありがとうございます///』
「ウチの娘はあんなビキニなんて大胆すぎるからね、高校生らしいでしょ♪どう凛、気に入った?」
お母さんに言われて私は素直に言った。
『うん、すごく気に入った♪』
すると、後ろから視線を感じ振り返ると…
『!!』
クラピカが水着姿で私を見つめていた。
ヤ、ヤバイ!!
クラピカの水着姿…カッコ良すぎて…
思わず鼻血出そう…♥♥♥(笑)
私はクラピカの元に近づいた。
『クラピカ、すっごくカッコイイよ!!』
「……あ、あぁ」
ん?
クラピカの様子がおかしい。
なんか顔が赤いような…?
するとクラピカは何も言わずにその場を後にした。
え、行っちゃった。
どこ行ったんだろう?
私なんか余計な事言ったかな?
「凛!すっごい似会ってるよ♪可愛い♥」
声をかけて来たのは水着に着替えてきた香奈江だった。
香奈江の水着も私と同じような水着で、白と桃色の可愛らしい色。
『香奈江こそ、めっちゃ可愛いよぉ~♥チョー似合ってる!!』
「ホント!?…あ」
香奈江の目が私の後ろに止まり、私は何?と後ろに振り向いた。
後ろにはパーカーを持ち、顔を赤くして横を向いているクラピカ。
持っているパーカーを私に差し出し…
「これを着ろ。女性が人前で肌を見せていいのは、お嫁に行く時だけだ」
そう言って恥ずかしそうに渡すクラピカ。
『あ…うん』
私は素直にパーカーを受け取った。
そんなこと言って、自分以外に私の水着見られたくないとか?
どうしよう…めっちゃ嬉しい♥
パーカーを着ると、クラピカは安心した表情を浮かべる。
「オイ!さっそく泳ぎに行くか!?って水上それなんだァ?」
レオリオが指したのは私のパーカー。
「周り見てみろ、皆ビキニの姉ちゃんなのにそんなん着て、色気がねーなァ!!」
『あ、これは!……』
チラッと隣にいるクラピカを見ると、曇った顔をしている。
『いーでしょ!私泳げないからどーせ海には入れないし。日焼け対策よ、日焼け対策っ!』
「ったく、何しに海に来たんだか…よし、香奈江泳ごーぜ!!」
「あ、うんっ」
レオリオは香奈江の手を引いて海に向かった。
海に来て2時間後。
皆は海を満喫している様子。
お母さんとクラピカのお母さんは砂に埋まってサングラスをかけている。
「喉乾いたわね…莉子~飲み物ちょうだーい」
「クラちゃん、私もー」
「「はいはい」」
莉子はお母さんにジュースを飲ませ、クラウスくんは自分のお母さんにスイカを食べさせている。
香奈江とレオリオはビーチバレーをしていた。
私とクラピカは…ビーチチェアーに座って、その光景を眺めていた。
『クラピカは泳ぎに行かないの?』
そう尋ねると
「泳ぐよりも眺める方が好きなのだよ」
そう言って海を眺めるクラピカ。
まぁクラピカが海を泳いでるイメージなんてないしな。
それに私も泳ぐより眺めてる方が好き。
「やはり海はいいな、つまらない悩みが洗い流されていくようだ。本当に来て良かった」
『え、クラピカ何か悩みあるの?』
首を傾げる私にクラピカは呆れたようにため息をつく。
「お前は能天気で何よりだな」
『え?』
それどーゆう意味よ。
「お姉ちゃん、あっちで一緒に泳ぎに行こう♪」
莉子が笑顔で話かけてきた。
『え、でも私泳げないし』
「あっち(海の家)で浮き輪買えばいーじゃん」
『浮き輪売ってるの?じゃあ行く!…クラピカは?』
そう言って財布を持って立ち上がると…
「いや、私は遠慮しておく。楽しんでこい」
軽く笑みを浮かべて本を読み始める。
クラピカの行動にちょっとムカッとくる私。
『もう~何しに海に来たか分かんないじゃん!ほら、行こっ!!』
私は無理矢理クラピカの腕を引いて連れ出した。
「分かった!だからそんなに引っ張るな…!」
「余り遠くに行っちゃダメよ~」
砂に埋まりながら言うお母さんに
『分かった~!』
そう言ってクラピカも連れて4人で海の家に向かった。
莉子とクラウスくんは手を繋いで楽しそうに他愛のない話をしている。
私とクラピカは手を繋いではいるものの…
沈黙が続いている。
せっかくの海まで沈黙だらけは絶対嫌。
どうにかして話をしようとする私をクラピカはチラリと見て
「アイス食べるか?」
と言い出す。
クラピカの視線の先にはアイスクリーム屋さん。
旗には『○○名物!!○○アイス』と書かれている。
『アイス!!食べてみよっ!ねー莉子、アイス食べなーい?』
莉子とクラウスは振り向いて、アイス!?っと一瞬目を輝かせるが…
「いいよ、後で食べるから。お姉ちゃん、先に二人で海に遊んでてもいい?」
『いいよ!浮き輪買ったら後で行くから』
「分かった~クラウス行こっ」
「あぁ」
そう言って莉子とクラウスくんは海へと歩き出した。
私とクラピカはアイスクリーム屋に行って、アイスを頼む。
私は店長のオススメとか言う、名物の○○アイスのいちご味を。
クラピカはメロン味を買った。
『クラピカの黄緑だね』
「メロンだからな」
そんな言葉にそりゃそうだ、なんて苦笑いしながら自分のアイスを一口食べる。
『…これめっちゃ美味しい!!』
や、正直地元のアイスと味は変わらない気がするけど、こうゆうところで買ってクラピカと食べているからかすごく美味しく感じた。
『クラピカのも美味しそう』
そう言うと…
「食べるか?」
と言いながら私の顔の目の前に黄緑のアイスが差し出される。
『食べていいの?』
そう言って見上げるがクラピカは私の方なんか見ていない。
海を眺めている。
でも確かにアイスは差し出されていた。
『いただきます』
小さく呟いて食べようとしたとき、気付いた。
…これって、間接キス?
キスは何度もしたことあるけど
なんか緊張する。
そんな私を怪訝そうに見ながら
「食べないのか?」
と聞いてくるクラピカに顔を赤くしてしまう。
『食べる!』
そう言いながら赤くなる顔を隠して、舌でアイスを絡めとる。
『…ん、美味しい』
さっきまでのテンションはどこへやら。
恥ずかしくてつい俯いてしまう。
「お前、その食べ方…」
『ん?』
「いや、何でもない。…私も貰っていいか?」
『うん、いいよ』
そう言って自分のアイスを差し出す私。
クラピカは私のいちご味のアイスにキスをするかのように口付け、食べる。
そんなクラピカの姿に一瞬目を奪われた。
…う、わ!!
なんかカッコイイ♥
そう思いながらアイスを食べ終える頃…
「ヤバい!あの人かなりタイプなんだけど」
近くで女の声が聞こえた。
ちらりと声の方を見てみれば…
ここら辺に住んでいるのか
ヤンキーやギャルが数人いる。
…なんか怖いなぁ。
そう思うのだが、クラピカはそんなの気にする様子もない。
「香奈江達、今頃何してるかなー」
そう呟くと、クラピカは一瞬怖い顔をした。
…え、怒った?
何故に!?
そう思いながらクラピカの方を見るが、私の方なんて見てもいない。
「何だ」
『あ、いや…』
…気のせい?
「凛、トイレは大丈夫か?」
クラピカの視線の先を見ればトイレがある。
クラピカはトイレに行くらしい。
『私もいく…じゃあ先に出たらここで待っててね』
と言って私達はトイレへと向かった。
『…せっかくの海なのに余りムードがないなぁ』
と鏡の前でため息。
髪の毛を手で整えていると…
「歩美ってばよくやるよねー」
「本当だよね!」
「あの積極的さは見習うとこあるよ」
なんてさっきのギャルの一部の子が数人入って来た。
…やだなぁ。
早く出よ。
「彼女いたみたいだけどさ、歩美可愛いし落ちるんじゃない?」
そんな言葉を聞きながら私はトイレを出て、待ち合わせの場所に向かう。
『…あ』
「へぇー!じゃあ地元どこなの?」
「……答える義務はない」
さっきクラピカをカッコイイと言っていたギャルにクラピカが話しかけられている。
逆ナンってやつ?
…クラピカカッコイイから絶対声かけられるよね。
「ハハックラピカくんってウケるね!!いいじゃん!どこ住んでるの?」
「…何故私の名前を」
「あっ私歩美ね!さっき一緒にいた子が言ってたじゃん?友達?」
歩美…さっきトイレで言われてた子…?
「いや、彼女だ」
「へぇ、なかなか可愛い子だったね」
なんて思ってもいないことを言ってる。
そんな様子を伺いながら彼氏がナンパされているところをこそこそ隠れて見ている自分が滑稽に思えてきた。
「そうだ。そろそろ彼女が戻って来るから外してくれないか」
とクールに冷たく言ったが逆効果で…
女の人は少し顔を赤くして
「めっちゃカッコイイ!!」
と騒ぐ。
クラピカは面倒くさそうな顔をしている。
私は今だ!
と思ってクラピカの元へ駆け寄ろうとした。
その時…
ゴツイ明らかのヤンキーの恐ろしい兄ちゃんが
「歩美、いつまでナンパしてんだよ。もう行くぞ」
と声をかける。
周りにはさっきのトイレにいたギャルやお仲間ヤンキーがいる。
歩美と呼ばれた子は…
「もうー!?分かったよ…じゃあね、クラピカくん♪」
と去って行く。
その人達が見えなくなった頃、クラピカがため息をついて呟いた。
「いつまで覗いているつもりだ」
あ、気付かれてた?
戸惑っていると…
「何故隠れる必要がある。いい加減出てきたらどうだ」
とクラピカが近づいて来る。
『えっ、ごめん』
私は隠れていた場所から姿を現す。
「行こう」
そう言って私と手を繋ぎ、歩き出すクラピカ。
『…さっきの子、可愛かったね』
つい思ったことを口に出してしまう。
「お前、まさか妬いているのか?」
『別に、妬いてなんか…ただ』
「ただ、何だ?」
私は俯いて手を引かれたまま、ずっと胸の内に閉まっていた想いを口にする。
『クラピカってどこに行ってもモテすぎるから、なんか嫌だ…』
すると、クラピカは立ち止まる。
え?
私はクラピカを見上げると、私を見つめて…
「お前は私を信用してないのか?」
『信用してないわけじゃないけど…』
「私はお前以外には興味がない。だから余計な心配はするな」
そう言って、優しく私の頭を撫でるクラピカ。
思わずドキッとして顔を赤くしてしまう。
『うん…』
その時…
「よォ~お二人さん!!ラブラブだな~!!」
「凛ー!」
後ろから声をかけられて、振り返ると…
レオリオと香奈江がいた。
『どうしたの、二人とも』
「いや、ちょっと喉が乾いちまってな~。クラピカ、ちと茶でも飲まねーか?」
「あぁ」
レオリオがクラピカを誘い、次は香奈江が口を開く。
「凛、全然海触ってないでしょ?一緒に海いこっ」
『うん!行く行く♪あ…クラピカ、ちょっと香奈江と海に行ってくるね!』
「分かった、気をつけるんだぞ」
『大丈夫だって!じゃあねっ』
そう言ってクラピカ達と別れた後、私は海の家で空気が入っている浮き輪を購入し、香奈江と海で遊んだ。
.
クラピカside
凛の後ろ姿を見つめた。
本当に大丈夫だろうか。
凛は可愛いから心配だ。
ナンパなどされないだろうか?
色々と気にしてしまう私だが、レオリオと海の家で炭酸を飲んで休憩した。
「いや~やっぱ夏は海だな!可愛いピチピチギャルも大勢いるしよ!男にとっては楽園だな!」
「おい、彼女の前でそれを言ったら捨てられるぞ」
全く、呆れてものも言えない。
「口ではそーゆうけどなァ、どこの女見てもやっぱ香奈江が一番可愛いって見比べちまうんだよ!」
そうなのか。
確かにその気持ちは理解できる。
ここに来て何人か女性が視界に入ったが、実際凛が誰よりも一番可愛い。
可愛いからこそ、やはり凛が気になってしまう。
「…………」
「お前、本当に水上に惚れすぎて骨抜きだな」
「何がだ?」
「他の男に見られたくねーからパーカー着せたんだろ?ったく、俺よりも独占欲強いよなぁクラピカは!」
「う、うるさい!!」
私の何を知っているのだ!
そう言われて思わず怒鳴る私に
「そんな怒るなよ、独り占めしたいお前の気持ちは分かるけどな!!それより、ホテルの部屋割りはどーなんだろうな?」
「さあな」
「水上の母ちゃん、気ぃきかせて香奈江と同じ部屋にしてくれねェかなー…」
「結局それ目的で来たのか。お前の考えていることは言われなくても想像がつく」
「あ?なんだ~?言ってみろ!」
「永井とシたいからだろう」
「そりゃそーだろ!?つか、お前もそーだろ!?」
「……私は、凛が嫌ならしない」
「嫌がらねーだろ!でもアイツはそーゆうの好きそうじゃねーしな!つか、お前付き合って2年以上もするのによく我慢出来るな!しかも一緒に住んでるしよー!ホントに男か!?」
「馬鹿を言うな!私はお前と違う」
苛立って言い返したが、レオリオの言葉に後からピンときた。
そうか、だからあの時あれほど嫌がったのか?
だが何故、私の部屋に……。
「そろそろ行くか、香奈江達が心配だしよー」
「あぁ」
私とレオリオは母さん達がいる場所へと向かった。
遠くの目の前の海では、愛しい彼女の姿が見える。
凛は楽しそうに莉子、クラウス、香奈江と波打ち際で遊んでいた。
楽しんでいるようだな。
安心して、ビーチチェアーに腰を下ろして本を読み始める。
母さんと凛の母が、用意していたスイカを切ってお皿に盛っていた。
「みんな~スイカあるわよー!!」
ーーーー
ーーーーーー....
凛side
遠くから私達を呼ぶお母さんの声が聞こえた。
「スイカだって!行こっ♪」
そう言って莉子達はお母さんのところに走って行った。
「凛、行こっ」
『あ、うん。先に行ってて!』
そう言って私は少し離れた砂浜に置いていた浮き輪を走って取りに向かった。
せっかく買ったばかりなのに無くしたら困るしね。
すると…
「助けて…っ、誰か助けて!」
小学生の男の子が海で溺れている。
私は目を大きくして青ざめた。
ウソ!子供が溺れてる…!!
『誰か!!子供が溺れてるの!!誰か来て!!』
しかし、私のいた場所は周りに誰もいなくて、遠くにお母さん達の姿が見えるだけ。
大声で助けを求めるが、誰も気づかない。
目の前で子供は苦しそうにバタバタと溺れている。
どうしよう…!
このままじゃ…!!
私は無我夢中で海に飛び込んで子供の元に向かう。
しかし泳げない私は子供と一緒に溺れてしまった。
苦しい…っ!
息が苦しいっ。
助けて、誰か…誰か助けて…っ!
「スイカ美味しい!」
「いっぱいあるからね」
皆はスイカを食べて、休憩してくつろいでいた。
「凛、来ないなー」
香奈江がそう呟き、クラピカは遠くの海に目を向けた。
海でバタバタと泳いでいる凛と子どもの姿が。
遠くから見れば楽しんでいるようにも見える。
全く、何をしているんだ。
呆れて見ていたその時…
クラピカは気がついた。
あれは、まさか溺れて。
そう思った瞬間、クラピカは全速力で海へと走り出した。
突然走り出すクラピカに、全員は目を見開いてその走る方向を見る。
「なに!?溺れてるの!!?」
凛の母がそう叫ぶと、全員は一気に青ざめて急いでクラピカの後を追う。
クラピカは海に飛び込み、溺れている凛と子供を泳いで助け出す。
二人を連れて波打ち際まで来た時、レオリオが溺れていた子供の手を貸した。
どうやら子供と凛の意識はあるようだ。
凛を抱えていたクラピカはそのまま後ろに倒れる。
凛はクラピカの上に倒れて、余程怖かったのか、クラピカの胸で子供のように声に出して泣いた。
あれから全員の空気は、まるでお通夜のようだった。
私は皆と少し離れた場所で、膝を抱えて夕日の海をひたすら眺めて落ち込んでいた。
海では子供たちが親と一緒に波打ち際で遊んでいる。
…可愛い。
子供は無邪気でいいなぁ…。
そんなことを思っていると後ろから
「寒くない?」
そう言って私に大きめのタオルを背中にかけてくれたお母さん。
『うん…ありがとう』
「大丈夫?病院行かなくていいの?」
お母さんは心配げに尋ねて、隣に座った。
『うん。ごめんね…』
「もうバカ!!本当に驚いてお母さん心臓止まるかと思ったんだから!!本当に…心配させて」
『大丈夫よ、すぐ助かったし』
「何が大丈夫なのよ!!もしクラピカくんが助けてくれなかったら、あのまま死んでたんだから。本当に…また地獄を見た気分よ…」
今にも泣き出しそうなお母さんに、私は罪悪感を覚えた。
『ごめんなさい、お母さん…』
その時。
クラピカが温かい飲み物を持って、近づいてきた。
「クラピカくん、本当にありがとう。あなたは命の恩人よ。後は凛を頼んだわね」
そう言い残して、お母さんはその場を後にした。
クラピカは何も言わずに温かいお茶を渡してきた。
『ありがとう…』
そう言って受け取り、俯く私。
「……泳げないのが分かっていて、何故あんな無茶をした」
低い声音で問いかけられて、びくりと肩を震わせて、だけどクラピカを見返した。
『仕方なかったんだもん。呼んでも誰も来なかったし…』
あの時、そうしなかったらあの子が助からなかったかもしれないし…
私バカだなって分かってるよ。
泳げないのに無茶なんかして。
でもどうしても、あの子を助けたかった。
見て放って置けなかったんだもん…。
「ーーだからと言って…泳げないお前が助けに行けばどうなるか、知らなかったわけじゃないだろう」
『そんな…怒らないでよ。溺れたばっかりだよ』
「なんだと?」
クラピカは怖い顔で私を見つめる。
余計クラピカを怒らせちゃった…
『…ごめんなさい』
しゅんとして、私は小さな声で謝った。
クラピカが助けてくれなかったら、本当に私…
あのまま死んでたかもしれないもんね。
もうクラピカに会えなかったかもしれないんだ。
『助けてくれて…ありがとう』
私はそう言って、クラピカを見上げた。
互いに見つめ合うと、クラピカは何も言わずに私の隣に座った。
クラピカは海を眺めながら…
「…だが、そんな無茶をして見ず知らずの子どもを助けに行ったお前は勇敢だったと思う。お前は優しい奴だと改めて感じた」
と言ってきた。
『そんな…普通だよ、そんなの』
俯いて言う私を真っ直ぐに見つめて…
「私がお前に惚れた一番の理由は、誰よりも優しいからだろうな」
そう言って、優しく微笑むクラピカ。
そんなこと、初めて言われた。
恥ずかしくて、クラピカの顔が見られない。
私はクラピカの顔が眩しすぎて、目をそらしてしまう。
その時…
「そろそろホテルに行くわよー」
そう言って立ち上がるお母さん。
私とクラピカも立ち上がって、一緒に歩き出したーーー…
next…