純愛
ヒロイン名前設定
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一学期の学校行事は”体育祭”。
昔は秋に体育祭をやっていたけど、今は5月にやる学校が多い。
だから今は二学期といえば、体育祭よりも文化祭が頭に浮かぶようになっていた。
「では、文化祭は焼きそばの屋台をやる事になりました。売り子係と買い出し係、あと調理係ごとに集まってください」
学級委員の声で、生徒たちがそれぞれ係りごとに集まる。
火事から3日後。
私は意外と元気で、昨日から普通に学校に登校していた。
家の修理には最低でも2ヶ月はかかるみたいで、家の修理は全てお母さん任せなのだが、お母さんはこれを期に「リフォームしたい♪」と言い出し…
私と莉子は、きっと2ヶ月以上はかかるだろうと半分諦めていた。
クラピカは「好きなだけここに住んでくれて構わない」と言ってくれていて、私達はそれに甘えて住まわせてもらっている。
クラピカの家で家事をして、料理やお弁当作り、クラピカと一緒に登校する。
クラピカの家から登校するというだけで、なんとも恥ずかしい気持ちになっていた。
なんだか彼氏の家から、学校に通っている感覚に近いのかも…
「凛」
『…!香奈江』
係りごとに集まる場所に行くと、隣に香奈江がやって来た。
「うちのクラスの出し物、焼きそば屋に決まったね☆」
『ね♪まあまあ、いいかも♥私作るの好きだしー』
「私も得意じゃないけど、頑張る!」
『香奈江はお菓子作り得意なんだから、料理の方も大丈夫だって!』
私と香奈江は、調理係になった。
売るの苦手だし、買い出しも微妙だし、調理が一番自分に向いていたから。
クラピカはというと…
「じゃあクラピカくんとレオリオくんは、私達と買い出しねー♥」
「クラピカくん頭いいし頼りになるから、お金の管理お願い♪」
買い出し係の女子達に、クラピカとレオリオは囲まれていた。
私はちらっとその光景を見た後、そっと目をそらした…
クラピカが買い出し係を選ぶとは思わなかったけど…
まあ、調理係はみんな女の子だしね。
売る感じでもないし、買い出し係を選んだのは納得できる。
でも、やっぱり同じ係が良かったなぁ…
誰でも好きな人と一緒の係になりたいのは、当たり前だよ。
「じゃあ水上さんと永井さんは、朝の10時~12時までの調理を頼んでもいいかな?」
『あ、はい!』
「大丈夫です!」
調理係のリーダーに言われ、慌てて返事をする私と香奈江。
ぼーっとしてて、半分聞いてなかったよ…
でもまあ、とりあえず10時~焼きそば作ればいいんだよね☆
「当日は、各自エプロンを持ってきてね。髪長い人は必ず縛ってください」
「『はーい』」
エプロンかぁ…家になんかいいのあったかな?
学校に持ってくなら、可愛いのがいいな。
「ねぇ、今日の放課後エプロン買いに行かない?私可愛いエプロン持ってないんだ」
香奈江がこそっと言った。
『そうだね!行こう♪私も可愛いの持ってないや(笑)』
「ふふ、決まりね☆」
クラピカとは係別れちゃったけど、文化祭はそれなりに楽しいものになりそう…♪
そして、文化祭当日。
トントントン…
調理室では、他のクラスがラーメンやクレープとかを作っている中…
私のクラスは、地味に野菜や肉を隅っこで切っていた。
「どんどん切ってね!売り切れにならないように、たくさん買い出ししたみたい。半分先生のゴチだったんだって!」
『へ、へえ』
リーダーの女子生徒がそう言って、横のパイプ椅子に座って笑った。
私と香奈江は包丁で野菜を切りながら、愛想笑いをした。
時間通りに調理室に行ってみると、大量の野菜を目の前に出され…
リーダーに「じゃー切って♥」なんて言われたけど、内心焦っていた。
こんな量の野菜、八百屋か飲食店にでも働いてない限り見ることないでしょ?
「お疲れ~キャベツは持って行って大丈夫かな?」
するとうちのクラスの売り子の女子が、私達に駆け寄った。
『うん、お願い』
「はーい…」
女子は業務用のボールに入ったキャベツを持って、調理室を出て行く。
焼きそばを焼くのは売り子係で、私達調理係はあくまでも野菜を切ったり、段取りするだけだ。
校門を入ってすぐの場所に屋台を構え、そこに鉄板を置いて焼きそばを焼くスタイル。
屋台と言う事で、クラスのみんなでおそろいのハッピを着ている。
.
ガラガラ…
「お~やってるやってる♪」
?
調理室の入り口から、聞き覚えのある声が…
目をやると…
浴衣姿のクラピカとレオリオが、こっちに向かって歩いて来る。
レオリオは私達を見て、ニヤニヤ笑っていた。
「地味だなぁ、お前ら」
レオリオは、私達が使っているテーブルにドカッと座った。
『食べ物のそばに座るな!』
「んだよ、小うるせえなァ!」
しっしっとレオリオを追いやりながら、ちらっと傍にいるクラピカを見る。
紺色の浴衣に黒い帯を締めて、胸元が少しはだけているクラピカ…
か、かっこいい…/////
写メ撮りたい!!
後ろ姿だけでいいから、写メ撮りたいっっっ
そして待ち受けにしたいっ(笑)
「どうして浴衣着てるの?」
香奈江が手を動かしながら、レオリオに聞いた。
「んーなんか突然売り子やってくれって頼まれてよ~クラスの女子が貸してくれた」
「そうなの?でも二人は買い出し係でしょ?」
首を傾げる香奈江。
「知らねぇ。俺らはただ貸してくれたから着てるだけだ。売り子っつっても、好きな時に来て適当に呼び込みやってくれっとよ…な?クラピカ?」
「…そうゆう事だ」
なるほど。
目立つ二人に呼び込みさせて、焼きそばを少しでも多く買ってもらおうって事か…
確かに二人とも浴衣着たことで、さらに目立ってる…
レオリオだって背が高くて男って感じだから、すごい似合ってるし。
クラピカは…
切り終えた人参をボールに入れながら、数秒間クラピカを見つめる。
う~
カッコ良すぎ~~~~~~~~~~~~~~♥♥♥♥
レオリオより、100倍似合ってる~♡
「二人ともちょっと休憩していいよ、私…冷蔵庫から野菜追加で持ってくるね」
リーダーが私達にウィンクをして、小走りでその場を離れた。
『ありがとう!』
私と香奈江は切のいいところで手を休め、さっき買った飲み物を開けた。
『あーおいし!』
「喉かわいてたもんね~」
「二人共、これ何時までやるんだ?」
すると、クラピカが私達が切った野菜を指差して言った。
『12時までだよ』
「そうか…なら後で合流して回ろう」
『っ!』
飲み物を飲んでる手が止まる。
『え…一緒に回ってくれるの?』
「くれるのって…なんだそれは」
『う、ううん!ごめん変だよね』
ハハハと笑って誤魔化し、制服のポケットに入れていた文化祭のパンフレットを出した。
「凛はどこ行きたい?私はチュロス食べたいかも~♪」
私のパンフレットを覗き込む香奈江。
『いいねいいね♪私も行きたいし!しかも色んな味があるよ!あ、私メープル味が食べたい☆』
「私は抹茶かなぁ~あとで行こうね」
『うん!てゆうか、私たち食い気しかないね』
「ハハハ」
香奈江と笑っていると、リーダーが野菜を抱えて戻って来た。
「俺ら屋台に顔出してくるから、終わったら合流しようぜ!!」
「連絡してくれ」
『うん、わかった!』
「じゃあ、あとで」
クラピカとレオリオが調理室から出て行く。
私は飲み物をしまい、制服の袖をくいっとまくった。
「これ追加の野菜ね!よろしく」
『はいっっ!』
リーダーが机の上に置いた野菜を、スピーディーに切っていく私。
この仕事が終われば、クラピカと行動できるんだ!
そう思うと、係の仕事がはかどった。
クラピカと一緒にいられるなんて、超幸せ!!
今日はいい日だな♥
.
このあと私に、もっと幸せなことが起こるなんて夢にも思っていなかった…
幸せまでのカウントダウンが…
ゆっくりと動き始めるーーー…
「お疲れ様!また明日よろしくね♪」
12時過ぎ。
私と香奈江の仕事は予定通り終わり、荷物を持って調理室を出た。
『クラピカ達どこにいるんだろう…屋台の方行ってみようか?』
「…………」
?
香奈江に話しかけても、返事が返って来ない。
不思議に思い、香奈江の方を見ると…
『…香奈江?』
香奈江は顔を赤くして、唇を噛みしめていた。
そして急に立ち止まり、私の方を見る…
「あ、私ね……………レオリオくんのことが好きなんだ…」
え。
私と香奈江はしばらく見つめ合ったまま…
数秒間、時間が止まる。
頭の中で、カチカチと時計の針の音をしっかりと感じたあと…
『ええええええええええ~!!!!!!』
私は叫んだ。
香奈江がレオリオの事…?
いや!
ちょっとそうなのかなーっと思ってたけど…
『…マジ?』
「う、うん!」
『いつから?』
「結構前から…ごめんね!ずっと言おう言おうと思ってたんだけど…言うタイミングが分からなくて…」
『………』
私のキョトン顔は、段々と笑顔に変わり…
『嬉しいーーー!!!!♥これで香奈江と恋バナできるじゃーんっっっ』
私は香奈江に抱きつき、顔をスリスリとした。
「う、うん!でも私…初恋だから…よくわかんなくて…」
『私だって初恋だよ!だから大丈夫!!』
なにが大丈夫なのかよくわからないけど、今は興奮中なので一旦置いとく事にします。
『お互い頑張ろうね!香奈江の恋に協力するし、応援するよ♥』
「ありがとう~凛~~~♡♡♡」
私と香奈江は手を繋いで、階段を駆け下りた。
中学の頃は恋なんてしなかった為、友達とお互いの恋を応援し合う事なんてなかった。
ちょっと恥かしいけど、嬉しい…
こんなふうに友達の恋を応援したいと思ったことなんて、今までなかった。
頑張ろうね、香奈江。
がやがや
一階に行き下駄箱で靴を履き替え、自分のクラスの屋台へ向かう私と香奈江。
「ねぇ…凛から見て、レオリオくんってどう思う?」
『え?』
屋台に向かいながら、香奈江はポツリとそう言った。
『どうって…良い奴だと思うよ。チャラいけど』
「…やっぱりチャラい?」
香奈江は苦笑いをした。
『ん~見た目はそーでもないけど、チャラいよね?気軽に女子と話せるとことかさ…でも話せば普通だよね』
「そうか…うん、やっぱりそうだよね」
『なんで?チャラいの嫌いなの?』
「そういうんじゃないけど…ただ、レオリオくんって目立つから…私みたいな地味な子とじゃ釣り合わないかなーって」
しょぼんと小さくなる香奈江。
『そんなことないって!レオリオと香奈江はお似合いだよ!ってゆうか、私からしたらレオリオに香奈江は勿体ないほどだよ!!』
「それ言い過ぎ~」
『いや本気!香奈江にはもっとちゃんとした奴がいる…あ、じゃない!とにかく!レオリオと香奈江は合ってるよ!』
「そうかなぁ…」
自信がなさそうに首を傾げる香奈江の肩を抱き、なぐさめる。
「オーーーーイ!!」
すると、屋台にいるレオリオが私達に気づき、手を振って来た。
隣にはクラピカもいる。
.
『ほらほら!噂のレオリオ♥一緒に行動するんだから、チャンスを掴むのよ!』
「う、うん!頑張るっ」
香奈江に耳打ちをする私。
他人の恋愛には、凄く積極的な私。
この積極さを自分の恋愛にも向けたい…
「野菜切りは終わったか~?おばちゃん達~!」
ム。
クラピカとレオリオに近づくと、完全にバカにした口調で私達をからかうレオリオ。
『…あら、ごめんなさい』
ドンっ
「おっと」
「痛っ」
私はわざと香奈江を押して、レオリオの元へ近づけた。
レオリオに抱きつく体勢になった香奈江を、レオリオはとっさに受け止める。
「あぶねーだろ!!」
「もう~凛!」
香奈江、顔が赤くなってる♪
『ごめんよーん』
ケラケラ笑っていると、横にクラピカがやってくる。
私のからかいモードは一気になくなり、背筋がピンと伸びた。
「お疲れ」
『あ、うん。クラピカは?売上どう?』
クラピカと話していると、乙女モードの自分にスイッチが入る。
「どうだろうな…私は特に何もしていない。ただここに居ただけだ」
『そう…』
だけど屋台の前には、結構な人だかりが出来ていた。
しかも、女子ばっかりだ…
クラピカとレオリオのおかげだな、きっと…
やっぱり人気者だね。
「どこから行く?」
レオリオがクラピカに聞いた。
「どこでも」
『私も』
クラピカと回れるなら、どこだってOK!
「じゃ~とりあえず何か食おーぜ!!」
「じゃあせっかくだから、うちのクラスの焼きそば買おうよ!」
香奈江がそう言って、屋台を覗く。
『そうだね!食べよ!』
「えー…さっきから焼きそばばっか見てっから、俺食う気しねーな」
嫌そうな顔をするレオリオ。
『私達が切った野菜なんだから、一つくらい食べなさいよっ』
「そーだよ、良かったら食べて」
レオリオに対して強い口調で言う私と、反対に優しい口調で言う香奈江。
「じゃー代わりに買ってこい!俺ら2年の先輩のクラスに顔出してくっから、終わったら来い!」
「『え…』」
レオリオとクラピカは、私達に背を向けて言ってしまった。
『…なにそれ』
「一緒に回るんじゃなかったの?」
私と香奈江に冷たい風が吹く。
『でも焼きそば買えば、また合流するからいっか☆』
「そ、そうだよね!」
私と香奈江は屋台に並び、焼きそばを4つ買った。
あと、下駄箱で靴を履き替え二階へ向かった。
「あっ!凛!凛」
『ん?』
途中で、香奈江が私を呼び止める。
私は立ち止まって、香奈江が指差した方を見ると…
さっきパンフで見て、気になっていたチュロス屋さんをやっているクラスを発見!
『チュロスだ~♪』
「レオリオくんと合流する前に買おうか?」
『うん!』
私達は、チュロス屋のクラスへ入る。
タイミングよくお客さんは私達だけで、直ぐに私達の番に。
「いらっしゃいませ」
『えっと…抹茶とメープルを1つずつ…』
「ごめんなさい!メープルは終わっちゃって…」
『えっっ!』
うそ!
メープルないの…
楽しみにしてたのに…
『そんなぁ…』
「ごめんね~メープルは一番人気だったの…メープル以外ならあるから」
『…そうですか。じゃあ、プレーンを下さい』
チュロスを買い、クラスを出る私と香奈江。
.
「メープル売り切れだったね…でも明日また来てみようよ!早めに行けば買えるかもよ」
『うん!ありがと、香奈江』
チュロスを食べながら歩き、香奈江と笑いあう私。
あまりの美味しさに一瞬で食べてしまい、クラピカ達と合流する頃にはチュロスはなくなっていた。
「きたきた」
廊下で先輩たちと話している、クラピカとレオリオ発見!
私達を見つけると、クラピカ達は先輩たちと別れた。
「焼きそば買って来たよ」
「サンキュー」
香奈江が差し出した焼きそばを、嬉しそうに受け取るレオリオ。
『さっきは”いらない”って言ったくせに…』
「うるせー!腹減ったんだよ!それにいらねえとは言ってねえ!!」
『はいはい』
私はレオリオを無視するように言い、クラピカに近づいた。
『はい、これクラピカの!』
「ありがとう」
焼きそばをクラピカに渡す。
♪♪♪♪~
すると、近くの教室から大音量の音楽が流れ始める。
「あーこれだ。先輩たちのクラスのライブ」
レオリオが割り箸を口で割る。
『ライブ?』
「そうだ。先輩のクラスの女子達がアイドルのライブやるらしいぜ!さっき誘われたからよォ、ちょっとだけ見てもいいか?」
『うん』
私達は、そのライブをやるというクラスへ向かう。
「ちょっとトイレ行ってくるね」
『うん、中にいるね~』
「わかった!」
教室に入る直前に香奈江はトイレに行き、私達3人は先に教室へ入る。
中には結構人がいて、まあまあの盛り上がり。
手作り感のあるステージには女子生徒が数十人いて、アイドルみたいな可愛らしい衣装を全員がおそろいで着ていた。
「皆さんこんにちわ~私達2年B組48☆☆」
ステージに立つ女子生徒が、それぞれ決めポーズをしている。
あんなこと堂々とできるなんて、すごいなぁ…
私だったら、恥ずかしくて無理だよ(笑)
そんなことを思いながら、教室の入り口付近でライブを鑑賞する私達。
レオリオは焼きそばを食べている。
食べながら、ライブを観るのってどうなの…?
なんか失礼な気がする…
♪♪♪♪♪…
女子生徒たちが、歌を歌い始める。
人気アイドルグループの歌で、誰でも一度は聞いた事ある歌で、みんながノリノリになっていた。
「…へえ~結構ちゃんと踊って歌えてんじゃねーか。俺はてっきりカラオケ並みかと思ってた…しかも、みんなそれなりに可愛いじゃねーか♪」
焼きそばの麺をすすり、まるで審査員のような口ぶりのレオリオ。
なにその上から目線…
しかも、あの先輩たちのこと可愛いって言った?
香奈江がいない時で良かった…
「そうか?私は男にただ見られたいだけで、あのような衣装を着て歌っている女は好きになれないな」
「まあ、そうだけどな~」
ボソッと言うクラピカに、レオリオはうんうんと頷いた。
クラピカは、ああゆう女子が苦手なのかな…
可愛くて目立ってて…
それが本当だったら、少し安心する。
私は、あのステージに立てない性格だから…
「あ、忘れていた。これお前に買っておいたのだよ…」
『え?』
クラピカが持っていた袋から出したもの…
それは…
『チュロス!?』
「そうだ。メープル食べたいと言っていただろ?」
『しかもメープル味!?嬉しい!さっきチュロス買いに行ったら、メープル売切れてたの!』
「そうか、なら買って正解だったな」
『ありがと~っ』
私が言ったことをクラピカが覚えててくれたなんて嬉しいな…
あー幸せ過ぎるっ
早く香奈江、戻ってこないかなー!
話したいよっ
.
「…ん。食べろ」
チュロスを持ち、私の口に近づけるクラピカ。
このまま食べるってこと!?
は、恥ずかしいよ…
食べてることを躊躇していると…
『っ!』
クラピカは私の口にチュロスをちょんとつけ、徐々に口の中に入れてきた。
クラピカの顔見れないよ…
こんなことなら、あのステージで歌歌う方がまだマシ。
ぐっ
すると、チュロスを一気に口の中に押し込むクラピカ。
『ちょっと~!』
チュロスを半分くらい食べ、口でもぐもぐしながらクラピカの腕を叩く。
クラピカはからかうように笑った。
からかわれてるけど、嬉しいな。
クラピカとこんな時間が過ごせてるんだもん…
トン…
『あ…』
突然肩に何かが当たり、振り返ると教室に入って来た生徒にぶつかってしまったみたいだった。
『す、すみません…』
ぶつかった人に謝っていると…
ぐいっ
クラピカが私の手を握り、自分の方へ引き寄せた。
「気をつけろ」
『うん…ごめん』
クラピカと指が絡まり、それは手を添えているんでも握られているんでもなく…明らかに繋いでいる感覚。
しかも、その手を離す様子はない。
今日はどうしたんだろう…
なんか、クラピカがすごく近くに感じる…
恥かしくて俯きながら、クラピカの手の温もりを噛み締める。
後ろからは、大音量の曲が聴こえてくる…
その中で私は、クラピカと手を繋いでる。
このまま、時間が止まればいいのに…
そう願いながら、そっと顔を上げると…そこには優しい顔をしたクラピカが、私を見下ろしていた。
浴衣姿のカッコイイクラピカに釘付けになり、目が離せなくなってしまった。
「…砂糖がついている」
『え、うそ…』
「動くな」
チュロスを持ちながら、親指で私の唇についた砂糖をなぞるようにとってくれるクラピカ。
もう死んでもいい。
本気でそう思った…
「………なぁ」
ビクッ
すると、クラピカの後ろからレオリオがこっちを覗き込む。
やば!
私はとっさに、クラピカから離れるような姿勢になった。
「…おまえらさ……もうさっさと付き合ってくれねーか?見てるとイライラすんだよ」
なっ…
な、なに言ってんのこいつ!!!!!?
クラピカの前で…
しかも、イライラするって何!!?
「…すまないが、私はお前に気を使ってずっと控えめにしてきたんだが…?」
クラピカはレオリオに、きょとんとして言う。
「な、なに言ってんだよお前!!」
「とぼけるな、初めから気づいていた」
「ちげーよ!!いいんだよ、俺のことは!!」
???
二人の会話がよく分からない。
「そうか。認めてくれるなら、私は前進する」
「あぁ、遠慮なくどーぞ!」
クラピカは私を真顔で見下ろした。
そして…
『っ!』
私にそっとキスをする。
その数秒後…
かかっていた曲が止まり、またその数秒後…
「「おおおおお!♥」」
今度は周りから、そんな声が聞こえてくる。
クラピカが私に唇を離し、周りに目をやると…
「おおおお!♥」
「大胆!」
「熱いね~」
教室にいた生徒全員が、私とクラピカのことをニヤニヤとした顔で見ていた。
しかも…
「凛…♡」
振り返ると、トイレから戻って来た香奈江の姿も…
もしかして…
この教室にいた全員に、今のキス見られた!!?
クラピカからキスを突然されて、驚いている自分と…
すっごく嬉しい思いと…
周りに見られている恥ずかしさ…
香奈江にも、バッチリ見られてたみたいだし…
あと、レオリオにも。
当のクラピカは、すました顔をして何事もなかったかのよう。
私はというと…色んなものが交って、頭がおかしくなりそうだ。
『イヤーーーーーー!!//////』
どうしていいのか分からず、わけも分からなくなった私は、気がつくとそう叫び、教室を飛び出した。
後ろから香奈江が私を呼ぶ声が聞こえたけど、今の私には振り返る余裕さえなかった…
キスされた…
クラピカに……キスされた…!
それってやっぱり…そういうこと?
そうなの…?
『…………あっ』
目的もなく走っていたら、後ろから誰かに手を掴まれた。
振り返ると、そこにはクラピカが…
『……ハァ…』
少し息が切れている私とは反対に、クラピカは息が切れているどころか…少しだけ怒っているように見えた。
「…逃げるな」
『っ!』
そう言って、私の手を引いて歩き始めるクラピカ。
こうして私はクラピカに捕まり、どこにも逃げられない状態になった。
クラピカから逃げたわけじゃない。
あの教室にいた生徒たちから、逃げたかっただけ…
クラピカに手を引かれやって来たのは、人気のない裏庭。
そう。
以前、私達が園芸委員で世話をしていた花壇のある…裏庭だった。
私達は、花壇から少し離れた場所にあるコンクリートに並んで腰掛けた。
「…………」
『…………』
お互い何も話さない。
これじゃあまるで、別れ話をしているカップルくらい気まずい雰囲気。
さっきキスをした二人とは、とても思えない…
「…怒っているのか?」
『…いや……怒ってなんか…』
怒るなんて…とんでもない。
でも、超恥ずかしかったのは事実。
あんなに人がいる前で、やることないのに…
だってキスって、二人きりでするもんでしょ?
自分の唇を、指で触ってみる。
さっきこの唇は、クラピカとキスしたんだよね…
う…やばい…
顔が赤くなる…
チュロスを食べた後だったから、甘い砂糖の味がした。
まだ残ってる…
味も感触も…感覚も…
このまま私達、どうなっていくんだろう…
クラピカに聞くべき?
「私のこと好きなの?」って…
いや!
それは嫌だし、なんか感じ悪いよね。
てゆうか、私の中では…もうクラピカの気持ちは分かってた。
自惚れてるって思われるかもしれないけど、わかっている自分がいたんだ。
それくらい、クラピカといたから…
私はクラピカの、そんなことまでもうわかってる…
だけど…聞きたいな…
クラピカから、好きって言われたい。
「…酷い顔だな」
『えっ』
クラピカに言われた。
今の顔を見られていたみたいだ…
.
これでいいのかも。
私達には、ロマンチックなことは似合わない…
お互い好き同士になれたなら、自然に任せるのが私達なのかもしれないな…
「…すまなかった」
急に謝り始めるクラピカ。
なんで謝るの?
いい意味でも悪い意味でも、私は一瞬で不安になった。
「…私のした行動が皆に見られたことで怒っているのだろう?」
『…べ、別に怒ってないよ……恥ずかしかっただけで…』
”ごめん”ってそういうことか。
「確かにあんな大勢の前でキスなど…お前からしたら嫌だったな。私は有だが」
「有りって…恥ずかしくないの?」
もしかして、キスになれてるとか…?
だとしたら、ショック!
「…見せつけたかったからだ」
『み、みせ…見せつける!?』
な、なに言ってんのこの人…?
「それはもういい」
『は、はぁ…』
いいんかい。
私は気になるけど!
「…だが、すまなかった。お前の気持ちより、自分の事を優先に考えて暴走してしまった…らしくないな」
『…ううん、いいの…』
キスは嬉しかったんだし…
謝ってもらう事じゃないよ。
…って、口に出して言えたらいいのに~!
カタ…
っ!
すると突然、クラピカが私の唇にまたキスした…
唇はそっと離れ…私とクラピカは見つめ合う…
「これでどうだ?」
『えっ?』
「ここなら2人きりだろう?」
『…!』
そういうこと…?なの?
でも…
『…そうでもないけど?』
私達のいる裏庭から、外の通学路は丸見え。
通りすがる生徒たちが、チラチラとこっちを見ていた。
『これって2人きりなのかな…?』
「…………」
私の言葉に黙り込み、しばし考えた後クラピカは近くにある物置の後ろに私を押した。
どうするのかと不思議に思っていると…
「………」
クラピカは私を物置に追い詰め、顔を近づけてくる。
「……水上…」
日の当たらない日陰の中で、クラピカは私にぐっと顔を近づけた。
心臓はバクバクいい、頬はカァッと熱くなる…
そして…
「好きだ」
その言葉と共に、クラピカと私は3回目のキスをした…
ちゃんとキスの味がした…
『ぅ……』
「お前…泣いてるのか?」
『ち、違うよ』
ちょっとウルッときただけ。
クラピカから顔を背け、泣きそうになる気持ちをぐっと堪えた。
.
『あ!そういえばチュロスは?』
さっき食べかけだったやつ。
「あ…永井にあげた」
『え~全部食べたかったのに…』
香奈江にあげちゃったのか…
クラピカが手ぶらだったから、まさかとは思ってたけど…
でも香奈江のことだから、食べないでとっておいてくれてるかも♪
「…では、二人で回るか?」
!
クラピカが私に手を差し伸べる。
私はゆっくりと手を伸ばし、クラピカの手にそっと添えると、クラピカは私の手をギュッと握った。
近くて遠い存在だった人に
やっと近づけた。
私は「うん!」と頷き、手を握り返した。
next…