純愛
ヒロイン名前設定
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とうとう私は、大好きなクラピカの…
彼女になりました♥
でもクラピカと付き合ってから
クラピカは急激に変わった。
トントン…
朝。
いつものように、キッチンで朝食とお弁当を作っていると…
「…おはよう」
クラピカが眠そうな顔をして起きてきて、キッチンにいる私に近づいて来る。
『あ、おは……』
ぎゅ。
私が挨拶を返し終わる前に、クラピカは私に後ろから抱き締めてきて…
後ろから、チュッと頬に軽いキスをしてきた。
そして何事もなかったように、バスルームに入って行く…
クラピカの余裕の態度に変わり、私は固まってしまった。
文化祭の日から、私とクラピカは恋人になった。
好きな人と付き合えるなんて、すごく嬉しいことなんだけど…
あの日以来、クラピカは急変してしまった。
「おはよ。手伝おっか?」
部屋から出て来た莉子。
『え、う、うん…お願い』
私は出来るだけ不自然にならないよう声を出し、中断していた作業を再開した。
ま、まさか…
朝っぱらからキスされるとは思わなかった…
いや、キスっていってもほっぺだけどさ…
キスはキス!
しかも、後ろから抱き締められたよね!?
そう来るとは思ってなかったよ…
そう。
クラピカは付き合い始めてから、かなり積極的男子になっていた。
付き合い初日の夜は、いきなりおやすみのちゅーされたし…
昨日なんて学校からの帰り道…並んで歩いていたら手を繋いできたし…
なんというか…距離が近い!
嬉しいんだけど…突然でびっくりするし、恥ずかしいし…
どうしたらいいの…?
付き合うって、こんなに近くにくっつくもの…なのかな?
クラピカはクールで優しくて紳士的な人だと思ってたから、あんなに積極的になるとは思ってなかったよ。
いや…
もしかしたら、あれがクラピカなのかな?
だとしたら…私…
これから心臓持たないかも…
「水上…」
『ぎゃ!』
すると急に後ろから、クラピカが私を呼んだ。
びっくりし過ぎて、とてつもなく変な声を出してしまった…
「すまない。これ、ボタンが取れてしまったんだが…」
『え、あ…ボタンね。分かった、付けておくね…』
絶対変だと思われた…
こんな変な奴が彼女で、本当に良いのかな…
このまま、ずっと好きでいてくれる自信がないよ…
がやがや…
「へえ~クラピカくんって積極的なんだね♪でも、なんとなく想像できるかも」
香奈江がパックのいちごミルクを飲みながら、ニヤニヤして言う。
あれからクラピカと学校に登校した私。
1時間目は自習だったため、生徒たちはそれぞれ好きな事をやっていた。
私も香奈江とガールズトーク。
早速クラピカのことを相談しながら、家で時間がなくてできなかった、クラピカの制服のボタンをつけていた。
『そう?クラピカって積極的に見えるかな?』
周りから見ると、クラピカってそうなの?
「見えるよー私はだけどね。だって奥手タイプには見えないでしょ?」
『ま、まあ…』
奥手って言われると…違う気が…?
「でもいいなー♥好きな人と両想いになれたなんて、超羨ましい♥本当良かったね、凛♪」
『う、うん…』
なに言っても、もうのろけにしか聞こえないよね。
「両想いになれたし、一緒に住んでるし本当絶好調じゃん!彼氏の家から毎日登校してるなんて、羨ましいよ。…そういえば家の工事はどうなった?」
『お母さんがこれを期にリフォームしたいってなって、今お母さんがデザイナーに相談中なの…まだ工事に入ってないから、しばらくクラピカの家に居候させてもらうしかないんだぁ』
「そっかぁ…でも凛たちが無事でよかった…家がなかなか完成しなくても、凛が元気なら何でもいいよ」
『香奈江…』
ウルウルときていると、香奈江の目線が私の後ろでピタッと止まる。
不思議に思い、後ろを振り返ると…
後ろには、Yシャツ姿のクラピカが…!
「ボタンつけてくれたか?」
『え、あ…うん!ちょうど終わったとこ!はい』
私はクラピカに制服の上着をクラピカに渡した。
「ありがとう」
ぎゅ
制服に手を伸ばして来たと思ったら、制服よりも先に私の手を握って来るクラピカ。
ドキドキしてる間に、クラピカは制服を受け取り、私に背を向けた。
ほら。
さ、さりげなく…
こういうこともしてくるんだよね…
香奈江に分からないようにさりげなく、私に触ってくるクラピカ…
こんな小さなことでさえ、私はドキドキしっぱばし…
その夜も…
寝る前に私の部屋に訪ねて来たクラピカは、くつろぎながら本を読んでいる。
私はというと、おわかりのように全然くつろいでなんかいられない。
一応クラピカの隣にいるが、緊張しながら雑誌を読んでいた。
もちろん、雑誌の内容なんて頭に一切入ってなんかいない。
ペラ…
ペラ…
チラ…
雑誌のページをめくりながら、横にいるクラピカをチラッと見る。
普通にしてるなぁ…
緊張している私がバカみたいなくらいに。
夜に部屋で二人きりなのに、なんでこんなに普通でいられるの?
「…なんだ?」
『え!』
本から目を離さずに、クラピカが口を開く。
体がビクッと動いた。
『な、なにが!?』
「なにか言いたそうだが…」
うそ。
バレてんの!?
なぜ!!?
なんでわかる!?
クラピカのこういうとこ、マジですごいかも。
『な、なんでもない!た…ただっ』
「ただ?」
『あーーー…えっ…と』
何か言わなくちゃ!
『し、静かだなーと思って』
「え?」
なに言ってんの私…
でも、口が自然に動く。
『静かにっていってもクラピカじゃなくて、今が!時間的に静かってこと』
「…もう12時過ぎてるからな」
『そ、うだよね…』
当たり前のこと話してくるし…
「静かなのが嫌なら、何か話そうか」
『!』
読書を止めた、私の方を真っ直ぐに見つめるクラピカ。
話そうかって…
何を話せばいいのよ…
こんなこと言うんじゃなかった。
私のバカ…
「…付き合ってから、二人きりの時間は結構あるな」
『え…』
「お互い弟妹いるから、余り二人きりにはなれないと思っていたが…そうでもないな」
『そ、そういえばそうだよね』
なぜ?
二人きりになってんのに、弟妹はなんで一切突っ込んでこないわけ?
もしかして…
付き合う前から一緒に住んでるし、もう家族みたいなもんだから?
二人きりでいても、違和感ないのかな?
それはいいことなのかな?(笑)
ぎゅ…
っ!
きた。
隣にいるクラピカが、隙を突くように私の手を握ってくる。
顔を見ると、爽やかな笑顔のクラピカ…
思わずつられて、私も笑う。
この雰囲気って…
多分……
ぎゅう…
っ!!!
するとクラピカは、私をそっと抱き締めてくる。
.
付き合ってから、ちょいちょい触れられてきたけど…
こんなふうに抱き締められたのは初めて…!
やばいやばいやばいやばいやばいっ!
これはもう…触れられてとか…
そんなレベルじゃない!
どうしよう…肩震える…
それに、汗とかヤバいかもっ
嫌だ。
クラピカに気づかれるかも…
「お前は…食べたらどんな味だろか」
!!!!
ななな、何をーーーー!
言ってるのーー!!!
『なっ、なに訳わかんないこと言って…』
普通にしなきゃ。
この雰囲気から、逃れられない…
「いつも良い匂いがするからな」
『っ!』
「香水つけてるのか?」
『つけてないよ!ボディクリームの匂いじゃない?』
「そうか」
…あ。
ボディクリームって………
”ボディ”って言葉に、自分で言った言葉に顔を赤くしてしまう。
その時、ゆっくりとクラピカは私から離れ、私にキスをしてこようとした。
『………っ』
私はそれを拒むことなく、一度受け入れた。
そして一瞬、唇が離れたとき…
『…いつもキスするときって、なに考えてるの?』
「…え?」
クラピカの動きがピタリと止まる。
この雰囲気に耐えられなくなった私は、なんとかここから逃れようと必死だった。
これより先を許してしまったら、このまま進んでしまう気がする…
クラピカのことは好きだけど、まだそこまでは無理……かな。
「…何考えてるとは……」
『ほ、ほらクラピカっていつも急にキスしてくるから…そのタイミングって何かあるのかなーって…』
「…………」
なんじゃ、この会話…
私…究極にめんどくさいこと聞いてない?
でも、ごめんクラピカ!
今だけ付き合って!
「…………」
『…………』
気まずい…
そして…
「…もう寝よう」
『ぇ…』
スッと立ち上がり、私の部屋から出て行くクラピカ。
え、怒ったのかな…
『ク、クラピカ!』
「なんだ?」
とっさに引き止めると、クラピカは何事もなかったかのような顔をして振り返る。
怒ってはいないようなので、ちょっとホッとする…
『あ、あの…えっと…………』
引き止めてみたものの、なんて言ったらいいのかわからない。
「おやすみ」
『ぁ…』
私の頭をぽんと撫でて、自分の部屋に戻っていくクラピカ。
ホッとしたような…
ちょっと寂しいような気もする…
私は部屋の電気を消して、そのままベットに入った。
自分から追い出した?くせに、すぐクラピカが恋しくなった。
なんて勝手なんだろう…
付き合うって…難しいよ。
.
その夜は、ずっとドキドキが止まらなかった。
早く朝にならないかなって…何度も思った…
結局ちゃんと熟睡することが出来ず、いつもよりも早く起きて、濃い過ぎないメイクをして、髪の毛は寝癖を全て無くした。
だけど、その朝から…
クラピカが急変してしまったのだ…!
「…おはよう」
『あ…おはよ』
起きて来たクラピカは、いつものように私に近づいてきた。
きっとほっぺとかにキスしてくるんだと思っていたのに…
カタ…
「……………」
クラピカが近づいたのは、私ではなく冷蔵庫。
冷蔵庫を開けて、飲み物を取り出している。
あれ?
今日の朝のちゅーなし?
……まぁ、そんな日もあるよね!
特に気にしないことにした私。
しかし…
「今日バイト休みだから、帰りに本屋に寄ってもいいか?」
『うん、いいよ』
学校へ登校中…
昨日までは手を繋いで来たり、近すぎるってほどくっついてきたのに…
今日は手を繋ぐこともなければ、クラピカが近づいてこない。
あれ?
昨日までのアレはなに?
そして、その夜。
「読書がしたいから、今日は先に部屋に行く。おやすみ」
『…おやすみ』
クラピカはいつもよりもずっと早い時間に、自分の部屋に行ってしまった。
しかも、おやすみのキスもなし。
いや…
今日はまだ一度もキスしてない。
…どうして?
私の中に不安がよぎる。
でも、今日はたまたまだよね?
うん、そうだよ。
そうに決まってる…
私は必死で、プラス思考に考えるしかなかった。
だけど、次の日もその次の日も…
クラピカが私に触れることも、キスすることもなかった。
「ど、どうしたの凛!?」
『なにがぁ?』
休み時間。
自分の机の上でボケっとしていたら、香奈江が私を見て驚いている。
「ひどい落ち込み顔…なにかあった?」
『ないよー。ないから悲しい…』
「え?」
そうですよ。
私は今、クラピカとなにもしてないんですよ。
「次体育だしサボらない?話聞くよ~私も話したいことあるし」
『か、香奈江様~』
私はキラキラと眩しく見える香奈江に、むぎゅーっと抱きついた。
そして私達は、人通りの少ない校舎の階段へ向かった。
「うーん…なんでクラピカくんは、スキンシップが減ったのかな…」
早速、クラピカのことを香奈江に話した。
香奈江は首を傾げる。
『わかんない…私なにかしちゃったかな…』
「心当たりないの?」
『う、ん…ないんだよね』
ちゃんと考えてみても、やっぱりないよな…
「じゃあ自分からやってみれば?」
『はい?』
「だから、自分からキスするの♪」
『なっ…無理だよ!』
向こうからされて精一杯なのに、自分からなんてできない!
「だって~キスしたいんでしょ?」
香奈江の言葉に、一瞬止まる。
『そ、そういうわけじゃ…』
ないと思うけど。
.
「違うの?私にはそう聞こえるけどな♪」
『楽しそうだね…』
「ふふ♪」
これは、完全に面白がってる。
『したいというかね…今までしてきたのに、急にしてこなくなるのはなんなのかなって…ちょっと不安になったんだよね』
「!」
私は本当の気持ちを、香奈江に話した。
『キスとかされると、すっごい恥ずかしくて本当やめてーとか思うんだけど…されなくなると寂しく感じるの…今思えば、あっちから私に触れてくれることが、私にとっての安心感なんだよね。言葉で好きって言ってる訳じゃないけど、好きって言われてるみたいな』
一度キスされたら、もう最後…
もっとして欲しくなるんだよ…。
「そっか。それ、すごいわかるよ」
『本当?分かってくれ………え?分かる?って……香奈江って、初キスまだって言ってなかった?』
「…………」
顔を赤くする香奈江。
も、もしかして…
『キスしたの!!?』
「ちょ、声大きいよっ」
『誰と!!?』
「~~~/////」
もしかして、私に話したいことって…
「レ、レオ…」
『へ?』
「………」
『………』
”レオ”って…
『レオリオ!!?』
「う、うん!」
『うっそー!!!!!!』
なんで!?
なんで…………
『なんでそんなことになってるの!?』
そりゃあ、二人がいい感じな事は気づいてたけどさ!
でも!
「び、びっくりだよね…」
『びっくりっていうか…うん!付き合ってるの?』
「…うん」
『…!』
認めた!
『香奈江って…前からレオリオのこと好きだったの?』
「え、あ…うーん…どーだろ…好きって気づいたのは最近で…」
『うんうん』
「でも、まだ付き合ってる訳じゃないんだけど…」
『え!なにそれ!?』
付き合ってない?
『それなのにキスしたの?』
「まぁ、詳しく言うとされたんだけどね」
『されたの!?無理やり!?』
「無理やりじゃなくて…ふいに?」
不意にってことは、向こうが一方的にしたのか…
『ってことは、向こうからキスされたっきりって事ね』
「うん…」
香奈江はつづける。
「キスされたのは1回だけなの…だから、あのキスはなんだったのかなって」
『レオリオの奴…そんな思わせぶりみたいなことするなんて許せない』
あいつのこと苦手だけど、はっきりした性格だからそういうめんどくさいことはしないようにみえるけどなぁ。
白黒ハッキリつけるっていうか…
「キスされた後も、前みたいに普段通りに接してくるんだよね。話したり、一緒に帰ったり、休みの日に会ったり…」
『ちょ、ちょっと待って!香奈江とレオリオって、そんなに仲いいの?』
会ったりって、それってデートじゃん!
「ごめんね…凛に話すタイミングがなくて…それに、なんか恥ずかしくてさ。私今まで友達いなかったし、相談とかってどう話していいか分からなかったの」
『そっか…』
香奈江の言っていることは、すごくよく分かった。
私も友達に何でも話せるタイプじゃないから…
『これからはなるべく香奈江に話すようにするからさ、香奈江も良かったら私に話なよ。一人で悩むなんて辛いしさ』
「そうだよね…ありがとう凛」
『私達って…恋愛経験少ないから、友達に相談するもんだってことすら気づいてなかったのかもね』
「ハハハ」
香奈江は笑った。
少しは、気が楽になったようだ。
『で、レオリオはどうするの?』
本題に戻りますが…
.
「…告っちゃおうかな」
『え!』
香奈江って、意外と大胆で積極的!
「だって…好きだから…自分の気持ちは伝えたいなって…」
恥かしそうに言う香奈江。
でも、すごく素直で可愛いと思った。
確定は出来ないけど、多分レオリオも香奈江の事が好きなんだと思う。
だからキスしたんだよね…
こんな可愛い子…惚れてないわけないよ。
その夜。
いつものように私の部屋に来ているクラピカ。
だけど、やっぱり私とは少し距離がある。
二人でベットの上に座り、クラピカは読書、私は少女漫画を読んでいる。
会話はたまにあるが、ほとんど無言の状態…
もっと色々話したり、ちょっとくらい…触れたりとかしても…いいのにな。
クラピカは、私が香水をつけていることに気づいてるのかな。
お風呂上がりに念入りにブローした髪や、買ったばかりのボディクリームも体に塗った。
ちょっと女の子らしい薄ピンクのパジャマを着てみたり…
急にクラピカに触れられてないだけで、私ったらすごく積極的になってる…
こんなこと…するキャラじゃないよ私…
でも止まらない。
クラピカに触れたい…触れてないと、寂しいよ…
「…何を考えている?」
『へ?』
本に目を向けたまま、クラピカが私に聞いた。
『べ、別に…』
少女漫画を閉じ、両膝を抱える私。
上下黒のラフなジャージに、まだお風呂から上がったままでまだ髪が濡れているクラピカ。
今の姿のクラピカを見るのはもちろん初めてではないけど、付き合い始めてから近い距離にいることが増えたせいか、ものすごくドキドキする…
「もうお前ともそれなりに長い付き合いだから、お前の顔を見ただけで分かってしまう」
『…なにが?』
「お前が考えていることだ」
………え。
私を見透かしたように言うクラピカは、読書を止めて本を目の前のテーブルに置いた。
「お前が何を考えているのかは、さすがに分からない…だが」
『だが?』
「悩んでいることは分かる」
クラピカはクスッと笑った。
その笑顔は自信満々で、ちょっといたずらっ子にも見えた。
『言えない』
「?」
そっぽを向き、そばにあった枕を抱える私。
顔を見なくても、クラピカが眉をしかめているのが分かる。
私だってもう長い付き合いなんだし、それくらいわかるよ。
「言わないのは何故だ?それほど深刻なのか?」
『深刻っていうか…』
私にとっては深刻だけど…
こんなこと言える訳ないじゃん!
最近クラピカが私に触れてくれないから、寂しいなんて言えないよ!
でもここで伝えないと、ずっと触れてくれないかもしれない。
どうしたら…
「言わないのなら…」
ぷに
『え!ちょ、ちょっと…やめ…』
クラピカに背を向けていると、後ろから脇腹を指でつまれた。
「言え。さもなくば…」
『や、やめて』
脇腹をつままれ必死で抵抗するも、久しぶりにクラピカに触れられて嬉しい自分もいる。
「次は髪だ」
『きゃ!』
脇腹が終わると、今度は私の髪の毛をぐしゃぐしゃと撫でてくるクラピカ。
ブローしたのに全部台無し…
でも嬉しい。
「ほら、言うんだ凛」
髪の毛をぐしゃぐしゃされた後は、両頬をつねられた。
”凛 ”
クラピカに初めて名前で呼ばれた…
いつもは”水上 ”とか…「お前」なのに…
すっごく嬉しい…
あ、れ…?
.
「…凛?」
気がつくと、私の目から涙がこぼれていた。
つねっているクラピカの指が、パッと緩む。
『ごめっ、なんでもないの!私…』
ぎゅ。
あ…
とっさに涙を隠してはぐらかそうとしたけど、真剣な顔をしてクラピカに手を握られた。
もう嘘はつけない。
そう思った…
私は手を握り返してクラピカに抱きつき、反対の手をクラピカの着ているジャージを掴んだ。
一瞬戸惑った様子を見せたクラピカだったが、すぐに私を受け止めて抱き締めてくれた。
クラピカの体温が私の体に伝わってきて…
胸の音も、微かに聞こえる…
仄かに香るいい匂い…
これが、クラピカの匂いなの…?
「凛…」
しばらくすると…クラピカはそっと私から離れ、私の肩に手を置いた。
そして優しい顔をした後、真剣な顔つきに…
「…話してくれ」
『…………』
もう逃げられない。
私は覚悟を決めた。
『さ…寂しかったの……』
「え?」
『最近の…クラピカがその…あんまり…えっと…』
「なんだ?」
『ふ、ふれ…』
「ふれ?」
『…触れてくれないから!』
言ってしまった…
チラッとクラピカを見ると、キョトンとした顔をしている。
こんなこと言われて、クラピカはどう思ったのかなぁ…
めんどくさいとか思われたかな。
「…ぷ」
『え!?』
しばらくの沈黙が続いたあと、クラピカは吹き出して笑う。
わ、笑われた!?
「触れてくれないって…お前…」
『わ、笑うなんてひどい!私は真剣に悩んでたんだからね!キスだって…』
…あ。
思わずキスのこと言っちゃったよ…
「ああ、その事か」
クラピカは私から目をそらし、ポリポリと頬をかいていた。
その行為が私にはよくわからなかったが、クラピカは直ぐに口を開いた。
「…あれはお前が変な事を言うからだ」
『私が?』
自分の顔を指で差し、首を傾げた。
私なんか言ったっけ…?
最近の出来事を、頭の中で隅から隅まで思い出してみたけど…全く心当たりない。
「お前…この前言っただろ……私のキスがどうだと…」
…クラピカのキスのこと?
『い、言ってないよ!』
「言っただろ。私がキスをするタイミングの事を』
『…あ』
もしかして、あれのことかな。
”クラピカってキスするとき、いつも何考えてんの?”
”クラピカっていつも急にキスしてくるから…そのタイミングって何かあるのかなーって”
『い、言ったかも…』
「かもではなく言っていた」
『そ、そうですね…』
でも、それが何なんだろう…
「あれを言われたから、出来なくなったのだよ…」
『…どうして?』
「恥ずかしいだろ…」
私に背を向けて、首筋に手を当てるクラピカ。
気づかれないように後ろからそっと覗くと、クラピカは恥ずかしそうな顔をしていた。
ちょっと可愛い…
「見るな」
『あ…』
覗いてることがバレて、クラピカに頭をグイッと押されて離される。
よっぽど恥ずかしいみたいだ。
.
『じゃ、じゃあ…このまま聞いて』
私はクラピカの後ろからぎゅっと抱きつき、背中から伝わる温もりを感じながら口を開いた。
『急にクラピカが遠くなった気がして、すごく寂しかったの…私付き合うのとか初めてだし、キスとかそういうのすっごく恥ずかしいんだけど…クラピカから全く触れてこないのは…やっぱり悲しい』
クラピカは黙って聞いてくれた。
こんなふうにクラピカの前で素直になれたのは初めて…
ちょっとくすぐったい気もするけど、すごく優しい気持ちになれる。
「お前…それは反則だ」
『え…』
急に変したように、クラピカはくるっと振り返り私を押し倒して来た。
『ク、クラピカ!あのっ……』
私の上に覆いかぶさった状態で、クラピカは私にキスをする。
そのキスは、初めて体験する大人のキス…
私は答えるのに必死。
このまま、一線を越えようとしてるのかな…?
それはまだちょっと…
「私が好きか?」
唇が離れたと思ったら、クラピカは私を上から見下ろして見つめてそう言った。
寝転んで真上にクラピカがいる…こんな体制でクラピカを見たのは初めてだ。
こくりと頷く私。
「それでは分からない。ちゃんと言葉で言ってくれ」
えぇ…!
この角度から見てもかっこいいクラピカに、ドキドキしてしまうのに、好きっていうなんて恥ずかしすぎる…
『い…言わなきゃダメかな?』
「駄目だ」
一旦クラピカから目をそらして言うと、すぐにクラピカから返事が返ってきた。
やっぱり言わなきゃダメかぁ…
そういうとこは、本当に意地悪だよね。
「言ってくれるだけでいい」
クラピカの手が伸びてきて、私の髪を揺らした後、右手で私の右頬に触れた。
私の頬は熱をおびて、クラピカの手に伝わってしまっているだろう。
こ、このシチュエーション、マジでヤバイ!
石のように固まる私は、どうしたらいいのかわからない。
でも言わなきゃね。
きっと言わないと、この空気を壊してしまうことになる。
久し振りにクラピカに触れられたんだから、壊すようなことは避けたいし…
あの時、クラピカも好きだって言ってくれたし…
私はふぅ…と息を吐いた後、クラピカを見つめた。
『す、好き…』
言った。
言いましたよ私…
頑張った!
「…………」
『えっ』
するとクラピカが、上から抱きついてきた。
しかも強めに…
嘘!
どうしよう…
私はまだ、そういうのは出来ない…
「今はそれで構わない」
次の行動に強張っていると、クラピカがそう優しく呟いた。
それで構わないって…?
「今はそれだけで十分だ」
その言葉にホッとするのと同時に、さっきまでの自分がすごく恥ずかしくなった。
クラピカが…無理やりするような人じゃないってわかってたはずなのに…
なんで、一瞬信じられなかったんだろう。
私…バカだ。
ぎゅ
私は真上にいるクラピカに、自分からしがみつくように抱きついた。
クラピカの表情は見えないけど、クラピカが驚いていることはなんとなくわかった。
自分からこんな積極的な事をするのは、付き合って初めての事だったから…
『…好き』
抱きついただけでなく、もう一度この言葉を伝える。
もちろん恥ずかしいけど、もう言ってしまったのはどうしようもないので気にしない。
「いつもしない事や言わない事を、この状況でやるなど…お前は意外と魔性だな」
『ま、魔性!?』
抱きついていた手をクラピカの体から離し、はぁ?とクラピカに詰め寄る。
クラピカは真顔だったが、どこか面白がっているようにも見え、ハハッと笑いながら私の隣に寝転んで、片方の手で私の髪を触る。
.
『…で。魔性ってなに?』
私はクラピカの方に体を傾けて、クラピカにくっついた。
「そのままだ。こっちが一線置いている時に限って、お前は私に積極的になることだ。せっかく歯止めをかけているのに、理性が崩れるだろ」
『そ、そういうことか…』
反省したようにクラピカからそっと離れ、ピタリとくっついていた体を離した。
「勘違いするな。今はこれが正解だ」
『あ…』
クラピカの手がスッと伸びてきて、私をギュッと抱きしめた。
「…本当に面白い、お前は」
『そうかな…』
”面白い”って言葉に浮かぶのは、自分がドジなことをしてしまった光景。
クラピカが言っている面白いと、自分が思い浮かんだものが違うのは明らかだが、今は突っ込まないことにした。
「こんなに好きになったのは…初めてだ」
少し枯れた声で言うクラピカが、すごく可愛らしくて…胸がキュゥってしめられた。
『私もだよ』
こんなに誰かを好きになったのは、産まれて初めて。
本当に好き。
大好き…
「もう駄目だ、理性が…」
『えっ』
「冗談だ」
『…クラピカが言うと冗談に聞こえないよ』
「すまない」
この日の夜は、甘い夜だった。
next…